先行投資事業(ショッピングとクレジットカード)は、今は赤字だが将来のヤフーを支える事業。

大幅なポイント付与施策、テレビCMなどショッピング関連事業に積極投資を続けるヤフー。宮坂学社長は現状の部門業績を踏まえた上で、積極的に投資を行う理由をこう強調する。

ポイント11倍(いい買い物の日)5のつく日はポイント5倍全員まいにちポイント5倍……など、ポイントを活用したプロモーションを推進している「Yahoo!ショッピング」。出店者の大きな関心事は、「いつまでこのポイント施策が続くのか」「ポイント施策が終わったらこの成長は止まってしまうのではないか」という点。「Yahoo!ショッピング」の今後のポイント施策を探ってみた。

ポイント施策の今後を占う3つのポイント

2月2日にヤフーが開いた決算説明会。経営陣らは今後のポイント施策について次のように発言した。

2016年度は見極めた投資をしていきたい。(執行役員 ショッピングカンパニー長 小澤隆生氏

ヤフーで買ってもらうための施策としてポイント付与が貢献することが証明できた。持続可能性を今後どうしていくか。そこでショッピングに参加する人(ストア)への新たなポイント料率の変更を発表した。(宮坂社長

ストアのポイント負担比率を変更し、そのポイント原資は顧客に還元する。来期以降のショッピング事業の財務負担は減るのではないか。(取締役最高財務責任者の大矢俊樹氏

ポイント施策によって「Yahoo!ショッピング」の未利用者を誘導しとりあえず使ってもらう、1度利用してもらったらリピート購入につなげていく――ヤフーはこうした道筋作りを狙った2015年の取り組みに手応えを感じている。

一方、現状の赤字要因であるポイント施策を未来永劫続けているのは難しい。こうした背景と経営陣から発せられた言葉などから推測できるのは、大盤振る舞いとも言われるような現在のポイント施策は今後、ある程度抑えられていくのだろう。

そのために、今後の「Yahoo!ショッピング」で注目しておきたいのは次の3点。

  • 出店者のポイント原資負担の増加
    → ヤフーは自社のポイント付与負担を抑えながら、イベントなど時期を見ながら大規模なポイント還元を行っていくと考えられる
  • リピート購入の増加
    → ポイント施策の効果が上がり、1回目に購入したユーザーが2回目も利用するケースが増えている
  • 会員基盤を活用した「Yahoo!ショッピング」利用者の拡大
    → これまでは「Yahoo!プレミアム」会員に対して重点的にショッピングを訴求していたが、今後は他の会員基盤にも拡大

出店者のポイント原資負担率が1%から2.5%に変更

ヤフーは4月1日から、「Yahoo!ショッピング」出店者が負担するポイント原資負担料率を、現在の「1%~」から「2.5%~」に変更する施策を公表した。出店者から新たに徴収するポイント原資は、大型ポイントキャンペーンの継続実施などに投じる予定。

ヤフーのポイント施策はどこまで続く? 宮坂社長らが語る「Yahoo!ショッピング」の今後
変更内容の詳細(出典は出店者向けの「ポイント原資負担料率 変更のお知らせ

ポイント原資負担料率は、出店者から消費者へ付与するストアポイントの料率として店舗負担は1%~(各店舗によって1~15%まで変更可能)に設定されていた。

4月1日からは、従来からのストアポイントの負担分に加え、新たに売り上げの1.5%をポイント原資として店舗に請求。「Yahoo!ショッピング」から請求するポイント原資の合計は、最低で売り上げの2.5%となる。

このポイント原資の負担増について宮坂社長は、

料率があがっても(ヤフーの)財布に入れるのではなく、マーチャントと一丸となってお客さまに還元しようという取り組み。ストアさまから支持は得られているのではないか。(引き続き)ポイントを付ければ買ってもらえるような施策をしていきたい。(宮坂社長

と説明。大矢取締役と小澤氏も来期のポイント施策を念頭に入れ、次のように説明した。

(2015年度)下期にポイント施策をいろいろ試している。ポイント付与を無くしたキャンペーンもある。必ずしもポイントを増発しないと取扱高が増えない、というわけではない。(大矢取締役

2015年度は、ポイント還元はどれくらいあれば使ってもらえるかなどを勉強した。2016年度は見極めた投資をしていきたい。(小澤氏

ヤフーのポイント施策はどこまで続く? 宮坂社長らが語る「Yahoo!ショッピング」の今後⑥
写真右から宮坂社長、大矢取締役(画像は決算説明会の動画から編集部がキャプチャ)

