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メンズアパレルのネット販売を手がける株式会社ピー・ビー・アイ(以下、PBI)。通販で高い人気を誇るメンズファッショブランドの「SILVER BULLET(シルバーバレット)」と言えば、わかる人も多いだろう。

PBIのECサイトは20店舗にもおよぶが、各店舗の受注とカスタマーサービスを担うのは、たったの4人という少人数体制。少数精鋭のスタッフが、お客さまからの質問に答える「コーディネート相談室」を展開するなど、他にはないサービスを行っている。少人数でこれだけのことを果たしている裏側はどうなっているのだろう……? 舞台裏を知るべく、PBIのバックヤードを訪ねた。

PBI社内
「SILVER BULLET」は2007年と2014に楽天ショップ・オブ・ザ・イヤーを獲得している。オフィスの中には最新のアイテムが所狭しと並ぶ

バックヤードの業務は注文の処理、商品交換や返品対応、商品の問い合わせに関する電話対応など多岐に渡る。 例えば、ある日のスケジュールはこんな感じだ。

9:30出社。注文系のメールの返信
10:00始業。受注処理開始
11:00顧客対応
12:00受注処理終了。返品された商品を開封。交換対応なども合わせて行う。新製品やコーディネートなどをSNSに投稿。最近はInstagramに力を入れている
13:00昼休憩。ランチにはあまり出向かず、お弁当を社内で食べることが多い
14:002度目の受注処理。15時までの注文は即日発送を行っている
15:00顧客対応など。メールと電話の対応やデータの集計作業など。キャンセル率などを集計し、会社の全体会議で共有する
16:00発送のための倉庫とのやりとり。倉庫は平和島にあり、毎日電話でやりとりをしている
17:00発送終了後は自由時間。SNSの画像を作ったり、それぞれ自分のやりたい仕事や持っている仕事を行う
19:00終業

カスタマー部リーダーの無津呂晴菜さんが入社したのは3年前。無津呂さんはPBIのバックヤードに大きな改革をもたらした立役者だ。今は「仕事が楽しくてしょうがない」と語る無津呂さんだが、入社した頃はまったく違う状況だった。

無津呂さん
アパレルの販売からネット通販未経験で入社した無津呂さん。「もともと人が好きなんです。人と話すのも好きだし、協力して何かを達成するのが楽しいタイプ」

業務改革の理由は「スタッフにつらい思いをして欲しくないから」

入社した最初の1年間は「ただつらかった」。PBIの繁忙期は楽天スーパーセールが行われる時期や福袋のシーズンだが、それ以外の時期も業務が山積みになっていることが常態化していた。膨大な仕事量に翻弄され、仕事が終わらない、帰れない。助けてくれる人はいても個人プレーが多く、チームワークは望めなかった。

カスタマー部のリーダーになった時、無津呂さんは自分の部下になったスタッフにあんなにつらい気持ちになってほしくないという思いで、「カスタマー部を改革しよう」と決意した。

無津呂さん

無津呂さんがまず行ったのが業務の洗い出し。「この作業は面倒だな」「時間がかかるな」と思うところを洗い出し、導入しているバックヤードサポートサービス「CROSS MALL」で使えるものがないか模索した。

改めてシステム運用を見直してみると、業務を効率化できるツールがいくつもあった。例えば、お問い合わせメールの返信。 それまでは担当者がそれぞれのメーラーから返信していたため、文面を共有することができていなかった。

お客さまからのお問い合わせメールは2種類ある。1つは注文に関するもので、住所変更やキャンセルなど、ノウハウがなくても対応可能なものだ。無津呂さんは、注文系のメールはすぐに返せるようにテンプレ化してCROSS MALLに登録し、通販部全体で共有することで迅速な対応が可能になった。

注文系はスピードが命。お客さまは「ちゃんと変更できるのか」「ちゃんとキャンセルできるのか」と不安になっていらっしゃるので、対応が遅いとメールに加えて電話までいただくことになってしまいます。余計な手間をかけさせないよう、お問い合わせには朝一番に対応するようにしています。 (無津呂さん)

