大手ECモールに対する“独禁法問題”が再び? 公取委が実態調査結果を公表、違反行為には「厳正に対処」
公正取引委員会は1月29日、大手ECモールでの取引実態に関する調査結果を公表した。ECモールの出店料や出店審査の透明性などに対する、出店者の意見をまとめている。
公取委は今後、ECモールの運営実態などの情報収集を進め、違反行為には厳正に対処するとしている。
公正取引委員会としては、消費者向けeコマース取引の動向について、特にオンラインモール運営業者による行為を中心に、情報収集に努めるとともに、独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処していく(1月29日「消費者向けeコマースの取引実態に関する調査について」)
公取委は2018年1月から11月にかけて、大手ECモールと出店者の間で独占禁止法違反などが生じていないか調査した。小売事業者やメーカーなど4339人にアンケート調査を実施。さらに、小売業者やメーカー、オンラインモール運営業者、価格調査会社、価格自動更新ツール提供業者、価格比較サイト運営業者など117社にヒヤリング調査を行なった。
オンラインモールの利用料・決済方法への不満は?
ECモールの「利用料」に関する不満の有無を小売業者に聞いたところ、「不満がある」は38%、「不満はない」は62%だった。「決済方法」に関する不満の有無は、「不満がある」は15%、「不満はない」は85%。
公取委は、利用料の一方的な値上げや、決済方法を指定されることに不満を持つ出店者がみられたとしている。
ECモールの出店審査基準「開示されなかった」40%
ECモールに出店や出品する際の、運営業者による審査基準の開示の有無を、小売業者に質問した。その結果、「公表されている審査基準によって審査が行われた」と答えた事業者は39%、「公表されていないが事前又は事後に開示された審査基準によって審査が行われた」は6%で、何らかの形で審査基準が開示された割合は45%だった。
一方、「審査が行われたが、審査基準の開示はなかった」は40%、「審査はなかった」は15%となっている。
こうした調査結果に対する評価と今後の対応について、公取委は調査結果の中で次のようにコメントしている。
オンラインモール運営業者は、オンラインモールへの出店・出品の審査基準について予見可能性が確保されるよう、引き続き、可能な限り取引条件の透明化に取り組むことが公正な競争環境を確保する観点から望ましい。
公正取引委員会としては、オンラインモール運営業者が、オンラインモールへの出店・出品を不当に拒否したり、出店者を不当に退店させたりすることのないよう、オンラインモール運営業者と出店者との取引の状況について情報収集に努めるとともに、独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処することとする。
他モールへの出店制限や売価要請は確認されず
ECモールの運営者が出店者に対して、「自社サイトや他のモールで販売を行う際の価格と同等か安い価格で販売すること」や「同等以上の品ぞろえで販売すること」を要請する行為は、今回の調査では確認できなかったとしている。
また、出店者に対して、他のモールへの出店を制限する行為も、今回の調査では確認できなかったという。
モールの顧客情報の利用制限
モール出店者が、モールで獲得した顧客情報を利用する際の、利用範囲についても調査した。
「顧客情報は商品の発送等に必要な範囲で利用でき、販促活動等他の目的には利用できない」は46%、「顧客情報は商品の発送等のほか、オンライ ンモールでの販促活動や商品開発等に利用できるが、自社独自のダイレクトメール、メー ルマガジン等の発送には利用できない」は46%、「顧客情報を自社独自のダイレクトメール、 メールマガジン等の発送にも利用できる」は8%となっている。
過去にもプラットフォームの実態調査
公取委はこれまで数回、プラットフォーム事業者の実態調査を行っている。
2006年、楽天とヤフー、ディー・エヌ・エー(DeNA)の大手ECモール3社を対象に、出店者との取引実態を調査し、報告書をまとめている。
2016年には公取委と経産省が共同で、電子商取引(コンテンツ関係含む)などオンラインビジネスに関連するプラットフォーム事業者と、そこで取引関係にある出店者などに対し、事業者間の取引実態などを把握するためのヒアリング調査を行った。