ヤフーは、「Yahoo!ショッピング」による利益貢献は2017年度以降を予定。現段階では流通総額の拡大を重要視する。

2016年に20周年を迎えることを記念したイベントである「感謝祭」、「いい買物の日」などの大型催イベントには引き続き大規模なポイント還元施策を実施し、新規利用者と流通総額の拡大に努めていくのだろう。

一方で、2016年度は見極めたポイント投資を行う方針を掲げていることから、店舗からのポイント原資などを投資に回しつつ、徐々に自社投資によるポイント負担を軽減していくと考えられる。

「リピート購入」は確実に向上

キャンペーンを行っていない日の取扱高も、以前と比べて増加している。プロモーションで取扱高が増えているというよりは、サービスそのものが良くなっている上にプロモーションの効果が加わり、取扱高が増加しているということだと思う。来年度以降、ショッピング事業の費用負担は、今年度より減少すると考えている。

「Yahoo!ショッピング」を1度使ってもらって、良さを感じてもらうのは必要。そこから先のリテンションが高くなっているので、これまでと同等の販促をしないと取扱高が伸びない、というわけではない。

宮坂社長らがこう説明する背景には、リピート購入者が増えているという現状がある。

ヤフーによると、2015年12月度の月間の平均購入回数(1か月間に1人が購入する平均回数)は前年同月比で21%増加。

ヤフーのポイント施策はどこまで続く? 宮坂社長らが語る「Yahoo!ショッピング」の今後②
出典はヤフーの決算説明会資料

2015年11月の翌月再購入率は、同1月と比べると16%ポイント向上した。

ヤフーのポイント施策はどこまで続く? 宮坂社長らが語る「Yahoo!ショッピング」の今後③
出典はヤフーの決算説明会資料

「いままでのようにネットの利用者は新しく増えない。メディアだけのヤフーから、ショッピングなどを使ってもらうなど、お客さまを育てることが重要」。宮坂社長がこう語るように、ショッピングでも「客を育てる」という取り組みの成果が徐々に生まれているようだ。

流通総額拡大のカギは「会員基盤の拡張」

買い物時に常時ポイントが5倍付与される特典や、会員限定クーポンなどが提供されている「Yahoo!プレミアム」会員。2015年12月度「Yahoo!ショッピング」の総取扱高のうち、「Yahoo!プレミアム」会員が占める割合は55%に達した。

こうした状況について小澤氏曰く、

(ポイント施策は)「Yahoo!プレミアム」会員に刺さっている。「Yahoo!プレミアム」会員は利用者からお金をいただいているので、こうした人たちに還元できるようにした。

2015年までは「Yahoo!プレミアム」会員に対して、重点的に「Yahoo!ショッピング」の訴求を行ってきた。今後は「Yahoo! JAPANカード会員」「Tポイント会員」「ソフトバンク契約者」といった既存の会員基盤に対して「Yahoo!ショッピング」の訴求を行っていくという。

ヤフーのポイント施策はどこまで続く? 宮坂社長らが語る「Yahoo!ショッピング」の今後④
「Yahoo! JAPANカード会員」などへの「Yahoo!ショッピング」訴求を行う(出典はヤフーの決算説明会資料)

特に力を入れたいのがカード会員向け。「Yahoo! JAPANカード」「ソフトバンクカード(おまかせチャージ)」は、2015年12月末までに約180万人の会員を抱えている。投資の手を緩めず、今後は2016年3月までには220万人に拡大させる予定。

現在のところ、ヤフーのカードで「Yahoo!ショッピング」を利用するとポイント3倍といったポイント施策を行っている。

ヤフーのクレジットカードで「Yahoo!ショッピング」を利用する人が増えれば、カード手数料の収入は自然と増えていくため、相乗効果の高いカード会員の拡大は欠かせない。

ヤフーのカードで買い物をする人どれだけ増やせるか」。「Yahoo! JAPANカード」の会員向けサービスの拡充、会員拡大にも期待を寄せる宮坂社長には、「楽天カード」と「楽天市場」といった楽天が築いたショッピング圏の構築が視野に入っているのかもしれない。

ヤフーのポイント施策はどこまで続く? 宮坂社長らが語る「Yahoo!ショッピング」の今後⑤
eコマース・決済・会員サービスの併用を促進する(出典はヤフーの決算説明会資料)
この記事が役に立ったらシェア!
記事カテゴリー: 

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

ネットショップ担当者フォーラムを応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

[ゴールドスポンサー]
楽天株式会社 eBay(イーベイ) ecbeing. Qoo10
[スポンサー]
株式会社アイル Wowma! クリームチームマーケティング合同会社 ユーザグラム