花田 靖治[執筆] 7/1 8:00

メディアECを伸ばすには、具体的なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定し、それがどのくらい達成できているかを確認、改善することが大切です。今回は、メディアECにおける主要なKPIや、KPIを設定することの重要性について解説しつつ、メディアECを上手に活用しているECサイト事例を紹介します。

メディアEC運用でもKPIの設定は重要

KPI設定はさまざまな業務で重要だと言われていますが、ECサイトでメディア運営をする際にも同様です。理由は、メディアはファン作りやブランディングなどを目的に運営をしていることが多く、長期的に運営するものだからです。

短期間では目に見える成果が表れにくく、目標達成のための行動が曖昧になりがちになります。しかし、KPIを設定することでプロセスが明確になるので、何をやるべきか可視化でき、目標達成に向けた行動が明確化できます。

また、メディアの成果は、発信する記事の量や質、SEOなどのさまざまな要素で評価され、徐々に成果が積み重なっていくものなので、どうしても時間がかかってしまいます。

そのため、立ち上げ期などは担当者のモチベーションが下がってしまう懸念があることは押さえておきましょう。そこで、途中経過がわかるような目標を共有して運営に関わる担当者のモチベーションを維持するためにもKPIを設定することは重要と言えます。

メディアECのKPIにはどんな種類がある?

メディアECにとっても重要なKPIの種類を説明します。メディアECで設定するKPIには、目的や戦略に応じてさまざまなものがあります。メディアECで設定されることが多いKPIをお伝えします。

記事の公開本数

オウンドメディアを立ち上げたばかりの時期、自社発信のコンテンツに注力したい時期などに重視される指標として設定されやすいのが「記事の公開本数」です。

たとえば「毎週1本記事を公開する」「月に10本記事を公開する」など、具体的な行動目標としてKPIを設定します。

オウンドメディアは成果が出るまでに時間がかかり、長期的な運用が求められます。そのため、記事数が順調に増えていることは、記事制作の体制がしっかり構築されている証拠とも言えますので、メディアの下地作りとして目標を捉えると良いでしょう。

まずは小さな目標(KPI)を設定し、これを達成していくことでモチベーションを維持することが重要です。

記事を増やせば増やすほど、サイトへのアクセス数の増加が期待できるため、設定しやすいKPIでしょう。さらに、記事が蓄積されることで情報の網羅性が高まり、コンテンツの価値も向上します

セッション、PV、UU数など、メディアへの集客数

次にKPIとして設定されることが多いのが、「セッション」「PV」などメディアへの集客数です。

メディアの立ち上げから安定してコンテンツが作れるようになり、メディア運営の下地がしっかりしてきたフェーズになると、行動目標をこれらの指標に切り替えたり、新しいKPIとして追加したりするケースが多いです。

メディアへの集客数を把握するために、主に以下のようなKPIを設定します。

  • PV数
  • 訪問数
  • ユーザー数
  • オーガニック検索流入数

これらのKPIは「Googleアナリティクス4」などの分析ツールを元に計測していきます。

多くのメディアではPV数などを目標に設定してしまいがちですが、メディアの目的によっては、そもそも多く集客をする必要がない場合もあります。そのため、目的とすり合わせつつ、KPIとして置くのであればあくまで評価ポイントの1つとして追うことをおすすめします。

ECサイトへの遷移数

メディアECを立ち上げる主な目的としてブランディングやファン作りと前述しましたが、ある程度メディアサイトに集客ができるようになってくると、ECサイトにどれくらい貢献しているかをKPIに設定するケースもあります。

具体的には、メディアの記事からECサイトへどれくらい遷移するかの数(遷移数)を指標にするということです。遷移先としては、主にECサイトのTOPページ、商品ページ、特集ページなどがあげられるでしょう。

