PC周辺機器・アクセサリーの総合サプライメーカーであるエレコムのグループ会社で、PC周辺機器メーカーのロジテックINAソリューションズ(ロジテック)が運営するECサイト「ロジテックダイレクト」の今期(2020年3月期)EC売上高は、前期比30%以上の伸び率を見込む。独自の商品戦略、オリジナルコンテンツを活用したSEO対策などが成長要因である。成長の秘訣(ひけつ)、ECサイトの拡大を支えるECシステム活用などの視点で、メーカーECの取り組みを取材した。

メーカーECの強みを生かした商品開発

ロジテックはテレビやパソコン用のハードディスク、SSD(ソリッドステートドライブ)、USBメモリなどの製造・販売を手がけるメーカーで、長野県伊那市内の自社工場で商品を製造している。創業は1982年。国産ハードディスク・SSDのメーカーとして、消費者向けの販売に加え、法人との直接取引も多い。

EC事業を開始したのは2006年。「ロジテックダイレクト」の屋号でECサイトを開設した。現在は自社ECサイト、「楽天市場」「Amazon店」「auWowma!店」など6店舗のECサイトを運営している。

「ロジテックダイレクト」公式ECサイト
「ロジテックダイレクト」公式ECサイト

ECサイトの取扱商品数は常時500~600品目。扱っているのは原則としてEC専用商品のみ。店頭と競合することを避けるため、小売店向けの商品とは型番・仕様を変えている。メーカー直販ならではの商品戦略である。

EC部門がエンドユーザーとなる消費者のニーズを捉え、それを踏まえて開発部門がEC専用品として商品化します。企画から発売まで、早ければ数か月で進む。これはエレコムグループとしての強みでもあるのですが、高速開発が可能な体制により、EC部門から企画を上げたものをすぐ商品化できるのが当店の最大の特長です。(ロジテック 商品開発部Web企画チーム チームリーダー 佐名木孝氏)

ロジテックINAソリューションズ 商品開発部Web企画チーム チームリーダー 佐名木孝氏
ロジテックINAソリューションズ 商品開発部Web企画チーム チームリーダー 佐名木孝氏

ロングセラー商品はレビュー8900件以上、モール店のキラーコンテンツに

「ロジテックダイレクト」には10年以上もヒットし続けているロングセラー商品も少なくない。

「楽天市場」などのモール店においては、ロングセラーの商品は販売実績やレビューの数が多く、それがEC事業の強みになっているという。大手ECモールの検索エンジンは、商品の販売実績やレビューの数が検索結果に影響するとされるためだ。

たとえば、容量2TBの外付けハードディスクは、累計販売台数が14万台を超えている。「楽天市場」におけるレビュー件数は8930件で、評価は平均4.52点(2019年9月19日時点)。レビュー件数の多さ、評価点の高さからモール内検索に強く、「ロジテックダイレクト」におけるキラーコンテンツになっている。

消費者ニーズに合った新商品の開発と、ロングセラー商品の両方を持っていることがロジテックダイレクトの特徴であり、強みだと思っています。(ロジテック・佐名木氏)

ロングセラー商品の外付けハードディスクは累計販売台数14万台以上、楽天市場におけるはレビュー8900件を超えている
ロングセラー商品の外付けハードディスクは累計販売台数14万台以上、楽天市場におけるはレビュー8900件を超えている

自社ECのアクセス3倍、SEOに強い理由は「コンテンツマーケティング」

自社ECサイトの強化にも余念がなく、ロジテックのEC売上高は自社EC、モール店ともに、着実に伸びている。直近の2019年4-6月期(2020年3月期第1四半期)におけるEC売上高の伸び率は、前年同期比30%増だったという。

その要因の1つには、自社ECサイトのSEO対策もある。Googleの検索エンジンで「外付けハードディスク」や「SSD」といったキーワードで検索すると、ロジテックのページは常に上位表示される。

なぜ、ロジテックはSEOに強いのか。その理由を佐名木氏は、「コンテンツマーケティングの強化」と回答する。

ハードディスクやSSDに関するメディアを運営し、商品の選び方などを解説する記事を毎月6~7本投稿しています。検索エンジンからメディアへ流入したユーザーを、ECサイトの商品ページに誘導する。約3年前にこうしたコンテンツマーケティングを本格的に開始し、2018年秋頃から、目に見えて成果が上がり始めました。(ロジテック・佐名木氏)

コンテンツマーケティングによって、自社ECサイトのアクセス数と訪問者数は急増しているという。

自社ECサイトのアクセス数は1年で3倍以上、ユニークユーザー数も約3倍に増えました。今後の課題は、訪問者のコンバージョン率を高めること。コンバージョン率が上がれば、売り上げはまだまだ伸びるはずです。(ロジテック・佐名木氏)

