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機能性表示制度のキーワード「システマティック・レビュー」とは

健康食品の機能性表示についてできるだけ噛み砕いてご紹介 連載第3回目

稲留 万希子

2014年9月16日 0:42

健康食品の機能性食品制度に関しては、現在パブリックコメントの募集が行われており(締め切り日:9月26日)、徐々に全容が見えてきています。機能性食品表示を行うことで、どれほどの売り上げへの効果が出るかを早く知りたい事業者のなかには、できるだけ早く機能性表示を掲載した商品を発売したいと考えている人もいるのではないでしょうか。しかし、機能性が表現できるようになるからといって、準備もなしにいきなり『○○(成分名)は目の健康に役立ちます。』と表現できるものではありません。

機能性表示の基本の柱は3つ、

1:安全性の確保
2:機能性表示を行うに当たって必要な科学的根拠の設定
3:適正な表示による消費者への情報提供

です。

その中でも特に注目を浴びているのはやはり、“科学的な根拠”が何を指しているのか、そしてどうすれば根拠として十分なのか…です。

まず、根拠とできるものとは、

(1)最終製品を用いた臨床試験
(2)最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビュー

の2つです。

(1)の最終製品を用いた臨床試験というのは、原則、特定保健用食品の試験方法に準じるとされているため、かなりハードルが高いものになります。それに比べて(2)の方法であれば、そこまでの労力とお金は必要無いという大きなメリットがあると同時に、今回の機能性表示解禁の大きなテーマである「中小企業・小規模事業者にチャンスを」という所に結びついていきます。そのため、(2)の方法が高い注目を集めています。

(2)には気をつけなければならない2つの要素があります。「機能性関与成分」と「研究レビュー」です。

機能性関与成分の“機能性”(疾病名は除く、部位も含めた健康維持・増進に関する表現)を表現するにあたっては、査読付きの学術論文等原著論文を用いたシステマティック・レビューによる実証が必須です。ポジティブなデータだけで無く、ネガティブなデータも含めて総合的に判断する「トータリティ・オブ・エビデンス」の考え方に基づき、企業は自己責任のもとで総合的に評価をします。

※査読付き論文とは…専門誌に論文を投稿しその論文が精査される過程において、内容に誤りが認められず、且つ、新規性が確認できれば査読に合格と判断される。そして掲載が決定された論文を査読付き論文といい、研究業績として認知されることになる。

また、(2)で用いられるべき研究レビューは『システマティック・レビュー』であるとされています。システマティック・レビューは、一般的に下記の流れに沿って行っていきます。

  1.  研究のテーマ(検索の条件)を設定
    → 機能性表示をしようとする機能性関与成分の機能について設定をする。成分名のみや機能性のみでは不可。
  2.  研究をもれなく収集する
    → 関連する国内外の研究を網羅的に収集し精査する。自分に都合の良い文献のみを集めたりするのは不可。
  3.  総合的な観点から評価をする
    → 質の悪い論文等は除外する。
  4.  誰もが再現できるように、検索条件から結果に至るまでのプロセスを全て公表する
    → 検索条件、採択・不採択の文献情報、結果に至るプロセス、スポンサーや利益相反に関する情報、出版バイアスの検討結果など。
※出版バイアスとは…否定的な結果が出た研究は、肯定的な結果が出た研究に比べて公表されにくいという偏り(バイアス)のこと。

ただし、検討会の報告書において、

  • システマティック・レビューの結果、査読付きの臨床研究論文が1本も無い場合
  • 表示しようとする機能性について、査読付き論文がその内容を支持為ない場合

については、機能性表示を行うための科学的根拠が十分ではないとみなし、機能性表示を認めないこととしているので、システマティック・レビューを行えば良いということではなく、またその機能性を述べるにあたって関与成分としての量があるのであれば、商品としてもその量(含有量)を満たすものでなければならない事にも注意が必要です。

このように、機能性表示においてシステマティック・レビューとは、かなり重要なキーワードになりますのでぜひ覚えておきましょう。

尚、更なる具体的な内容は、パブリックコメントの募集が終了した後(締め切り日:9月26日)に、食品表示法の消費者委員会諮問を含む更なる検討が重ねられ、ガイドラインとして発表されます。ガイドラインの発表及び事業者向けの説明会は、本年度11月下旬~12月初旬頃になるだろうと予測されておりますので、それまでに準備できるところは固めておくのが賢明と言えるでしょう。

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