鈴木 多聞 2016/7/15 8:00

こんにちは!株式会社オーリーズの鈴木多聞と申します。ネットショップを運営されている皆さまの中で、これから本格的にネット広告(運用型広告)を取り入れていきたい、あるい は今現状ネット広告(運用型広告)を実施しているがどうもうまくいっていない、という方に向けて「ネットショップ担当者のための運用型広告ゼミナール~運用型広告の広告効果の頭うちを打開せよ~」を題しましてネットショップの広告効果計測の基本から応用編のアトリビューション分析までシリーズでご案内いたします。「投資した広告費に対する損益をはっきりとさせる」という運用型広告では一見当たり前のことですが、これはとても奥が深いテーマ。初回となる今回は、ネット通販事業者はどういった数値を見ながらネット広告の運用に従事すべきか。損益分岐点の理解の重要性を踏まえ、広告運用に関する基本指標を説明します。

ネット通販事業の損益分岐点を把握しよう

事業の採算ライン、つまり損益分岐点を把握することが重要です。下記の図を見てください。

ネット通販事業の損益分岐点を把握しよう

通販・EC事業は、次のようなコストがかかります。

  • 固定費(売上高の変動に関係なく毎月支払う費用)……人件費、月額カート利用料、サーバー費用など
  • 変動費(売上高の増減に比例して変動する費用)……仕入原価、送料、広告費など

「売上高 - 変動費 = 固定費」が損益分岐点となり、達成すべき売り上げが算出できます。

ネット広告の運営担当者がよく勘違いしている例を紹介しましょう。

「仕入れた金額よりも高く商品を販売しているので儲かっている」「広告費に対する1件あたりの獲得単価(以下CPA)が、販売した1個あたりの商品の利益を下回っているから儲かっている」といった発想をしているケースです。損益を達成すべき売り上げと数量規模が頭に入っていないことによって損失が発生している場合があるので、注意しましょう。

自社の損益分岐点とコスト構造はしっかりと把握して下さい。

1商品の販売に投資できる広告費用を算出しよう

次は、1商品を販売するあたって許容できる広告費の算出(CPAの算出)です。シンプルな考え方では、平均販売単価から仕入原価と販売に伴う送料・手数料を差し引いた「粗利益」が、投資できる広告費となります。

例)
平均販売単価(5000円)- 仕入原価(2000円)- 送料・手数料(1000円)=粗利益(2000円)

上記の例では、投資できる広告費の上限(CPA)は2000円です。ただ、リスティング広告などの運用型広告は競争が激化しています。運用型広告の広告表示機会の獲得は入札原理が強く働くため、投資できる広告費の上限(CPA)が高ければより有利に広告出稿の機会を獲得できることになります。

リピート率を把握し、顧客の生涯価値を計算しよう

どうすれば投資できる広告費を引き上げることができるのか考えていきましょう。その1つがリピート施策です。リピート回数を増やし、顧客生涯価値(LTV、Life Time Value)を算出することで、投資可能なCPAをグッと引き上げることができます。

たとえば、あるECサイトで単価5000円の商品を購入する消費者の3割はリピートすると設定した場合、1年回で4回商品を購入する場合のLTVは、

購入単価5000円 +(購入単価5000円×リピート率30%×購入回数4回)= LTVは1万1000円

粗利益率は40%なので、LTVから算出される粗利益は、

LTVは1万1000円×粗利益率40% = LTVから得られる粗利は4400円

1年間を通して考えた場合、CPAは4400円となり、LTVを考慮しない場合のCPA(上記の例では2000円)から大きく投資できる広告費が広がります。

ROASを成果指標として把握しよう

複数の商品を取り扱っているアパレル系や総合通販ショッピングサイトは、商品ラインが複数あり、かつ複数商品のまとめ買いもあります。顧客単価、リピート率がそれぞれ異なるというケースがよくあります。

この場合、CPA指標も重要ですが、「投下した広告費がどの程度の売り上げとなって返ってきたのか」という「ROAS(Return On Advertising Spend)をしっかり把握し、広告運用を行っていく必要があります。

たとえば、売り上げが1000万円で広告費用が200万円かかった場合は、

売上1000万円/広告費200万円×100%=ROASは500%

と算出できます。それにあわせてROAS指標も、LTVを組み込んで考えることが重要です。

「LTVを加味したCPAは1万円で、代理店からの報告レポートは一律してCPAが1万円をクリアしていればうまくいっていると評価しています」というケースをよく聞きます。

厳密に広告経由の販売状況を精査した場合、低単価商材や利益率の低い商品、リピート率が低い顧客の獲得といった施策に偏向し、目標として設定したROASと、想定したLTVが乖離(かいり)したケースもあるので、ご注意を。

CPA、ROAS、LTVについてまとめていますので、ご参照ください。

今回の連載の内容に対して、“当たり前”のことだと思う担当者もいるでしょう。まずは、明確に損益分岐点を把握することで、経営判断の重要性を説明しました。成果指標が定まったら、積極的な事業拡大への投資判断ができますので、しっかり取り組んでいきましょう。

◇◇◇

次回は、広告経由の収益を把握する大きな2つの課題とその具体的な解決方法を解説します。

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