商品の選び方などを解説する記事
商品の選び方などを解説する記事の例

トレンドに対応するため、ECシステムをパッケージからクラウド版に変える

ロジテックのEC事業が着実に成長している背景には、ECシステムを戦略的に活用していることもあげられる。

以前はECパッケージシステム「ecbeing」を使ってECサイトを構築していたが、それを2017年6月、クラウド版のECシステム「メルカート」に切り替えた。

「メルカート」は「ecbeing」と同等の機能を、クラウド版で利用できるのが特徴。システムを切り替えた理由について佐名木氏は、「EC市場のトレンドの変化に対応した、最新の機能が随時実装されるシステムに変えたかった」と説明する。

ECパッケージはカスタマイズの自由度が高いものの、数年経つと機能が陳腐化するデメリットがありますクラウド版ならば、機能が随時バージョンアップされますから、EC市場のトレンドに合った機能を使えると考えてリプレイスを早めに実行しました。(ロジテック・佐名木氏)

ECの売り上げが増えるにつれ、ECサイト構築システムをクラウド版やASPサービスから、ECパッケージに乗り換える企業は多い。ロジテックは逆。ECパッケージからクラウド版に乗り換えためずらしいケース。カスタマイズの自由度よりも、ECのトレンドに合った機能のアップデートを重視したロジテックの判断は、スピードやトレンドへの対応が重視される昨今のECシステム選びの1つの参考になる例だろう。

システムで複数店舗の在庫を一元管理

多店舗展開を推進しているロジテックは、在庫管理や受注処理の導入で在庫の一元管理、業務効率を実現している。

在庫の一元化はNHN SAVAWAY(当時はSAVAWAY)の在庫管理システム「サバスタ」を2012年に導入。2019年2月に、「サバスタ」の後継となる一元管理システム「TEMPOSTAR(テンポスター)」を導入した。

ECモール各社がそれぞれで経済圏を作っている昨今のマーケット。楽天ポイントを重視するユーザーは「楽天市場」など、特定経済圏だけを利用するユーザーも増えている。そのため、複数サイトを運営する「多店舗展開」はEC事業の売上高を拡大する上で非常に有効な施策となる。

一方で、サイトごとで在庫を管理していると、膨大な手間、在庫のずれ、複数店舗でのリアルタイムの在庫管理ができないといった業務上の問題が生じる。こうした問題は在庫があるのにあるサイトは品切れになっているといった機会損失が発生しやすくなってしまう。

取扱商品数が常時500~600品目ある「ロジテックダイレクト」においては、在庫の一元化は売り上げを伸ばす上で不可欠だと佐名木氏は強調する。

複数のネットショップを効率的に運営し、さらに、品切れによる売り逃しを防ぐには、在庫の一元化が不可欠です。システムによる在庫の一元化が、業務効率化などによって売る業務にリソースを割けることができるようになり、ECの売り上げが伸びた理由の1つであることは間違いありません。(ロジテック・佐名木氏)

「ロジテックダイレクト」の受注データの処理もNHN SAVAWAYが提供しているサービスで行っており、受注処理から在庫の引き当て、出荷データの作成までシームレスに業務が進む。

受注データを処理し、在庫データに引き当てます。そして、受注データを出荷指示データに変換し、倉庫側に送る。すべての業務を自動化できているわけではありませんが、システムを使うことで、人の手で行う作業が大幅に減ったことは間違いありません。それにより、スタッフのリソースに余裕が生まれ、商品企画やマーケティングなど本来やるべき仕事に集中できています。(ロジテック・佐名木氏)

「ECの常識にとらわれたくない」 ロジテックダイレクトの今後の戦略とは?

ロジテックは今後、EC事業をどのように拡大していく計画なのだろうか。佐名木氏は、国内市場に限らず、海外のマーケットにも目を向けている。

弊社はメイドインジャパンのハードディスク・SSDメーカーとして、品質に自信を持って物作りを行なってきました。今後は国内のみならず、海外のお客さまにも買っていただけるECサイトをめざしたいです。(ロジテック・佐名木氏)

また、ECサイトを全社的なデジタルマーケティングにも生かしたいという。例えば、法人顧客のリード獲得にも「ロジテックダイレクト」を活用する計画だ。

ECサイトは、商品を売るだけではなく、会社全体のデジタルマーケティングにおいても、さまざまな役割を果たしてくれると思っています。既成概念にとらわれず、ECサイトを柔軟に活用しながら、ロジテックの業績拡大に貢献していきたいです。(ロジテック・佐名木氏)

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NHN SAVAWAY 編集部

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