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EC事業者にとって、制作会社やシステム提供者などのベンダーをどう選ぶかは、非常に大切なことだ。この記事では、ベンダー選びに関して、古くからいわれていた選定の基準と、もっと新しく実践的な選定の指針を解説する。

EC事業者にとって、どのベンダー(ここで言う「ベンダー」とは、ショッピングカートASP、デザイン制作会社やシステム開発会社など、ネットショップを運用するために必要なツールやサービスを提供する企業のことだ)と取引をするかということは、事業を大きく左右するし、それゆえに悩みの尽きない課題である。変化の激しいECという業態において、先人の作った常識が今日や明日も通用するのか評価はできない。評価が終わる頃には雌雄を決してしまっていることが少なくないからだ。

もちろん、セオリー(説)を無視してはいけない。いかなる事業にも試行錯誤は必要だ。これをPDCAサイクルと言う。これらはまさしくセオリーである。

一方で、プラクティス(実践)も重要。プラクティス無きセオリーは机上の空論、セオリー無きプラクティスは危険な暴走。両者が伴ってこそである。

では、ベンダー選びにあたって、古くから常識として言われてきた「物差し」のいくつかをおさらいしてみよう。

  • ベンダーの誇る実績数 ─ これが人気のバロメーターとは限らない。刹那的な関係にとどまっているおそれは十分にある。あなたと同業種における実績があった場合、それは言葉が通じて効率が良いことを意味する。しかし、常識にとらわれて新鮮なブレークスルーができない可能性もある。

  • ベンダーの会社規模 ─ ベンダー側のサステイナビリティ(事業継続性)においては安心だ。ただ、あなたの会社はベンダーの規模と釣り合いが取れているだろうか。ベンダーが大企業であなたが中小企業だとしたら、あなたが期待するパフォーマンスは、ベンダーに対してあなたの会社が一定以上のプレゼンスを発揮できている時にしか望めないのではないか。端的に言えば、あなたの会社より小さいベンダーの方が、依存度が大きい分だけ期待もできるのだ。

  • ECに特化したベンダー ─ これは会社規模以上に重要だ。ベンダーの立場で言えば、他に糧がないからだ。多角経営をしている大企業の場合、企業価値を維持・向上させるために、絶えず事業の選択と集中が行われている。EC関連事業も例外ではない。 ECに特化したベンダーなら、企業のDNAが事業と密着している。過去から未来へ綿々と引き継がれていくものを持っているはずなのだ。

  • 優秀な担当者 ─ もちろん一定以上の評価を与えるべきだが、お互い異動の可能性はある。極端な話、プレゼンを担当してくれた人が、プロジェクトが始まった時にはいなかったという話も少なくない。特に、社員の定着率が低いベンダーには気を付けたい。

では、古来の当たり前とは一味違う、ちょっと新しい実践的な「物差し」を提案しよう。その「物差し」とは、次の4つだ。

  1. ライフサイクルを2+2+1で考える
  2. リニューアルとリプレースは違う
  3. コンペをしない
  4. 刺激的な社長

それぞれについて解説する。

①ライフサイクルを2+2+1で考える

今なお、システムのライフサイクルを5年単位で考えている企業は多い。しかし、5年は長すぎる。ECは成長ドメインにあり、テクノロジーの変遷が集中しているからだ。

変遷を加速させたのがクラウド・コンピューティングである。クラウドは減価償却の呪縛から解放してくれた。これは劇的な変革だ。それでも、1年単位のライフサイクルでは、事業計画を立案するのに短すぎるという意味で非現実的だ。

そこで、「5=2+2+1」という公式、ブレークダウンの考えを提案する。ライフサイクルを「2年、2年、1年」で分けて考えるのだ。

②リニューアルとリプレースは違う

リニューアルとリプレースを混同しているケースは非常に多い。表裏を感覚で捉えよう。

「リニューアル」とは、お客様から見える表の部分を刷新することであり、商売のやり方を変えることにほかならない。本質は、販売モデルに改善を加えるために、見せ方を変えること。「リプレース」とは、老朽化したり課題が解決できなくなって、お客様から直接は見えない裏の部分を置換することだ。

リニューアルとリプレースを同時に行おうとするから時間がかかるのである。リプレースをせずにリニューアルに耐えられるシステムとベンダーを選ぶセンスが必要なのである。それが、先に述べた「5=2+2+1」になる。

リプレースの場合、全く新しいシステムなりベンダーを適用するには、周到な準備と相応の時間が必要である。二重投資もやむなし。これがシステム晩年の1年である。だが、現実には二重投資を嫌うがために、死に体となった側には投資がされにくい。現役であるにもかかわらずだ。

これは節約と思い込んだ誤りである。金を稼いでいる一軍なのだから。その誤りによって、あなたの事業そのものが死に体になってしまう危険性に気付かなければならない。

③コンペをしない

ベンダー選定のプロセスからコンペを省いてみよう。極端かもしれない。だが、あなたのビジネスが物販だったら、一度考えてみる価値がある。

型番商品なら一番安い店で買えばいいかもしれないが、システムは型番商品と違うケースが大半。そしてそれゆえに、ベンダー側にもベンダー側の論理がある。

RFP(提案依頼書)は満たされて当たり前。満たせないベンダーは提案しないのだから。結局、本質的に要件を満たす機能に差は出ない。大きく差が出るのは金額である。ベンダー側も、コンペになれば金額が決め手になること重々承知だ。勝つ(=安く提案する)ためにはコストダウンなのだが、これが曲者なのだ。

コストダウンを図るには何らかの妥協が必要なこと明白。では、何を犠牲にするかといえば、目に見えにくい要件しかない。「できたら儲かるけど要らないや」「赤字ギリギリだから今ない要求は拒もう」「あとで言われたら増設やカスタマイズで見積ろう」コンペに参加する側にこういった考えが浮かぶことは想像に難くないだろう。

あなたは安いものを選ぶことで自分のビジネスを強くしているつもりかもしれないが、ベンダーが自分のビジネスのために、あなたのそれを犠牲にする可能性がある。「勉強する」のはコンペの時だけなのだ。

真の互恵関係を築くには、コンペが妨げになることもあると理解しなくてはならない。もちろん、金額を考慮するなということではない。ベンダーやテクノロジーなどに対する知見を備え、より早い段階でスクリーニングをしておくことが必要だ。一方通行の利益だけしか考えない相手は、信頼できるパートナーではないのだ。

④刺激的な社長

色々なアスペクトは挙げたが、悩みが解消するかと言えばそうではないだろう。それは当然。未来の正解など誰にも分からないから。変化の激しいECの世界ではなおさらである。

ただ、変化の激しいことで悩みが深まるなら、不変のものに決め手を求めよう。ベンダーが中堅中小の場合なら1つある。社長だ。その社長のデオキシリボ核酸は、必ず継承と発現をもたらす。あなたにとって刺激になる社長のいる会社を選ぼう。そこには相性もある。立派な社長とか、扱いやすい社長ではない。あなたのビジネスが一歩先に行くためには、刺激をくれる社長と付き合うのがいい。

新規の取引は互いにとってのチャンスと理解すること。リスクは既存取引の延長にもある。一方で、ベンダーという「伴侶」を求めるにあたって、短期間の関係を多くの相手と重ねることは利益を失わせる。5年は付き合う覚悟でパートナーを選んでほしい。

このコーナーはインプレスビジネスメディア主催のイベント「ネットショップ担当者フォーラム」のプログラム委員によるリレーコラムのコーナーです。

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