めっちゃ売れとったのになんで赤字やねん!【オカンでもわかるCPAとLTVとROASとROI】
ネットショップの経営が軌道に乗り、誰よりも夏を満喫していたオカン。でも、バカンスから戻って来た途端、僕のところへ血相を変えてやって来たぞ!? イラスト◎浮蓮 要
登場人物
あんた! これどういうことなん!?
え……なにが?
こういうことや!
----------注:ここから回想シーンです----------
あれ? ……あれ、目おかしなったんかなぁ……。
どうし……
なんでもあらへんわ!!
……そうか。
あ……。このままじゃあアカンー!!!!破産やーーーー!!!!!!!
----------回想ここまで----------
……父さん。
そこはどうでもええんや! 家計簿付けとったら、今月真っ赤や! マイナスや! まぁ、お父ちゃんの貯金あるから全然大丈夫なんやけどな。
それにしたって、あたしのサイト、めっちゃ人気になって売れとったんやで! それやのに、なんで利益が出てへんねん!
なるほど。それはね……。
売れてるのに赤字?! オカンの店の落とし穴
オカン、今月ってセールしてたよね?
そうや。
その売上を増やそうとして、広告費をすごく使ったんじゃない?
そうや! リタゲが上手くいったから、セールにして一気に販売してやったわ!
多分それが原因だね。オカン、CPAって聞いたことある?
なんやちょっと前にちらっと聞いたな。
……そうだよね(よくここまでやってこれたな)。ECサイトを運営する上で、売上や利益に関して大事な指標はいくつかあるんだけど、CPA、LTV、ROAS、ROIの4つは特に重要になってくるんだ。
まずはCPAから説明するね。CPAはこの式で計算できるよ。
売上単価-原価-人件費等その他のコスト-確保したい利益=目標CPA
この「目標CPA」は、売上から利益とか必要な経費を引いた後に残るものだから、1件のCV(購入や申し込み等)あたりに使っても大丈夫な広告費として考えられるね。
オカン、セールで安くしたから売上単価が下がったの忘れて、目標CPAをそのままで考えてたんじゃない?
……どういうことや。
例えば、セール前の売上が8,000円で原価が2,000円、人件費等その他のコストが1,000円、確保したい利益が1,000円だとしたら、目標CPAは?
4,000円やな。
そうだよね。じゃあセール中で30%オフだったとしたらどう?
8,000円の30%引きやから、売上が5,600円になるやろ? 原価とコストが変わらんで、目標CPAを3,000円にしとったら…… 赤や……1,400円赤になっとる……!!
これですごく売れたんだとしたら、赤字も相当な額になっちゃうよね。そんなんでバカンス行って爆買いしたから……。
これがわかってたらバカンスになんか行かんかったわ!!!!
LTV(生涯価値)で考えよう
でも、考え方によっては取り返す事もできるんだよ。
なんや、どうするんや!
それがLTVっていう指標での考え方。LTV(Life Time Value)は顧客生涯価値って言って、1人のお客さんがある一定期間にどれだけ利益をもたらしてくれたかを表す指標。
例えば、さっきと同じ人がもう1回、5,600円の商品を買った場合を考えてみよう。オカンのECサイトでリピート購入してくれたってことだね。
この時、よく言われているように「新規獲得費用(新規獲得にかける広告費)」の5分の1が既存維持(既存顧客を維持するためにかける広告費)にかかる費用だとすると、さっきのCPAの式で考えて利益はいくらになる?
売上が5,600円で、原価とコストが合わせて3,000円、目標CPAが5分の1で、800円になるから…… 黒や……1,800円の黒になっとる……!!!
そうなるよね。同じ人に何度も買ってもらえれば、1回目購入の赤字は実は取り返せるんだ。
ホンマや……! 最初が1,400円の赤字やけど、次が2,000円の黒字やから、プラマイのプラや!
3回目も同じように買ってくれたら、2,200円の利益が出ることになる。何度もリピート購入してくれればそれだけ利益が出るから、初回購入時にかけられる広告費も増やせるんだ。
時代はLTVやな!!
