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これからの小売業界はテクノロジーを理解し、ビジネスモデル変革をした企業が制します。今、ITの進化と普及により、OMO(Online Merges with Offline)と言う言葉が現実味を帯び、デジタルで繋がっていない世界は無くなりつつあるのです。そのため、小売業を中心に、関連する全ての業界に変革が起きており、これまでのビジネスモデルは早急な見直しを迫られています。

「デジタルの普及」により進むECと実店舗のボーダレス化

変革の時代に答えを示す「ニューリテール」

小売業における早急なビジネスモデルの見直しが迫られる一方で、日本のEC化率は未だ10%以下であるというデータがあります。しかも本質的には残りの90%の購買行動にもデジタルの影響は拡大しており、年々その勢いは増しているのです。

特に日本は、ECとリアル店舗を分けて考えがちですが、その概念を無くさなければこの変革の時代に顧客の支持を得る事は難しいでしょう。 では、どうしたら良いのか。

その答えを鮮明に表しているのが「ニューリテール」です。

誤解のないように説明しますが、ニューリテールとは最新のテクノロジーを使った、Amazon GO(アマゾン ゴー)や盒馬鮮生(フーマー)などの店舗の事ではありません。

書籍『事例でわかる新・小売革命』の中で著者である劉潤(リュウ・ルン)氏は、ニューリテールとは「『物』と『人』それをつなぐ『場』の3つで効果的に商品が移動する方法を最適化するメソッドであり進化し続ける物」と説いています。

「物」×「人」をつなぐ「場」の3つの役割

「物」には「短絡経済」のロジックで中間プロセスを変えて価格や利益を最適化する事、「人」には「売場効率革命」のロジックで売上高 =トラフィック(人流量 )×コンバージョン率 (成約率)×客単価×リピート率を上げる事、そして「場」には「データエンパワーメント」のロジックでオンラインとオフラインを有効活用し、「情報流」「金流」「物流」を効率化するという役割があります。

「事例でわかる 新・小売革命」(劉潤 著)を元に筆者が作成

この定義に則ると、ニューリテールとは近年の小売りの変革を指すだけの言葉ではないのです。

19世紀~21世紀における「ニューリテール」の変遷

19世紀のニューリテールは、米国の百貨店「Sears(シアーズ)」など、鉄道の誕生に対応してカタログ通信販売を開始し、自由返品や代金引換のサービスを提供した企業が勝ち組でした。

日本でも主要都市に百貨店が続々とできたとき、そこにある物は良い物と認識され、売れていきました。 20世紀のニューリテールは、自動車の普及に対応し、家賃の安い郊外で「エブリデイ ・ロープライス 」の大型スーパーマーケットでワンストップマーケティングを提供した 「Walmart(ウォルマート)」があげられるでしょう。

この2つの変化からも、その時代のテクノロジーの変化に対応したビジネスモデルを構築した企業が市場をけん引していくことがわかります。 当然、21世紀のニューリテールは、インターネット、モバイル、ビッグデータ 、 SNS、 AIなどのテクノロジーを上手に活用し、ビジネスモデルを変革する企業が勝ち残っていくのです。

正念場を迎えた21世紀のニュールテール変革

今は、「人の集まる場所=利益の上がる場所」ではない

前置きが長くなりましたが、私は20世紀の小売マンとして、当時のニューリテールであったウォルマートを見習い、ランチェスター理論による出店計画や商品陳列・レイアウトの効率化、CRM(Customer Relationship Management)による顧客の囲い込みを推進してきました。

まず良い「場」をおさえ「物」と「人」の効率化を考えてマーケティングを推進してきたのです。どうすればお客様は増えるのか。TVCM、チラシ、DMなどを駆使して、客数を増やし、購買点数×単価を上げるためのインストアプロモーションにも頭を悩ませてきました。

特に、“ついで買い”でコモディティ品をいかに買ってもらうかなど、POSデータや会員の購買データを活用した売り方の改善には多くの時間を費やしてきました。

2011年からは株式会社オプトでデジタルを駆使した広告やCRMのコンサルティング・サポートを行っていますが、今まさに21世紀のニューリテール変革における正念場を迎えていると感じています。

痛感するのは、もはや人の集まる場所=利益の上がる場所ではない、ということです。

インターネットやモバイルの普及以前は、場所がパワーを持っていました。良い場所には人が集まり、人が集まれば物が売れる。シンプルであるが故に強いルールだったのです。

まず鉄道の発展により、人の集まる場を持ったのが百貨店で、百貨店の「場」の力を借りて多くのブランドが成り立ちました。

次にクルマの普及によって人の集まる場所を作る事が出来るようになると、郊外型ショッピングセンターやモールとその「場」の力を借りて成り立ってきたブランドが多く生まれましたが、現在はいずれも厳しい状況に陥っています。 これは、ECにシェアを奪われているからかというと、そうではないのです。なぜなら日本のEC化率は、いまだ10パーセント以下だからです。

ルールや道具が変わればやり方も変わる、その当たり前を瞬時に理解する

冒頭で触れた様に、ニューリテールは場の再定義を「情報流」「金流」「物流」の最適化で実施するものであり、ユーザーが大量の「情報」を自由に取捨選択出来る様になった今、人が集まる立地にあるだけの「場」も、リーチを稼ぐだけの「情報」も、値引きと売り切りで取引される「金」も、その場にあるから買われるコモディティ化された「物」も、どんどんと取り残されていくのが目に見えているのです。

