朝比美帆[執筆], 吉田 浩章[撮影] 5/22 7:00
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セガサミーホールディングス傘下で、玩具の開発・製造・販売や、アミューズメントゲーム機器の開発・販売などを手がけるセガフェイブ。EC事業では、オンラインくじ、オンラインクレーンゲーム、フィギュア販売の3つのECサイトを運営しており、デジタル商材とフィジカル商材の双方で、アニメ・マンガ・ゲーム作品のファンから人気を集めている。新規ユーザーの購入のしやすさ、さらには離脱率の改善、売上アップにも寄与した施策とは――。ECサイトの改善を推進したMD国内ビジネス部 副部長の土屋政喜氏と、同部オンラインビジネス課 課長の笹谷崇氏に取り組みを取材した。

※セガのアミューズメント機器事業は吸収分割でセガトイズに承継。セガトイズは4月1日付で「セガフェイブ」に商号を変更した。

ゲームメーカー大手セガフェイブのECサイト改善事例。使いやすさを求めて離脱率最大20%改善のアプローチとは?

新規登録のハードルを下げ、顧客の裾野拡大を強化

オンラインくじ、オンラインUFOキャッチャー、フィギュア販売でAmazon Payを導入

セガフェイブのEC事業では、次の3つのサイトを運営、それぞれのページで「Amazon Pay」を導入している。

  1. 「セガ ラッキーくじオンライン」:インターネット上でキャラクターくじを引き、当選商品をユーザーに届ける。2017年にサービスを開始。ハズレなしで必ずアイテムが当たる仕組みのため、ユーザーはあまりハードルを感じずに参加しやすくなっているのが特徴だ。
  2. 「S-FIRE(エスファイア)」:人気アニメやマンガのフィギュアの販売。取り扱うグッズの作品タイトルごとにファンが集まる傾向にあるため、ユーザーの年齢層や性別は流動的に変わる。
  3. 「セガUFOキャッチャーオンライン」:オンラインクレーンゲーム。獲得した商品をユーザーに届ける。「いつでも、どこでも、誰でも遊べる」というオンラインの強みを生かして、幅広い層にアプローチする施策を展開している。

※「Amazon Pay」のサービス規定では、くじを含む賭博・ギャンブル行為への利用は原則として禁止(ギャンブル性・賭博性の低いもののみ例外的に許容)されています。

「セガ ラッキーくじオンライン」トップページ(左)、「S-FIRE」トップページ(中央)、「セガUFOキャッチャーオンライン」(右)
「セガ ラッキーくじオンライン」トップページ(左)、「S-FIRE」トップページ(中央)、「セガUFOキャッチャーオンライン」(右)

「新規登録の簡単さ」「顧客の安心感」を両方かなえる施策

「セガ ラッキーくじオンライン」の提供を始めた2017年、利用には専用ID「SEGA ID」の登録が必須だった。

「SEGA ID」はセガがラインアップするオンラインゲームなどで使われているため、ゲームユーザーには浸透しているが、そのほかのユーザーには認知が低かった。そのため、初めて利用するユーザーにとって、オンラインくじを利用できるようになるまでの手順が煩雑で、途中離脱してしまう懸念があった。

以前の手順は、ID登録ページに遷移し、メール送信などの過程を経て登録が完了した上で、ようやくくじが利用できる――というもの。この登録過程での離脱を解消するため、「セガ ラッキーくじオンライン」のサイト刷新に合わせて、2021年1月にAmazonのID決済サービス「Amazon Pay」を導入した。

「セガ ラッキーくじオンライン」でくじをひく際、「Amazon Pay」ログイン画面に遷移
「セガ ラッキーくじオンライン」でくじをひく際、「Amazon Pay」ログイン画面に遷移

2021年、サイトの全体的なリニューアル作業と同時に「Amazon Pay」の実装を進めた。導入後、決済方法の選択画面で「Amazon Pay」を選んだユーザーは、Amazonアカウントを使ってログインが可能なため、簡単なステップで新規登録から購入までできるようになっている。

