なぜ、ライオンの通販は成長しているのか? 再び売上100億円突破のワケ
ライオンが特販事業本部傘下にあった通販事業を事業本部として独立させた。2015年を初年度とする中計で新規事業として成長を求められる中、今期(16年12月)は、売上高が前年比20%前後の増収(本紙推計で116億円前後、ギフト通販を含む)で着地する見通し。数年ぶりに100億円の大台を突破する。成長の背景を山崎久生ウェルネス・ダイレクト事業本部事業企画部長に聞いた。
2年前からスマホ化率は倍増
――事業本部昇格の経緯は。
「通販事業は来年10年目を迎えるが事業も確立し、さらに成長を加速させるため運営体制を強化した」
――今期の見通しは。
「上期は前年比20%ほどで伸長した。通期も二ケタ成長は確保できる」
――伸長の背景は。
「機能性表示食品制度(新制度)が始まって主力の機能性表示食品『ナイスリムエッセンス ラクトフェリン』は、これまで表現しにくかった部分が届出表示に沿って表現できるようになった。顧客コミュニケーションが改善したことで獲得効率が上がっている」
――商品別の売上構成は。
「『ラクトフェリン』が過半を占めている」
――トクホ飲料「トマト酢生活」は年間10億円前後(本紙推計)を売り上げていた。消費者庁による勧告(行政指導)の影響は。
「かなり苦戦している。ただ、『ラクトフェリン』を中心にカバーした」
――勧告を受けた後の広告チェック体制の見直しは。
「指摘を受けたのは個々のエビデンスというより広告全体の印象と認識している。個々のエビデンスであれば根拠を示せるが『全体印象』は判断が難しい。(広告制作に)直接関わりのない人間が俯瞰して見たり、役職のあるものが責任を持って確認するなど何層にも渡りチェックする体制に変えた。広告審査の際のチェック項目にも『全体印象』を加えた」
――「グッスミン 酵母のちから」も睡眠ケアで届出が受理された。
「まだ本格的な展開に至っていないが少しずつ顧客基盤も広がり、獲得効率も改善している」
――今後の展開は。
「機能はあくまで“睡眠の質を向上させる”もの。ただ、『ラクトフェリン』と比べ使用実感が分かりにくい。睡眠の状態を計測できる『睡眠計測アプリ』や、就寝時に気分を鎮静させる『グッスアロマ』シリーズ(入浴剤、枕やシーツ用のアロマ商品)などを複合的に展開して販売戦略を立てている。昨年3月には寝具や空調など異業種のメーカーと組み、睡眠について消費者とともに考える『世界睡眠会議』といったプロジェクトも立ち上げた。(直接、通販顧客につながるものではないが)単純にレスポンスを狙うだけでなく、広がりを持ちつつさまざまな角度からアプローチする。お客様も健康に対する意識が高い方であるため、(ただ売るだけでなく)悩みにきちんと応えていく姿勢を重視したい」
――これまでウェブマーケティングに力を入れてきた。今後の媒体戦略は。
「ウェブマーケで先駆者を目指すことに変わりはない。一般的な健康食品通販より顧客層は少し若く40~50代が中心。2年前からスマホ化率も倍増している。このためより簡便にコミュニケーションが行える仕組みやつながり方を変える取り組みは続ける。ただ、ウェブに競争優位性があるのは、その反面ほかのチャネルで競合他社に劣後しているとも言える。今後、『ラクトフェリン』ではテレビの活用も増やす。(メディアミックスなど)相乗効果を生み出す中でほかの媒体の活用を増やしていく」
――新制度の開始はどう受け止めている。
「エビデンスをきちんと表現できるようになったことは歓迎している」
――今後の制度活用の方針は。
「商品によって新制度に馴染むものとそうでないものがあると思う。『ラクトフェリン』もダイエット関連以外にさまざまなエビデンスがあり、制度活用が制約になる面もある。ただ、きちんと機能性表示をしてしっかり宣伝するものと、クロスセル商品を峻別しつつ活用していく」
――主力以外に育成を図っている商品は。
「『ラクトフェリン』だけの会社と見られることは問題。事業全体を見て間違いなく言えるのは、『ラクトフェリン』に依存していること。次の成長を目指すには『第2の柱』を育成していかなければならず、品ぞろえは充実させていきたい」
――新制度の開始で競争環境はどう変わっていくと見ている。
「制度に対してはまだ(業界内外の関係者の)さまざまな意見がある。制度設計の変更や見直しとは別に、しばらくは混乱というか大きな変化があると思っている。制度自体も整理されきっておらず、変わっていく黎明期にある。ただ、今後は機能性表示や、確かなエビデンスのある商品でなければ戦っていけないと感じている」
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