EC担当者はぜったい知っておくべき商品画像・説明と著作権。違反事例+リスクを知って未然にトラブルを防ごう!

ECサイトでは商品画像や説明文、イラスト、動画など多様なコンテンツを扱うため、著作権が発生している素材が 少なくありません。そのため、コンテンツを正当に利用できるかどうか権利関係の所在や権利者からの許諾を得ておかなければ、著作権侵害に該当するリスクが高まります。たとえば、他社の画像を流用、説明文を複製したといった場合、使用の差止や損害賠償請求を受ける可能性があります。実際の事例を参考にしながら、EC運営者がどのように著作権を意識し、トラブルを回避できるかを考えてみましょう。
【ケース1】商品画像の無断使用(東京地方裁判所 令和4年11月4日判決)
- 無断で商品画像を使用(サーバーへアップし、不特定多数の利用者が閲覧できるようにすること)は、「送信可能化権」を侵害する可能性
- 利用期間が短く、閲覧数が少なくても損害賠償が認められることも
健康器具の企画・製造・販売を手がけるA社(原告会社)が、建設業・リフォーム業のB社(被告会社)を相手取り、商品画像の無断使用をめぐり著作権侵害の成否、その損害賠償が争われた判決事例です。
原告のA社は2014年にSoSoft社と契約し、加圧ベルトなどの健康器具の販売を委託。しかし被告のB社は、原告A会社の許可なく、オンラインストアに原告A 会社が作成した商品画像を掲載し、約2週間にわたって無断使用状態が続いたとされています。
東京地裁は、被告B会社がサーバーへ無断で画像をアップロードし、不特定多数の利用者が閲覧できるようにしていた点を著作権の1つである「送信可能化権」(著作物をインターネットなどを通じて不特定多数がアクセス可能な状態にする権利)を侵害したと認定。そして、利用期間の短さや閲覧数の少なさなどを考慮しつつも、最終的に5万円の損害賠償を認めています。短期間であっても商品画像を無断使用する行為が著作権侵害に該当することを明示した裁判例と言えます。

【ケース2】クックパッドの「レシピ無断転載」問題
料理レシピサイト「クックパッド」は、ユーザーが材料や手順だけではなく、独自の文章や写真を投稿しています。レシピそのものは著作権が発生しないアイデアとして扱われやすいのですが、独自表現や写真には著作権が発生する可能性が高いです。
「クックパッド」に掲載されたレシピについては、一部のレシピまとめサイトや個人ブログがこのレシピをそのままコピーまたはわずかに改変して掲載し、それにより広告収益を得ていたケースが報告されています。
こうした無断転載行為は、「クックパッド」の運営会社が警告や削除を依頼し、相手方のサイトが記事を削除して解決する場合が多いようです。しかし、転載量が多い場合や悪質性が高い場合は、損害賠償請求に発展する可能性も否定できません。
EC運営者が押さえておきたい「著作権」の基礎と注意点
著作権法では、事実やアイデアそのものに対しては権利を認めにくいとされており、レシピの材料や分量といったデータは保護対象外になりやすいです。しかし、創作的な文章や写真、イラストなどは独自の表現がある限り著作物として扱われるため、無断使用は侵害リスクを伴います。
さらに、ECサイトに画像や文章をアップロードすると、法的には著作権のうち「送信可能化権」の侵害にあたる場合があります。そのため、勝手に他社の写真や説明文を利用すれば、先程の東京地方裁判所の判例のように権利侵害を問われる恐れがあります。
- 言語の著作物
- 小説、脚本、論文、講演そのほかの言語の著作物
- 音楽の著作物
- 楽曲および楽曲を伴う歌詞
- 舞踊または無言劇の著作物
- 日本舞踊、バレエ、ダンスなどの舞踊やパントマイムの振り付け
- 絵画、版画、彫刻そのほかの美術の著作物
- 絵画、版画、彫刻、漫画、書、舞台装置など(美術工芸品も含む)
- 建築の著作物
- 芸術的な建造物(設計図は図形の著作物)
- 地図または学術的な図面、図表、模型そのほかの図形の著作物
- 地図と学術的な図面、図表、模型など
- 写真の著作物
- 写真、グラビアなど
- 映画の著作物
- 劇場用映画、テレビドラマ、ネット配信動画、アニメ、ビデオソフト、ゲームソフト、コマーシャルフィルムなど
- プログラムの著作物
- コンピュータ・プログラム
アップロードが発覚すると、まず権利者からの警告や削除依頼が行われます。これに対し、すぐにコンテンツを削除や修正すれば裁判に至らないことも多いですが、悪質性が高いと示談や損害賠償請求へと発展することも考えられます。
トラブルを未然に防ぐには
このようなトラブルを避けるためには、できるだけオリジナルコンテンツを用意し、他者の著作物を使わないようにすることが重要です。オリジナルコンテンツは検索エンジンからの評価も得やすく、長期運用でのメリットが見込めます。
メーカーや仕入れ先から素材が提供されている場合は、使用許諾範囲やライセンス条件を必ず確認しましょう。また、引用するときは著作権法で定める引用要件を満たすよう、本文に対して引用部分を従たるものとすること、および引用部分の出典を明記することを徹底する必要があります。
また、自社において定期的なモニタリングを行い、自社が他者の権利を侵害していないか、逆に自社コンテンツが盗用(無断使用)されていないかをチェックすることも大切です。
盗用(無断使用)をされた場合は、まず証拠保全のうえ、相手側に侵害の警告や削除の依頼をして、これに応じない場合は損害賠償請求や差止請求に踏み切る選択肢があります。一方、もし自分が誤って無断使用してしまったと気づいた場合は、すぐに削除や修正をし、必要に応じて権利者との和解や許諾交渉を行うのが賢明です。
まとめ:安心・安全なEC運営のために
ECサイトは魅力的な商品・コンテンツを用意することで、多くのユーザーを集客できます。しかし、商品画像やレシピなどに含まれる他人の独自の表現を無断で使用してしまうと、著作権侵害による深刻なトラブルを招きかねません。今回ご紹介した判例(商品画像の無断使用)や「クックパッド」の問題(レシピの無断転載)は、まさにそうしたリスクを示しています。
オリジナルの素材や正規の許諾を得たコンテンツを使い、問題が起きた場合には速やかに対処する。こうした基本的な姿勢を保つことが自社のブランドやコンテンツを守り、長期的に安定したEC運営を続けることができます。著作権に関する知識をアップデートしながら、安心・安全なサイト運営を心がけていきましょう。