稲留 万希子 2014/8/7 18:55

前回の記事では「健康食品業界で今最も注目を集めている“健康食品の機能性表示”って何?」として、機能性表示の事の起こりと現状を解説いたしました。最終的に7月18日に行われた第8回検討会で一連の協議が終わり、7月30日にその検討会での決定事項及び懸案事項が報告書としてまとめられ公開という運びとなりました。今後の流れとしては、消費者委員会と更に検討を重ねパブリックコメントの募集を経て、年末あたりにガイドラインが発表され、来年4月1日の解禁に向けて動いて行くといわれています。

最も気になる「可能な機能性表示の範囲」ですが、現時点では残念ながらまだはっきりと明示されていません。このあたりは今後のガイドラインで示されてくるものと思いますが、現状決定していることは下記4点がポイントといえます。

①対象者が疾病に罹患する前の人などに広がる

生活習慣病等の疾病に罹患する前の人又は境界線上の人を対象とし、疾病に既に罹患している人(医薬品等により治療されるべき人)に対し、機能性を訴求するような製品開発、販売促進等は行わないこととすることが適当である。 (報告書から引用、以下同じ)

→ 現状の健康食品の対象者が「主に健康な人(※)」だったのに対し、「疾病にかかる前、或いはかかるかかからないかの際にいる人」と、機能性表示に見合う範囲に広がり、明記されたと言えます。

※健康食品とは、一般に健康によいとして販売・利用されている食品のことを指しており、決められた定義はありません。今回は、国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト内の下記ページを引用しています。

②妊産婦、授乳婦は対象にできない

未成年者、妊産婦(妊娠計画中の者を含む。)及び授乳婦に対し、機能性を訴求するような製品開発、販売促進等は行わないこととすることが適当である。

→機能性を表示する上で、未成年者や妊娠計画中の者を含む妊産婦、及び授乳婦をターゲットとしないことと明記されています。
(ただし、これらの者に対し、新制度の食品を販売したりすることを禁じるものでは無い旨が注記として記載されています)

③身体の特定部位に言及可能

前記ウ(①の内容)に示した対象者における健康維持・増進に関する表現とすることが適当である。
また、厚生労働省より、当該範囲内であれば、身体の特定の部位に言及した表現のみをもって、直ちに医薬品に該当するとは判断しないと示されたことを踏まえ、身体の特定の部位に言及した表現を行うことも可能とすることが適当である。

→身体の特定の部位に言及できると明記されています。ただし、現時点では“特定部位”としてどのレベルまで言えるのか(例えば、「脳」は言えるが、「視床下部」「満腹中枢」はNGとなるのかなど)は不明であり、今後発表されるガイドラインに詳細が記されてくるものと想定できます。

④疾病名を含む表示は不可

ただし、疾病の治療効果又は予防効果を暗示する表現や、「肉体改造」等の健康の維持・増進の範囲を超えた、意図的な健康の増強を標ぼうするものと認められる表現は、医薬品として薬事法(昭和35 年法律第145 号)の規制対象となることに留意すべきである。

→③の通り、特定保健用食品並みの表現ができるようになると解釈できる一方で、既存の特定保健用食品にあるような疾病リスク低減表示を始めとした疾病名を含む表示はできないという事が明記されています(例えば、関与成分がカルシウムである特定保健用食品における「日頃の運動と適切な量のカルシウムを含む健康的な食事は、若い女性が健全な骨の健康を維持し、歳をとってからの骨粗鬆症になるリスクを低減するかもしれません」といった表示はできないということなど)。また、今まで通り、疾病の治療又は予防を目的とする表示は不可といえます。

 

 

こうした表現ができる範囲が広がる一方で、新制度において機能性を謳うことができない、或いは、あえて機能性表示を行わないとする食品も数多く発生するであろう事は、容易に想像できます。これらの機能性表示に該当しない食品類における表示は、今後どうなるのでしょうか。現状の健康食品の広告では、「明るい毎日のために」「生活のふしぶしに」といった遠回りの表現を用いていますが、新制度のもとではこうした”まぎらわしい”表現そのものができなくなる可能性もあるため、新制度が始まることで逆に売りにくくなるのではないかという懸念もあります。いずれにしても、ガイドラインの公表が待たれます。

尚、機能性を表現するためには、①最終製品を用いた臨床試験、②最終製品又は機能性関与成分の関する研究レビュー、のいずれかを実施し、科学的根拠を示す必要があります。

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