また、メディアがどれだけ貢献しているかを測る際、遷移数だけでなくSNSなどでのシェア数や言及数などをKPIに置くケースもあります

メディアECでKPIを設定する際に押さえておきたいポイント

ここからはメディアECでKPIを設定する際に、押さえておきたいポイントを2つ説明します。

① フェーズごとにKPIを決める

メディアECでは、「立ち上げ直後」や「運用を開始してから〇年目」など、フェーズごとにKPIを設定することが大切です。なぜフェーズごとに設定するのか? 成長段階によってメディアの目標が変わってくるためです。

メディアの立ち上げフェーズでは、まだ数字が伸びていないケースが多いので、たとえば「1か月で記事を10本投稿する」など、安定的な運用をめざした下地作りを意識した行動目標とするのが良いでしょう。

メディアの運用が安定してきたら、今度は「今年の12月に○○PV達成、そのために逆算して●月は○○PVを目めざす!」といったように、結果目標をKPIに設定していくことをおすすめします。

フェーズごとにKPIを見直し・設定し、達成するための計画を立てることで、メディアEC運営が継続しやすくなります

② 現実的な目標を設定する

KPIは運営体制や自社の状況と照らし合わせながら、現実的な目標を具体的な数値で設定するのがポイントです。

公開する記事本数や目標とするPVを現実的ではない数字にしてしまうと、メディア運営に関わるメンバーへの負担が大きくなり疲弊してしまいます。そうすると、長期的にメディア運営が継続できなくなってしまう可能性もあります。

せっかく立ち上げたメディアなのに、KPIを設定したことで負担になり継続できなくなってしまっては本末転倒です。

メディアECを運営する場合基本的に兼任するケースが多いので、まずはできるだけ負担にはならないような目標を設定することが大切です。

メディアECの活用事例「かごしまぐるり」

ご紹介するのは、鹿児島の逸品に特化したECサイト「かごしまぐるり」さんです。

カラーミーショップ メディアEC メディアECを活用している「かごしまぐるり」
メディアECを活用している「かごしまぐるり」さん
(画像は「かごしまぐるり」さんのサイトからキャプチャ)

“鹿児島の魅力発信”をコンセプトに、個性的で魅力ある生産者の取り組みやこだわりを商品と共に紹介しており、メディアECをうまく取り入れ、コンテンツマーケティングを実践しています。

メディアECでコンテンツマーケティングを実施したいショップさんにとって参考になるはずです。「かごしまぐるり」さんで参考にしてほしいポイントを3つ解説します。

① 生産者の魅力・ストーリーを大切にしたコンテンツ作りへのこだわり

「かごしまぐるり」さんでは、取扱商品の生産者を徹底的に事前リサーチすることはもちろん、直接スタッフさんが現場に訪問し、コミュニケーションを取り、質問することで生産者の魅力やストーリー・想いを掘り起こすようにしています。

そうして得た一次情報や直接撮影してきた写真などを盛り込み、商品ページを作成しています。

カラーミーショップ メディアEC かごしまぐるり 生産者の情報や商品写真を盛り込んだ商品ページ
生産者の情報や商品写真を盛り込んだ商品ページ(画像は「かごしまぐるり」さんのサイトからキャプチャ)

また、商品ページだけでなく、サイト内に「生産者一覧」というカテゴリページが設けられており、そこではサイトで取り扱う商品の生産者がどのような人かを紹介するページをそれぞれ掲載しています。

カラーミーショップ メディアEC ECサイトで扱っている商品の生産者を紹介
ECサイトで扱っている商品の生産者を紹介(画像は「かごしまぐるり」さんのサイトからキャプチャ)

顔が見えないECサイトで信頼性を向上させる工夫として、スタッフの顔出しや紹介コンテンツは増えてきていますが、商品を生産している人の紹介まで丁寧に行っている取り組みは、生産者の魅力を伝えるだけでなく、サイトを利用するユーザーにとっても信頼性や親近感がわく有益なコンテンツになります。

② オウンドメディア「かごしまぐるりよみもの」での鹿児島の魅力を伝える情報発信

「単なる商品販売サイトではなく、個性的で魅力ある生産者の取り組みをもっと知ってもらいたい」という思いから、“鹿児島の魅力発信”というコンセプトのもと、情報発信を行っています。

