新規顧客獲得に依存しない! リピート顧客育成に必要なCRM戦略のポイントを解説
参入企業が増え続けているD2C(Direct to Consumer)では、新規顧客獲得にフォーカスする企業が増えています。ですが、D2Cの定期モデルは商品がリピートされないと利益が生まれず破綻するため、CRMで利益を最大化することは新規獲得と同じくらい重要と言えます。そこで顧客との関係を強固にし、利益を最大化するための「王道のCRM4施策」について解説します。
D2C事業者が直面する3つの壁
広告費をかけて新規顧客獲得に注力することで顧客数は増えていく一方、商品・サービスをリピートしてもらわないと広告費を回収できないということが、D2C定期モデルではよくあるケースです。
事業者は「リピート購入を促進したい」と考える一方、一度だけ商品を購入してリピートしないユーザーが増えてきています。「せっかく獲得した顧客が離れていく」「広告費も回収できない」という状況に陥る事業者も多いことから、早期にF2の継続率を上げることが重要と言われています。
そして、CRMを構築する段階で「なぜ商品・サービスを継続しなかったのか」、その理由を把握・分析して改善することがCRMの第一歩だと考えています。
ここからはF2の継続率をはじめ、D2C事業者なら必ず直面するとも言われている「3つの壁」を説明します。
① 目標とする年間購入回数が達成できない
目標とする年間購入回数が達成できない要因は、先ほどあげた「F2の継続率」です。
F2へ転換せず、顧客が一度だけ購入して離脱する原因の1つとして、期待値を上げすぎているケースがあります。
例:A社サプリメント
LP上では「いつも若々しく、前向きなあなたにおすすめです」と健康食品の訴求をしていますが、購入後のメールやパッケージには「効果を実感するには数か月の継続が必要です」と記載されています。
「新規顧客を獲得したい」という広告側の訴求と、リピートを促したいCRM側の訴求にずれが生じてします。これにより、1か月で効果が出ることを期待していたユーザーの願望は裏切られてしまい、離脱につながります。
そこでCRMとして重要になるのが、ステップメールや同梱物で初回の期待値をコントロールすることです。
NG例:効果を実感するには数か月の継続が必要です
OK例:美しくなるための最初の一歩、おめでとうございます!
このようにユーザーの気持ちに寄り添いながら、ポジティブな表現を用いて1か月目の重要さを伝え、期待値をコントロールすることで2回目の継続につなげていきます。
② リピート客が増えずコストをかけられない
広告費を決める際に考慮する主な指標は次の通りです。
広告費を定める際に使用する指標
- CPO(Cost Per Order):顧客から1件の注文を獲得するためにかかった費用を示す値
- LTV(Life Time Value):顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの間に、どのくらいの利益をもたらすかを示す値
- ROAS(Return On Advertising Spend):広告費に対してどれだけの売り上げが得られたかを示す値
「CPO」と、事業者が定める期間をもとに算出した「LTV」によっては、「ROAS」が合わず広告費がまかなえなくなるというケースもあります。こういった場合の解決策は、F2の転換率を上げて着実にリピート客を増やしていくことです。
リピート客を増やしていくことができれば、新規獲得に広告費をかけられるだけでなく、CRMには欠かせない同梱物などの制作物にも予算を割くことができるようになります。
③ 自社だけの「独自の強み」を伝えられない
商品の差別化が難しいと言われているなかで、自社の商品やサービスを選んでもらうためには「独自の強み」を伝えることが重要です。
その商品やサービスにしかないポイントや特徴が1つでもあると選ばれやすくなります。一方で、独自の強みをしっかり伝えられないと生き残ることは難しいでしょう。
顧客との関係性を強固にする「王道のCRM4施策」とは
では、どのようにリピート客を増やしていけば良いのでしょうか。「王道のCRM4施策」をお伝えします。
施策①:ステップメール
あらかじめ作成したメールを、条件に合わせて段階的に配信するメールマーケティング手法です。ステップメールを活用することで「リピート促進」や「商品のファン化」を刺激することができます。
たとえばリピート促進が目的の場合、次のような内容があげられます。
- 「購入後のお礼」や「商品の発着」といった、店舗で受けられるサービスと同等の内容
- しっかり効果を感じてもらうために「使用方法」や「規定量」を伝える
- 「先輩顧客の声」を紹介し、商品を使い続けた時の未来を提示する
施策②:定期的なメルマガ
新商品の紹介やキャンペーンの告知だけでなく、アフターフォローもできる効果が期待できます。
定期的なメルマガ配信では「One to One」を意識することが大切です。
顧客の情報をセグメントしてニーズを読み取り、最適なコミュニケーションを行うことでロイヤル顧客の育成にもつながります。
施策③:同梱物
商品と一緒に送付する印刷物のこと。代表例として納品書、挨拶状、商品パンフレットなどがあげられます。
同梱物は支払い用紙なども入っていることから、まとめて捨てられる可能性が低く、ほぼ開封される重要な手段です。
同梱物を入れる際は、「見てほしい同梱物は埋もれていないか」「どういう順番だったら捨てられないか」など、最適な順番をユーザー目線で考えることが大切です。
施策④:DM(ダイレクトメール)
Webが主流の時代においても、使い方次第でDMは強力な武器になります。
DMはメルマガや「LINE」を読まない層にアプローチできること、スマホやパソコンなどの端末を立ち上げなくても記事が読めるツールという点で、利用価値は高いです。
活用例としては、定期コースの引き上げやクロスセルなどの割引訴求だけでなく、最近では成分訴求をメインとしたDMなども増えてきています。
商品に配合されている成分の解説、その成分を摂ることで得られる効果など、ロジックを解説することで安心感を与え、リピートにつなげていくのです。
すべての施策の答えは顧客が知っている
ステップメール、定期的なメルマガ、同梱物、DM――これらの「王道のCRM4施策」は、最低限行うべき4施策とも言えます。
まずはこれらの施策を実施した上で、他のツールを活用したりイベントを開催したりするなど、施策の幅を広げる検討しましょう。
定量調査で施策の良し悪しを判断する
施策は実施して終了ではなく、その後「定量調査」と「定性調査」の両面で分析を行いましょう。
すべての施策を進めていくと、結果が数値として表れ、施策の良し悪しが判断できます。
効果の高い施策は予算をかけてさらに良くしていき、効果の低い施策はそのまま放置したり、安易に止めたりするという判断をするのではなく、まずは改修・改善を繰り返していきます。
定性調査でニーズを把握する
一方、施策の効果検証は数値だけでは判断しきれない部分もあります。
たとえば「ステップメールを見てからDMで商品を購入した」など、それぞれの施策は関連していますが、その道筋までを数値で辿ることはできません。また、紙媒体の場合「どれだけ読まれているか」を数値で見ることもできません。
これらを把握するための手段が「顧客の声」です。
アンケートを実施したり電話で声を聞いたりすることで、すべての施策が実際にはどのように活用されているかを知ることができます。
【 アンケートの質問例 】
- 弊社からお送りしている情報のなかで、一番気になっているものを教えてください。
- 今月の季刊誌は読んでいただけましたか?
- 季刊誌のなかで一番良かったコンテンツを教えてください。
このように手間を惜しまず「王道のCRM4施策」を改修・改善していくことが、CRMで利益を最大化する近道とも言えるのです。
次回はリピート率向上のために、CRMとSNSの連携が不可欠な理由について解説します。