海外ECの現状ってどうなの? 越境EC支援に力を入れるトランスコスモスに聞いてみた
中国や韓国、東南アジア地域のEC支援企業への投資を進めているトランスコスモス。2015年の中国の「独身の日」(11月11日)にはサポート先企業の合計売上高が2200億円を突破するなど、トランスコスモスの「グローバルECワンストップサービス」を利用する企業の売り上げが伸び始めている。グローバルECの状況、トランスコスモスの海外向けEC支援事業などを、グローバルECワンストップサービス本部・兼澤伸二本部長に話を聞いた。
グローバルのEC市場規模は日本の20倍
――「グローバルECワンストップサービス」を始めることにした経緯は。
トランスコスモスは、コールセンターなどのアウトソーシング事業において、約3000社の顧客基盤を持っています。こうした、顧客から「海外向けのECを支援してほしい」というニーズがいくつか上がっていました。
グローバルECの市場は200~220兆円規模といわれ、日本のEC市場規模の約12兆円に比べると、20倍近くの規模。グローバルの市場が今後もさらに成長するといわれていることから、今後大きな事業になり得ると考え、グローバルECワンストップサービスを提供することになりました。
――現在、サービスを展開している国は。
欧米、アジアです。アジアは中国、韓国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイ。インドにはシンガポールから越境でつなぐ形式で進出支援を開始しています。また、海外企業の日本進出(インバウンド)も支援しています。
今後は南半球エリア拡大も検討しています。
――現状、「グローバルECワンストップサービス」を利用している企業数は。
社数でいうと数十社です。ただ、コールセンターだけの提供、当社が商品を仕入れて各国で販売するパターン、海外EC展開を支援するパターンなど、さまざまな形態で支援しています。複数のサービスを利用しているケースもあるため、単純に何社というのは難しく、サービス提供形態によって変わってきます。
「グローバルECワンストップサービス」は顧客のニーズに合わした形態での提供、企業の事業ステージに合わせて支援できるのが特徴でもあります。
――「グローバルECワンストップサービス」の強みはどこにあると考えていますか。
1つは長年積み重ねてきた事業運営ノウハウです。たとえば、中国向けには1995年から進出、アウトソーシングサービスを提供してきました。その他の国も、いち早く現地に根付いた運用支援サービスを始めています。国ごとに商習慣・マーケティング・販売手法・オペレーションが異なるので、それぞれの国で最適な運用ノウハウを持っているという点は強みでしょう。
提供形態も、EC進出アウトソーシングサービスのほか、現地有力モールへの出店サービス、越境EC、商品仕入販売、商品ディストリビューションなどのサービスを用意。企業のニーズ・マーケットニーズに合わせて提案できるようにしています。
もう1つは物流システムです。
物流拠点は現在、日本、米国、中国、シンガポール、欧州に拠点を構えています。これらの拠点を国際物流でつなぎ、保税区連携で現地に一定の在庫を置きながら物流コストの効率化を実施するスキームを有しています。販売計画に応じて各拠点を連携し、最適な物流の仕組みを作ることでEC全体のサービスレベルを上げていきます。
国際間の物流とECオペレーション、マーケティングを組み合わせた仕組みはトランスコスモスの強みです。
中国は投資段階から一歩進んだ段階に
――各国のEC支援企業を買収したり出資などを進めています。どのような方針なのでしょうか。
細かい方針は国単位で組んでいますが、共通するコンセプトは“消費者との接点を持つ企業”という点です。相手側があることなので、そう簡単にうまくいかないことも多いのですが……顧客接点、国単位の最適な運用の仕組みを保有しているパートナーを意識しています。
――さまざまな国への進出を支援していますが、最も成果が上がりやすい国は。
やはり中国でしょう。市場規模が大きく、長年の運用を通じて市場、EC特性の理解しているため成果が出しやすい。ただ、中国進出や越境EC支援に関して多くの企業が提供しています。他社との差別化という点では、中国、東南アジア、欧米、日本を含む、アジア全体でのマルチチャネル、マルチカントリーのトータルECマネジメントにあると思っています。
――中国向けサービスでは、越境EC、現地進出、商品ディストリビューションのいずれのニーズが高いのでしょうか。
ニーズはいずれも高まっているというのが実情です。ただ、売り上げベースで見てみると、現地に進出している企業の売り上げが多くを占めます。トランスコスモスがサポートしている企業の「独身の日」(2015年11月11日)の1日の流通額総計は2200億円を突破しましたが、9割近くは現地になんらかの形で進出している企業による売り上げです。
――中国では投資段階ではなく、売り上げが拡大段階にある企業が多いのでしょうか。
中国ではすでに投資段階から一歩進んでいる企業が多くなってきています。東南アジアは、まだ投資段階の企業が多いですが、商品によっては売り上げにつながり始めている企業も出始めてきていると感じています。
メーカー、小売り、商社といった企業からの引き合いが増加中
――今後の展開で計画していることは。
各国でのマーケティング、オペレーション、物流の精度はまだまだ磨いていかなければなりません。やるべきことはたくさんあります。ただ、現在進めているところから大きく骨格が変わるようなことはないと考えています。
――2015年の「独身の日」の売れ行きが大きく報道されたこともあり、EC事業者による問い合わせも増えてきているのでは。
これまではメーカーからの問い合わせが多かったのですが、最近では小売企業、商社などさまざまな企業からの問い合わせが増えてきています。
これからもサービスを拡充させながら、さまざまな企業と共に事業拡大ができればと考えています。