もう1種類の問い合わせは、商品やコーディネートに関する、マニュアルでは答えられない質問だ。これには商品知識や顧客対応スキルが試される。

お客さまからのお問い合わせはさまざまです。特に「フーガ」や「シヴァーライズ」などの“お兄系”ファッションでは、サイズ感や素材感を気にされる方が多いですね。素材感がわからないときは、在庫がある倉庫に電話をして、スタッフに「どんな感触?」と聞いてお答えすることもあります。 (無津呂さん)

ネットでは伝わらないサイズ感などを伝えるために、スタッフが試着し、写真を送って確かめてもらうこともあるという。

社内風景

「ネット通販を使ったことがない」または「ネット通販を信頼できるのか不安」というお客さまも多い。不安を解消するために親身な対応を心がけている。

お客さまの中には10代から20代で、ネット通販を使ったことがない方も多くいらっしゃるので、その時にはお電話で説明しています。皆さん、雑誌やInstagramで憧れのモデルが着ている服を見て「この服が欲しい」と言ってくださるんです。「こうなりたい!」という気持ちがすごく伝わってくるので、その手助けをしてあげたいと思っています。 (無津呂さん)

お客さまの「こうなりたい」を叶えたい

PBIの徹底した顧客思いの対応が現れているのが、Webサイトで展開されている「コーディネート相談室」。「今年は何が流行るの?」「うまく着こなせない」「もっとオシャレになりたい」─お客さまのそんな思いに応えるために立ち上げた企画だ。

「コーディネート相談室」TOPページ
ファッションに関する相談にメールで回答する「コーディネート相談室

コーディネート相談室によせられた質問は、「SILVER BULLET」チームとも相談し、一緒に考えて回答している。

「コーディネート相談室」の回答メール
「コーディネート相談室」の回答メールの一例。機械的な返信ではなく、絵文字を使ったり写真を添付したり、親しみやすくなるよう工夫している 

電話でも「このアイテムをどんな風に合わせればいいのか?」といったコーディネートに関する質問を受けることがある。お客さまによっては対応が1時間半におよぶこともあるという。

SNSの投稿も通販部が担当

PBIのブランドは20あり、Instagramのアカウントだけでも7つある。SNSの投稿を通販部が担うことも多く、新作商品からコーディネートまで自由に投稿している。

普通は広報部などが担当することなのかもしれませんね。ですが、私たちにしか書けない文章もありますし、お客さまが何を知りたいかっていうことも、私たちが一番わかっていると思います。 (無津呂さん)

他にも、お客さまからコメントやメッセージをいただいた時に、すぐに対応できるのは通販部ならではの利点だという。また、通販部にとっても、新作情報やイベント情報を把握でき、商品についても詳しくなれるというメリットがある。

SNS更新作業

一番難しかったのは社内のコミュニケーション

業務のツールやシステムを改善するだけでは全体的な改善にはつながらない。無津呂さんが業務フローの改善とあわせて行ったのが、カスタマー部メンバー同士のコミュニケーションを増やすこと

スタッフ間のコミュニケーションができていないと、引き継ぎうまく行われず、お客さまへの連絡が遅れたり、重複したり、結果、それがクレームにつながったりする。無津呂さんは「スタッフ間の意志の疎通が一番難しかった」と言う。

メール対応に関しては、どのスタッフがどのメールに対応しているのか進捗状況がわかる機能を導入し、全員がリアルタイムで状況を把握し、対応できる体制を作った。

システム運用の見直しだけでなく、積極的に業務中の会話を増やしたりミーティングを行ったりするなど、チーム内でコミュニケーションとる時間を増やした。

ミーティングを始めたばかりの時は、うまく喋ることができず、自分の感情を伝えることができなかった。しかし、回数を重ねるうちに、だんだんお互いの気持ちがわかるようになってきた

