デジタル時代に電話対応が重視される理由とは? キーワードは「サブスク」「顧客体験」「VOC」
ECサイトなどでも問い合わせチャネルが多様化していますが、密かに電話によるボイスコミュニケーションの重要性が見直されているのは知っていますか? 台頭するサブスクリプションビジネスとの相性の良さ、リピート購入につながる顧客体験の提供、顧客の声を自社のECサイトに反映させるための「VOC」活用といった観点から、電話対応に乗り出す企業さんも増えているんです。デジタル時代になぜ? その理由などを解説していきます。
デジタル時代になぜ電話?
相性がいいサブスクリプションと電話
「進研ゼミ」などで知られるベネッセコーポレーションはデジタル時代の中でも、電話対応に力を入れている1社。通信教育を主にサブスクリプションビジネスで全国各地に顧客を抱えています。
当初、電話サポート業務はアウトソーシングしていましたが、顧客満足度アップ、課題のスピーディーな解決といった目標を達成するためには、消費者の声を自社に近いところで拾い上げる必要性があると考えました。
本社内に、自社でインバウンドを受けるモデルセンター「パイロットセンター」を設置。入電の一部をそこで受けるようにして直に消費者の声を拾い上げ、対応策を検討してスピーディーに関係各所へ展開していきました。その対応策は、アウトソーシングしているコンタクトセンターにも反映していきました。
ベネッセコーポレーションのようなサブスクリプションモデルは、ジャンルを問わず拡大中。必要以上にモノを所持しない、自分の価値に合致した商品は継続し、都度モノを選ぶ手間を省くという現代的な消費者ニーズに、継続課金型のサービスがマッチしているからです。
顧客を獲得し、継続に至れば経営基盤の安定という面で非常に魅力的なモデルで、顧客と企業の関係が対等になったからこそ台頭してきたサービスと言えます。
関係性が対等になってきたからこそ、企業が顧客に自社の商品を選び続けてもらうには、顧客の課題やリクエストに素早く対応するなど、密なコミュニケーションをとり続けることが不可欠となります。そのためにも、電話のように双方向でリアルタイムのコミュニケーションができ、スピード感を持った顧客対応を可能にするツールが必要になります。
こうした背景から、前述のベネッセコーポレーションのように、サブスクリプションモデルを持続させるため、電話によるボイスコミュニケーションを重要視する企業が増えてきています。
ECビジネスでも定期購買という形で消費者消費者と持続的な関係を築き、しっかり維持していくサブスクリプションモデルが今まで以上に必要となってきました。他の業界と同様、ECビジネスでサブスクリプションモデルを成功させる上でも、電話によるカスタマーサポートが重要なチャネルになるとことは間違いないでしょう。
SNS社会と高齢化社会への突入も大きな影響
ソーシャル時代におけるSNSの台頭も、電話対応の重要性が増したことに大きな影響を与えています。
社内からオープンに情報発信を行う場合もあれば、消費者消費者が情報収集はもちろん、「○○という会社にこんな対応をされた」といった消費者個人のリアルな体験談を気軽に、しかも全世界に発信することが可能になりました。消費者から消費者へ、ネットを伝いあっという間に拡散され、ネガティブな内容の場合は批判的な意見が企業側に押し寄せる“炎上”状態に発展しかねないため、透明性のある誠意ある対応が企業には求められています。
高齢化社会という背景も見過ごせません。デジタル技術は進化していますが、お年寄りにとっては煩わしく扱いにくいツールばかり。最も使い慣れた「電話という負担が少ないコミュニケーション」手段に頼る消費者も多くこれからも増えていくでしょう。
これらの社会的背景を企業がしっかりと認識し、顧客とより密なコミュニケーションをとることが重視されてきていると言えます。
これまでEC業界では、顧客窓口は問い合わせフォーム、bot対応のチャット方式によるFAQへの誘導などといった非対面での対応が多かったと思います。ただ、前述した社会的背景を鑑みると、従来の方式では個別で密なコミュニケーションが発生しないため、体感として定型的で軽いコミュニケーションと捉えられ、消費者の不満足が発生しやすい状況となっているのです。
一昔前、電話番号は深い階層の下まで探さないと電話番号が見つけられなかったAmazonさんですが、いまでは北海道、仙台、福岡などにコンタクトセンターを設置。電話対応に力を入れています(こちらをご参照)。
「消費者さまの声に応える」という顧客窓口の役割自体は、昔も今も本質的には変わりません。ただ、今まで以上にコミュニケーションの質を向上させる必要が出てきたのです。密なコミュニケーションを行うことで消費者満足度の向上、製品開発へのフィードバッグ、さらに商談機会の拡大を得ることができます。これらの獲得こそが、サブスクリプション時代にも適応するビジネスの継続へのカギとなるでしょう。
デジタル時代に求められる“最高の顧客体験”とは
消費者への対応においては常に“最高の顧客体験”を提供することを目指さなければ、ビジネスの成長はありません。
ここでいう“最高の体験”とは、①経済的満足(適正な価格、お得感)②作業的満足(利便性の体感、作業効率の向上)③心情的満足(対応への満足、将来性への期待)の3つの満足を提供して得られる体験のこと。
満足度は、期待以上の結果が得られた場合に感じやすいと言われていますので、顧客対応においても対応の実績値と対応の期待値の差が大きければ大きいほど、満足度が高くなります。
消費者とのコミュニケーションでは、顧客側が求める課題解決ができているか、特に難しいとされる③の心情的満足への誘導ができているかどうかがポイントになってきます。この点においては、顧客対応として「対応しすぎるぐらい」がちょうどいいと考えているEC業者が最近増えてきた印象です。
とにかく手厚く、採算度外視という感覚で対応している会社は多いのではないでしょうか。これらを実現するためには、確実なヒアリングや密なコミュニケーションができ、ロイヤルティを高められるツールとして、電話の活用が有効なのです。
デジタル化が進む中、電話というコミュニケーションツールは時代遅れのように思われがちですが、逆です。デジタル時代だからこそ、人と人のコミュニケーションが新たな商機を見出す可能性を秘めています。
電話対応はアウトソーシング、それともインハウス?