カラーミーショップ メディアEC オウンドメディア「かごしまぐるりよみもの」
オウンドメディア「かごしまぐるりよみもの」(画像は「かごしまぐるり」さんのサイトからキャプチャ)

県内各地の生産現場を訪れ、個性的で魅力ある生産者の取り組みを発掘し、商品販売を通じてその魅力や地域性を発信。鹿児島県をブランディングし、鹿児島全体の認知度向上と地域活性化をめざしています

元々SNSで情報発信を行っていましたが、長文のコンテンツには向かない制約があり、鹿児島の魅力を十分伝えられないことから、「WordPress」を使ったオウンドメディア「かごしまぐるりよみもの」を立ち上げました。

「かごしまぐるりよみもの」では、以下のような工夫を行っています。

  • 商品を直接PRする記事は作らない。商品を発売するタイミングで関連した情報コンテンツ発信し、理解を深めてもらえるようにしている
  • 記事の最後に執筆者の視点や想いを盛り込み、読者の気持ちを高められるよう心がけている
  • スタッフの実体験コンテンツだけでなく、生産者やアンバサダーに寄稿コラムを書いてもらうなど、外部の人も巻き込んで独自のコンテンツを発信
  • 「WordPress」のUIやページ構成を改修し、ECサイトとの連携を意識した回遊性の高いデザイン
  • SEOも意識して、スモールキーワードを狙った記事作成を心がけている
  • 記事アップ時にはSNSでシェアするなど、別チャネルとも連動したコンテンツデリバリーを意識

このように、オウンドメディアを通じて鹿児島の魅力を幅広く独自コンテンツとして発信しながら、生産者や地域とつながり、SEO施策やSNSとの連携も意識してメディアを運営しています。

鹿児島県全体のブランディングと地域活性化をめざし、単なるECを超えた情報発信・コミュニケーションの場としてオウンドメディアを機能させている点や、独自コンテンツを作る際の熱量・協力者を増やしていく施策などは非常に参考になります。

③ フェーズごとに設定し運用しているKPI

今回のテーマである「メディアECのKPI」についても、「かごしまぐるり」さんは設定と活用に工夫を凝らしています。

メディアを立ち上げた当初は、社内でメディアコンテンツ運営への理解を深め、機運を高めることを最優先し、月間PV数ではなく月間の記事アップ数をKPIに設定したそうです。

立ち上げから半年が経過し、記事作成への習熟が進んだタイミングでPV数もKPIに追加。また「かごしまぐるり」さんは毎週定期的にミーティングを行い、KPIの進捗状況を社内でこまめに共有。

また、進捗の確認とともに記事ごとのPV数のデータを分析し、どの記事が読者に好まれているのかを把握。データ分析の結果を踏まえ、人気の高い記事の特徴を次の記事作成に生かすなど、PDCAサイクルを実践しています。

このように、「かごしまぐるり」さんはメディアECの立ち上げ当初からKPIを設定し、進捗管理を行うと共にこまめな社内共有なども行い、データやノウハウを蓄積していく体制を整備しています。そうした工夫を重ねていることから、ECサイトやメディアにおいて独自コンテンツを継続して発信できていることがうかがえます。

まとめ

今回は、メディアECのKPIについて重要性や設定のポイント、事例を紹介しました。

繰り返しになりますが、KPIを設定することは非常に重要です。目標値を定め、進捗を測ることで施策の効果を確認でき、改善点を見つける一助となります。しかし、KPIはあくまで指標にすぎないので、KPIの数値自体が目的化してしまっては本末転倒になってしまいます。

そしてフェーズごとに適切なKPIを設定し直すことも肝心です。立ち上げ期なら記事数がKPIになるかもしれませんが、運用が安定したフェーズであれば、たとえばユーザー数やPV数、さらにメディアの貢献度を測るために読了率、コンバージョン率の方が重要な指標となる場合もあるでしょう。

メディアを伸ばし、継続させていくには臨機応変にKPIを設定し直しながら、本質を見据えたメディアECの運営を心がける必要があります。

今回の記事が、KPIの設定について参考になれば幸いです。

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