もちろん多くの企業はそれに気づいており、危機感を持っていますが、今までのやり方が徐々に通用しなくなっている現状に戸惑っているのではないでしょうか。

私の前職はスポーツ用品の小売(ヴィクトリア/ゼビオ)であり、スポーツの「ルール」変更や「技術革命」による変化はよく見てきました。

私が学生で競技スキーに明け暮れていた時、「カービングスキー」(※編注:カービングターンが容易に行えるように1990年代に開発されたアルペンスキー用のスキー板)という技術革命が起きたのです。 その技術革新により、少しのミスも許されないよりシビアな競技へと変化。それまで善戦していた私ですが、ライバルとの差がどんどん開いていった苦い思い出があります。

伴氏が競技スキーに打ち込んでいた学生時代「カービングスキー」が登場し、「少しのミスも許されないシビアな競技に変化した」という

プロの世界でも、道具の進化によってプレイヤーがやり方を変えなければ勝てなくなることが起きえます。その道具、ルールの中でしっかり勝つ技術を身につけた者が勝者となるスポーツと同じように、この変革を理解し戦える技術を身につけるべきでしょう。

そのヒントは変革を担うGAFA(※編注:IT業界のトップに君臨する4社【Google、Apple、Facebook、Amazon】の頭文字をとった略称)やBAT(※編注:中国の大手IT系企業3社【Baidu、Alibaba、Tencent】の頭文字をとった略称)、「情報流」や「金流」をうまく活用しているD2Cやサブスク企業などから学び取り入れる事が出来るでしょう。

ここからは、直近1年で実際に私が見てきた「場」をうまく作り上げている海外企業を例に、各企業が「情報流」「金流」「物流」をどの様に活用をしているのか整理していきます。

OMOの担い手、Amazonとアリババの事例に学ぶ効果的な「場」づくり

「目的購買のロングテール商品を捨てた」Amazon Books

オンラインで作り上げてきた武器をオフラインで活用するAmazonやアリババの巧みさを理解する事で「場」の使い方を再定義できれば、すでに「場」をもつトラディショナルリテールもニューリテールへと変革する事が出来るのではないでしょうか。

リアル店舗と言えば先端技術を活用するAmazonGOや規模のある Whole Foods(ホールフーズ)に注目しがちですが、場の使い方においては、Amazon Books(アマゾン ブックス)が最も洗練されていると感じます。

Amazon Booksの一番の凄さは、全て面置きのレイアウトが出来る事です。SKU(商品数/ Stock Keeping Unit)を絞って本を面置きし、表紙を見やすくする。 どこの書店でも一部コーナーなどでやっている事ですが、これを全面でやる事は、目的購買のロングテール商品を捨てる事です。つまり「本屋で探し物がみつからない」確率が上がってしまいます。

AmazonBooks店内(画像:著者撮影)

これを許容できるのは、探し物はオンラインに託し、オフラインでは偶然の出合いやインスピレーションを重視しているからに他なりません

当然Amazonならではの仕掛けがそこにはあり、得意とするレコメンドはもちろん、3日以内に読み終わる本やKindleユーザーにマークラインが最も引かれた本など、買いたくなる「情報」が溢れる「場」となっています。

さらに流石だと思わせるのが、キッズコーナーの充実です。絵本などは、親子で一緒に選んだり確かめたりしてから買いたい物。オフラインの強みを活かした上で、オンラインで獲得しにくいプライム会員を増やす仕掛けになっているのです。実際にアメリカの店舗ではキッズコーナーに多くの親子がいましたし、多くの子供がキッズ用のKindle端末を持っていました。

店内で食べて美味しさを知れば、以降はECでオーダーできる「フーマー」

アリババでは、リアルの強みを最大限に活かした「場」の使い方をしている生鮮食品のスーパーマーケット「フーマー」が外せません。

トレーサビリティ(食の安全)に懸念のある中国で、新鮮さを伝える為の「生け簀」があり、魚介類をその場で調理してもらうこともできます。料理はロボットによって運ばれ、イートインコーナーで食べることができます。何回行っても楽しい場所です。

私は中国に行く度にフーマーをレストランの代わりとして使うのですが、本当に美味しいと感じています。

現地の知人に聞くと、一度店内で食べて美味しい事を知ると、それ以降はECでオーダーし、あまり店舗には行かないと言うのです。スーパーであり、ECの倉庫であり、レストランであり、フードデリバリーでもあるこの場所は、EC化率60%。見事にOMO化している小売店舗です。

生鮮食品スーパーマーケット「フーマー」(画像:著者撮影)

ECベースでビッグデータを活用するAmazonやアリババの体験する「場」づくりは、ECの受皿があり、会員化しLTVを高める仕組みがあるからこそ成り立っているのです。

次回は、リアル進出で躍進するD2C企業の「場」の活用について解説していきます。

この記事は、株式会社オプト エグゼクティブ・スペシャリスト パートナー 兼 オムニチャネルイノベーションセンターセンター長 伴大二郎氏が執筆しました。

「Digital Shift Times」のオリジナル版はこちら:デジタルシフト時代の小売りビジネス最前線 #01(2019/12/17)

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日本企業のデジタルシフトの道しるべになることをミッションに掲げ、未来を見据えて経営の舵取りをしている経営者層やデジタル部門・マーケティング部門の責任者向けに、デジタルシフトと向き合い企業の変革を進めていく上で必要となる情報を提供しています。

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