膨大な量の問い合わせを処理する顧客対応窓口をアウトソーシングする企業もあると思いますが、最近の傾向として、コールセンター業務はインハウスで構築する重要性に着目する企業が増えつつあります。
インハウスのメリット・デメリット
自社の中でコールセンターを構築・運営することです。社内で対応を完結できるため、難しい内容の問い合わせや消費者からの要望などにスピーディーに対応することができます。また、消費者からの要望を製品開発にフィードバックする際のスピード感にも優れています。
一方、人材の採用・教育、運営体制の構築・維持にかかる管理コストが高くなるというデメリットがあります。
アウトソーシングのメリット・デメリット
外部事業者にコールセンターの構築・運営を委託することです。
コールセンターは電話による顧客対応という特殊なスキルを求められる職場ですが、あらかじめ育成された高いスキルレベルを持つオペレーターが対応してくれます。また、繁閑に応じて対応するオペレーターの人数を増減する必要がある場合にも、クライアント企業はシフト調整をする必要などもなく、負荷を軽減できます。
しかし、クライアント企業に確認しなければ対応できないケースが発生することもしばしばあり、エスカレーションが必要となる分、対応速度が遅くなることもあります。また、顧客の声のデータをクライアント企業に提出するのに時間がかかり、情報鮮度が落ちてしまったりするなどの課題もあります。
インハウスとアウトソースを両立する例
このように、完全に外部へ移管した場合、アウトソーシング先からエスカレーションされてくる情報には温度差があり、消費者への対応に至るまで時間を要する場合も多く、対応スピードの低下は顧客満足度にも影響を及ぼします。
弊社がスポンサーした「コンタクトセンター・アワード2018」でも発表事例の1つとして、インハウスの重要性を訴える声がありました。先に説明した、ベネッセコーポレーションがその1社です。
もともと電話対応はアウトソーシングしていましたが、先の説明のように、問題の解決スピードアップ、顧客対応の精度アップなどを目的に、一部業務をインハウスに移管。ノウハウを蓄積しました。
そうして出来上がったいくつかの最適なパターンをアウトソーサーに横展開していくという形で、コールセンター運営を確立したのです。運営開始から数年が経過しますが、非常にうまく機能しているそうで、インハウスセンターとアウトソースをうまく両立している例といえます。
インハウス、アウトソース、どっちを選べばいい?
対応スピードの速さによる顧客満足度向上の観点から、今後コールセンターを構築したいと考える事業者の中には、インハウスでの運営を検討されている方もいらっしゃるでしょう。
インハウスにするかアウトソーサーにするかは、自社内でコールセンターの業務にかけられる人的なリソースが1つの判断軸になります。
コールセンターに割ける人員が少ない場合には、業務効率化を極力高める必要がありますが、クラウドサービスの登場により便利なコールセンターシステムを低コストで気軽に導入できるようになりました。
弊社が展開するクラウド型コールセンターシステム「BIZTEL」も、スタートアップ企業をはじめとする多くのEC事業者が利用しています。
企業によって取り扱う商品やサービスは多種多様であり、求められている機能も異なります。クラウドサービスの中には、豊富な機能の中から必要なものだけを選んで利用するといった方法もあります。クラウドサービスの普及は、インハウスでの運営を検討している事業者にとっても追い風といえるでしょう。
ECサイトの価値をあげる「VOC」
今後、ECサイトの顧客満足度をあげるといった時に、VOC(Voice of Customer)は必要不可欠になります。商品やサービスの魅力を高め、お客さまに選び続けてもらう必要があるサブスクリプション時代において、消費者の生の声は企業にとっての大きな財産です。
たとえば、AI(人工知能)が問い合わせ内容を自動入力するといった技術も出てきており、顧客の声をテキスト化することで、それをECサイト運営に活用するといった企業も増えてきます。
問い合わせが多い内容については、FAQを拡充したり。商品説明ページのコンテンツ拡充に役立てたりと、VOCは対顧客向けのコンテンツ拡充にも大きな役割を担うのです。
VOCの蓄積にあたっては、やはりインハウスの方が吸い上げやすいでしょう。人的なリソースが足りない部分はアウトソーサーやツール導入で補うなど、自社運用でのVOC収集も検討しても良いかもしれません。