「Amazon Pay」を選んだ理由は、「お客さまの裾野を広げたいと考えたときに、国内外でAmazonの利用者が圧倒的に多いことがまず思い浮かびました」(笹谷氏)。また、顧客にとって簡潔で使いやすい導線を構築できることも、大きなポイントになったようだ。

従来のサイトは導線が煩雑でした。より使いやすいサービスにするため、サイトをリニューアルしました。その際、さまざまな業界のUI(ユーザーインターフェース)・UX(ユーザーエクスペリエンス)に優れたサイトを見たところ、「Amazon Pay」を導入しているサイトが多かったことも、導入の後押しになりました。(土屋氏)

セガフェイブ MD国内ビジネス部 副部長 土屋政喜氏
セガフェイブ MD国内ビジネス部 副部長 土屋政喜氏

「セガ ラッキーくじオンライン」の刷新と同時期の2021年にサービスを開始した「S-FIRE」も、同様に「Amazon Pay」を導入。「ソーシャルログイン機能によって購入までの導線が短くなったため、売上アップに貢献しています」(土屋氏)

「S-FIRE」の「Amazon Pay」ログイン画面
「S-FIRE」の「Amazon Pay」ログイン画面

プロモーション効果アップにも寄与する「Amazon Pay」の導入メリットとは

「Amazon Pay」の導入メリットについて、セガフェイブは決済完了までのフロー簡略化によるCVRや離脱改善効果をあげている。Amazonアカウントに登録された配送先などの情報が最新の状態で自社ECに自動的に連携されるので顧客は入力の手間を省くことができ、新規登録もしやすくなるため、CVRの改善効果が見込まれる。「セガ ラッキーくじオンライン」でも、サイトリニューアル前に課題としていた会員登録時の離脱の懸念が解消できた。

このほか、予約商品の予約・購入ができることや、「Amazonギフトカード」のプレゼントキャンペーンへの参加を呼びかけることで集客・販促につなげられることも、大きなメリットだという。

決済方法の拡充を検討していた「セガUFOキャッチャーオンライン」も、こうしたさまざまなメリットを期待し、2023年夏に「Amazon Pay」を導入。20~30代がメインのユーザー層になっている「セガUFOキャッチャーオンライン」では、決済会社が主催するキャンペーンにユーザーが積極的に参加する傾向にあるため、「Amazon Pay」と実施したキャンペーン企画への反響は大きいという。

デジタル商材とフィジカル商材の双方で効果を発揮する「Amazon Pay」

セガフェイブにとって、デジタル商材でも「Amazon Pay」を導入していることはポジティブな効果が現れている。「セガ ラッキーくじオンライン」「セガUFOキャッチャーオンライン」のサービスそのものはデジタルだが、最終的に「ユーザーが獲得したモノ」を届ける必要がある。そのため、確かな住所情報は必要不可欠。「Amazon Pay」は「Amazonアカウント」に登録されている情報を使用するため、「Amazon Pay」経由の決済は正確な住所情報が設定されていることが期待できる。そのため、ユーザーは手間なく安心してサービスを利用することができるのだ。

ユーザーにとっても、オンラインのくじやクレーンゲームを遊ぶときに「Amazon Pay」のボタンを見ると「Amazonの決済サービスが利用できるサービスであれば安心だ」と感じていると考えられます。また、ゲームを始める際のハードルを下げる1つの要因にもなっているでしょう。日頃からAmazonのサービスをよく使っている人ほど、セガフェイブのオンラインサービスも安心して使っていると考えられます。(笹谷氏)

セガフェイブ MD国内ビジネス部 オンラインビジネス課 課長 笹谷崇氏
セガフェイブ MD国内ビジネス部 オンラインビジネス課 課長 笹谷崇氏

離脱率20%の改善、売り上げのベースアップに貢献

現在、「セガ ラッキーくじオンライン」では「Amazon Pay」の決済比率が4~5割を占め、「S-FIRE」も「Amazon Pay」が同じく半数ほどを占めている。「セガUFOキャッチャーオンライン」はアプリとブラウザでサービスを展開しており、ブラウザ版では「Amazon Pay」による決済が15~20%ほどを占める(アプリ利用者にはアプリ専用の決済方法を提供)。「Amazon Pay」の利用率の高さは、いずれも想定を上回るという。