コミュニケーションを増やすと、部の雰囲気がすごく良くなるんです。やっぱり人とつながってないと何も生まれないし、そうやって生まれたものから売上も伸びていくんだと思います。1人では何もできないので、協力していかないと。そういうところをすごく大事にしています。(無津呂さん)

現在は毎週金曜にカスタマー部の定例会議を行っている。チームの課題や、それぞれの仕事について建設的な話し合いを行う場だ。月ごとの目標をメンバー同士で共有し、達成できたかどうかを話し合う。会議中の発言は活発そのもの。スタッフが互いに目を配り、誰かがつまずいていたら助け船を出せるような協力体制が出来上がった。

忙しさを楽しさに変えた「目標設定」

しかし、ここに至るまでにはかなりの苦労があった。業務改善を行わなければ、スタッフが楽しく仕事と向き合うことができない。しかし「みんなで協力して仕事をしよう」とただ言っていてもスタッフの心は1つにならない。そこで無津呂さんが行ったのは「目標を設定する」ことだった。

初めて目標を設定したのは忙しくなる楽天スーパーセールの時期。具体的には「受注のデータを何時までに送る」とか「会話を増やす」といった目標だ。最初はスタッフ間に“やらされてる感”が漂っていた。しかし、最終的にはスタッフ全員がすべての目標を達成できていた。そこからチームの意識が変わった。

セール期間を振り返ったときに、みんなが「楽しかった」って言ってくれたんです。それが私はすごく嬉しくて。多分、その時に初めて、目標を設定して達成することにみんなが楽しさを感じてくれたんだと思います。

最初はバラバラだったみんなの中に「一緒に仕事をしている」という意識が生まれたのもうれしかったですね。(無津呂さん)

力を合わせて目標を達成すること。その達成感によって、強い連帯感が生まれた。

「仕事の楽しさを伝える」という役割

こうして築いてきた協力体制の強みを、社内にも広めていくのが無津呂さんのこれからの目標だ。 「口で言っても伝わらないので、わたしたちが実現して見せるしかない」 と無津呂さん。「以前は目の前のことで精一杯だったけど、今は1年後に自分が、部署が、会社が1年後どうなっていたいかを考えられるくらいの余裕ができた」という。

若い4人のチームが支える、PBIが展開するアパレルブランドのバックヤード。無機質に思われることもあるバックヤードの業務だが、無津呂さんは「こんなに楽しいことをみんなが知らないのはもったいない」と目を輝かせる。

今、ものすごく仕事が楽しいんです。本当にこの仕事に出会えて良かったなと思っているんです。自分の部下や後輩にも同じ気持ちでいて欲しいし、同じ感覚を味わってほしい。

仕事をしている時間ってすごく長いので、楽しんいでないともったいないですよね。自分も楽しいから、みんなにも楽しんで欲しいと思ってるんです。私のこの会社での役割はそれじゃないかな。 (無津呂さん)

PBI社内風景
◇◇◇

新しいコミュニケーションの方法を得て、強くなったPBIのバックヤード。これからますますその強みを増すことで、いったいどうなっていくのか? これからのPBIが楽しみだ。

この記事はB.Y(CROSSBACKYARD.COM)の協力のもと、「STORY of BACKYARD」に掲載された記事をネットショップ担当者フォーラム用に再編集したものです。オリジナル記事では動画をふんだんに使ったコンテンツをお楽しみいただけます。オリジナル記事へは下記のリンクをご利用ください。

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B.Y

B.Yは、普段表に出ないEコマースのバックヤード(受注、出荷、顧客対応)担当者を取材した“日本初”バックヤードに特化したWEBメディア。 バックヤードの人々が実践する「運用業務の創意工夫」「仕事への向き合い方」をSTORY、「バックヤード運用ノウハウ」をTOPIC、として発信している。本来Eコマースがもつ可能性を拡げ、バックヤードの人がいきいきと働けるキッカケを提供することでEC業界全体を支援している。

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