ただ、リピート購入してもらうには、買ってくれたお客さんへのフォローをしっかりしてオカンのサイトのファンになってもらわないといけないし、2回目は5,600円以下の商品を買ってしまうかもしれない。
……確かに。
例えば化粧品とかサプリとか、金額が一定でリピートがされるような商品だったら、このLTVの考え方はすごく役立つ。
でもオカンのECサイトみたいに、商材が多くて購入単価もバラバラになる場合は、別の指標で考えた方がいいんだ。それがROASとROIっていう指標。こっちもまずはROASから説明するよ。
ろあす……ああ、阿部寛がCMやってる桃のやつか。
……(それは……いろはす)。
ROASとROIとは?
ROASは、
広告経由売上 ÷ 広告費 × 100(%) = ROAS(%)
で表される指標で、CPA指標よりもっと直接的に儲かってるかどうかが分かる指標なんだ。
例えば1,000円の広告費で2,000円の売上が出たら、ROASは200%ってことになるよね。
確かにこれなら1回の購入ごとで売上が違っても、ROASが100%を超えてていれば、かけた広告費以上の売上が出てるってことがすぐにわかるな! CPAよりこっちの方が簡単やし、これでやるでー!!!
そうなんだけど、ROASが100%を超えていても、さっきみたいに赤字になってしまうこともあるんだ。
……アカン、もうダメや。今度にしよう。
あと1つだけ! ROIっていうやつだけだから。ROIは、
(利益×CV件数-広告費)÷ 広告費 × 100(%) = ROI(%)
で表されるよ。ROASが広告費に対してどれだけ売上が出ているかの指標だったのに対して、ROIは広告費に対してどれだけ利益が出ているかを表す指標なんだ。
例えば利益500円の商品が10個売れて、広告費が1,000円だった場合、ROIは400%になるよね。
ほうほう、1円の広告費で4円の利益が出せてるんやな。
そう。でも、気を付けないといけないのが、さっきも言ったけどROASで100%を越えていてもROIで見た時に赤字になっている場合があること。
広告経由の売上が150,000円、広告費が100,000円、利益が1つあたり500円で50個売れたとすると、ROASとROIはそれぞれどうなる?
ROASが広告費経由売上÷広告費×100%やから、150%になってええ感じや! で、ROIが(利益×CV件数-広告費)÷広告費×100%やから、-75%……! 赤になっとる……。
この場合、広告費1円あたり1.5円の売上は出ているけど、0.75円の赤字になっていて、売れているけど損をしている状態ってことが分かるよね。
もちろんこの時、新規獲得に注力をしているとかセール中だからとかでROIがマイナスになるのが問題ないこともあるよ。
大事なのは現状把握
たくさん指標を教えたけど、大事なのはサービスに合わせた指標を見て、現状をしっかり把握することなんじゃないかな。
売れるからってそれだけで良いってわけじゃないんやな! あれやな、一見さんをLTV含めたCPAで見て、リピーターさんをROASとROIで見てとか、なんかそんなんできたらええな。
……難しいと思うけど(多分できるんだろうなぁ)。
なんかちょっとの間で、ECサイトのこととか、アドテクのこととかめっちゃ学んだ気がするわ。知らんけど。
ECサイトがある限り、アタシの戦いはこれからやでー! ほな、またねー!
今回のまとめ
CPA(シーピーエー)
「Cost Per Acquisition」の略。CVを1件獲得するのにかかった費用のことで、ここでの目標CPAは1件のCVに使うことのできる広告費として説明しています。
会員登録や資料請求など、オンラインだけで購買活動が完結しないサイト(人材・不動産)や、扱っている商品が少ないサイトの場合は、CPA指標が適しているとされています。
LTV(エルティーブイ)
「Life Time Value」の略。特定の期間内に1人の顧客がもたらす利益を見る指標で、顧客と長期的に付き合いながら黒字に転換していく商材(単品のリピート通販など)に適しています。
ROAS(ロアス)とROI(アールオーアイ)
ROASは「Return On Advertising Spend」の略。広告経由売上÷広告費×100(%)で表される、広告費に対して何%の売上が出たかを見る指標です。
ROIは「Return on Investment」の略。(利益×CV件数−広告費)÷広告費×100(%)で表される、広告費に対して何%の利益が出たかを見る指標です。
どちらも、オンラインだけで購買活動が完結し、かつ価格帯の異なる商品を販売しているECサイトの場合に適しています。