また、「セガ ラッキーくじオンライン」は「Amazon Pay」導入後、ショッピングカート以降のユーザー行動における離脱率が少なくとも10~20%ほど改善。売り上げについては、取り扱うタイトルによって異なる上、サイト全体をリニューアルしたことから、導入前後の単純な比較はできないが、それでも購入人数が増えた感触はあるという。「20%ほどは売り上げがベースアップしたと実感しています」(土屋氏)

笹谷氏(左)も土屋氏も「Amazon Pay」導入による売り上げのベースアップを実感している
笹谷氏(左)も土屋氏も「Amazon Pay」導入による売り上げのベースアップを実感している

「セガUFOキャッチャーオンライン」も、「Amazon Pay」の導入後から新規登録率や会員の割合が順調に増加しており、CVRにも良い効果が表れている

「Amazon Pay」とのキャンペーンも盛況。集客効果を実感

「Amazon Pay」とのキャンペーン企画では、以下の2つを実施した。

  • Amazonが実施している購入者還元施策の「Amazonギフトカード大還元祭」
  • セガフェイブオリジナルの「Amazon Pay」キャンペーン企画として「龍が如く Amazonギフトカードプレゼントキャンペーン」

後者は人気ゲームシリーズ「龍が如(ごと)く」の新作発売のタイミングに合わせて、2023年12月21日から2か月間開催。ゲームのプロモーション効果も狙って、「セガラッキーくじオンライン」と「セガUFOキャッチャーオンライン」で展開した。「龍が如く」のキャラクターグッズなどの景品が獲得でき、さらに抽選で「龍が如く」のオリジナルデザインの「Amazonギフトカード」が当たる企画とした。

「Amazonギフトカード大還元祭」(左)、セガフェイブオリジナルの「Amazon Pay」キャンペーン企画(「龍が如く」の「Amazonギフトカード」プレゼント)
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「Amazonギフトカード大還元祭」(左)、セガフェイブオリジナルの「Amazon Pay」キャンペーン企画(「龍が如く」の「Amazonギフトカード」プレゼント)

「龍が如く」のキャンペーンは、景品やギフトカードを獲得したファンによるSNSのリアクションが相当数あり、話題が拡散した。狙っていたゲームのプロモーション効果や、サイトへの集客効果も大きかった

「Amazon Pay」の加盟店事業者のなかでも、オンラインクレーンゲームでオリジナルデザインの「Amazonギフトカード」が当たる企画は初めての取り組み。ニュースサイトやXでも反響があったという。「オリジナルデザインの『Amazonギフトカード』が実際に手元に届いた方から、Xなどで『かわいい』といった投稿が見られ、好評でした」(土屋氏)

キャンペーンの売り上げは想定を2~3割ほど上回った。「セガUFOキャッチャーオンライン」ではオンラインクレーンゲームを初めて利用したと思われる人も多く訪れ、新規ユーザー数は通常時に比べて50%ほど増加した。セガフェイブは、今後も「Amazon Pay」とのキャンペーンを積極的に展開していく考えだ。

「Amazon Pay」の導入理由に顧客の裾野を広げることをあげましたが、さまざまなお客さまを呼び込む上で、「Amazon Pay」と一緒に取り組むキャンペーンが効果を発揮することがわかりました。また、「Amazon Pay」で決済することで、お客さまにとって決済の手間が少なく、セガフェイブのサービス自体を楽しんでいただく時間を長くできます。(笹谷氏)

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サービス間の相互送客を強化

セガフェイブは今後、サービス間の相互送客を強化していきたい考え。「セガ ラッキーくじオンライン」「S-FIRE」「セガUFOキャッチャーオンライン」を見ても、取り扱っている商材やユーザー層がそれぞれ異なっているほか、セガフェイブではゲームセンター向けにUFOキャッチャーやプリクラ機を販売するアーケードゲーム事業や、玩具の企画開発・販売を行うTOY事業も展開している。

こうした幅広い商材やチャネルを組み合わせて、新しいユーザー体験を提供していく計画だ。

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