「売れるECサイト」構築のポイントとは?成功・失敗事例から学ぶ12個のコツ
今の時代、物やサービスを販売する企業において、ECサイトの構築や運営は欠かせない。しかし、EC事業に参入する際「どのようにスタートさせたら良いか」「どうやって軌道に乗せたら良いかわからない」といった悩みを抱える企業は多いだろう。
ECサイトの導入、構築、運営などを支援し、多くのECサイトを成功に導いたエートゥジェイの代表取締役社長 飯澤満育氏が、EC事業を始める際の4つのフェーズにおける成功と失敗を事例を交えて紹介する。
エートゥジェイは、ECや通販に必要な機能をワンストップで提供するクラウド型ECプラットフォーム「メルカート」を運営。導入企業の売上拡大を支援するため、メルカート専門スタッフを組織し、ECサイトの効果分析、CRM、広告運用なども含めたサービスを提供している。
EC事業スタートから成長までの「4つのフェーズ」とは
飯澤氏は、EC事業のスタートから成長までの4つのフェーズとして、①カート選定フェーズ②構築フェーズ③運用基盤固めフェーズ④成長フェーズの4つをあげる。
①カート選定フェーズ:目的に合わせたサービスを決定
カート選定フェーズは、EC事業の目的に合わせたサービスを決める工程だが、主に3つの課題に直面しやすいという。
1つ目は「最適なコストやサービスがわからない」こと。自社に合わないサービス選定により、無駄なコストや期間がかかってしまう。
2つ目は「目標に対して何をしていいかわからない」。サイトのオープン自体がゴールになってしまい、やるべきことがわからなくなってしまう。
3つ目は「業務ごとにサービスを変えると管理が大変」ということ。各サービス企業とのやりとりに時間を割かれてしまい、本来必要なコア業務に使うべきリソースが減ってしまうことだ。
こうした失敗が起こらないようにするため、「カート選定フェーズにおける意思決定では3つのコツがある」と飯澤氏は話す。
1つ目は「EC専門ベンダーが提供する、目標達成をめざせるカートを使う」こと。
2つ目は「さまざまな業界・規模の導入事例が豊富にあるベンダーを選ぶ」こと。業界や業種によって使いたい機能や必要なリソースが異なるからだ。
3つ目は「機能やシステムだけでなく、運営や施策を一貫してサポートできるベンダーを選ぶ」こと。サポーターとなってくれるカート企業と一緒に事業を進めていくことが重要なポイントだ。(飯澤氏)
導入フェーズにおける事例として、米穀事業の老舗企業である木徳神糧のECサイト「コメッツ」を紹介。木徳神糧は元々BtoB事業を展開していたが、BtoCへの事業拡大に伴いECサイトを開設することになり、エートゥジェイに支援を依頼した。
初めてECサイトを開設する際、多くの企業が悩む点はコストだ。まだ売り上げが立っていない状態で投資をしなくてはならず、「初期導入コストにこんなにかけていいのか」と不安になる。エートゥジェイはそういった企業の思いを汲み、メルカートと共に初期導入コストが低いスモールスタートを行った。
ECサイトの運営経験がない企業の場合、運営や管理画面の操作だけでなく、マーケティングや成長フェーズへの移行段階におけるサポートも必要となる。そのため、メルカート専門スタッフが、充実したサポートを実施。さらに、スポットでの広告運用管理など、広告の運用もエートゥジェイで行い初期の売り上げを作った。
元々、非常に商品力が高い企業ということもあり、商品企画などに自社のリソースや時間を使っていただき、広告の運用や分析した結果に基づくアドバイスなど、ECの専門領域に関することは我々の方でお手伝いさせていただいた。(飯澤氏)
②構築フェーズ:課題を解決しながら立ち上げを準備
構築フェーズは、課題を1つずつ解決しながら立ち上げの準備をして行く段階となる。このフェーズにおける課題は3つあり、1つ目は「立ち上げ作業で何をすべきかわからない」。プロジェクトが進まず、予定したオープン日に間に合わないという事態もあるという。
2つ目は「目標に対して何をして良いかわからない」だ。「当初の予算では足りない」「ユーザーニーズを無視したECになってしまう」などがよくある失敗事例で、ユーザーの気持ちや体験に寄り添わないことが要因だ。
3つ目は「運用体制が整っているのか判断できない」という問題だ。予期せぬトラブルで、一部の商品画像が表示されない、商品の説明と商品画像が合ってないといった失敗事例も少なくない。
構築フェーズでの意思決定のコツは、まずオープンまでに必要なタスクとスケジュールを見える化すること。次に、要望に応じて優先度を決めた進め方を提案できる体制が整っていること。最後に、実際の業務を想定したステージング環境での運用テストを行うこと。ECサイトでは、充分なテストを行った後にスタートすることが重要だ。(飯澤氏)
飯澤氏は高級洋食器を扱う鳴海製陶を成功事例としてあげた。以前は他社のサービスを使ってECサイトを運営していたが、リニューアルにあたってメルカートに変更した。デジタルマーケティングを活用して売り上げを上げる、リソース的なサポートを受けたいというニーズからだ。
エートゥジェイは、制作と並行してバックオフィス、いわゆる管理画面の運用作りをサポートした。管理画面はサービスによって大きく異なるため、鳴海製陶と伴走しオペレーションを作成。それにより、制作費用だけでなく運用コストも削減できた。
また、当初は4か月の準備期間を予定していたがスムーズに進み、2か月でリニューアルオープンに至った。
③運用基礎固めフェーズ:成長体制を作る
運用基盤固めフェーズは、売り上げを加速しても成長させられる体制を作る重要なフェーズだ。
ここでの課題1つ目は「自社ECサイトの強みがわからない」というもの。飯澤氏は「全方位的な施策で効果が出ず、自分たちの強みがわからなくなってしまうケースが多い」と話す。
2つ目は「効果的な改善方法や改善すべき箇所がわからない」で、改修してもCVR(コンバージョンレート)がまったく上がらないというケースが多いという。1箇所だけ改修しても簡単にCVRが上がるわけではなく、1つずつチューニングする、ABテストを行うといった地道な作業が必要だ。
3つ目は、「売上停滞・顧客満足低下・顧客離れ」だ。リソース不足が原因で「やらなければならないことはわかっていても手が回らない」という状況に陥りがちになってしまう。
課題を解決するために、まず自社ECの強みを把握し、ターゲットに合わせたKPIを設置する。その上で、改善の肝になるデータ分析の地盤を作っておく。そして、自社の強み以外の領域や作業的・専門的な領域は、作業の棚卸しをして効果的な作業分担を外部も含めて行うことが重要となる。(飯澤氏)
この3つを実践して成功している事例が、保存容器やグラス製品を販売するAGCテクノグラスのECサイト「iwaki(いわき)」だ。
このサイトでエートゥジェイが提供している領域は、データ分析、SEO施策、広告運用、CRM施策などで、AGCテクノグラスが差別化のポイントとしている人と人とのコミュニケーションの領域は、自社で運営している。
ここで重要なのは、顧客接点という最も重視する部分、自分たちの強みである部分にリソースを割き、模倣困難性の低い領域に関しては外部にアウトソースしているとことだ。
顧客参加型のコミュニケーションを強化し、ペルソナの体験に合ったコンテンツも内製化している。まさにリソースの集中と選択による差別化の効果が生まれている。(飯澤氏)
④成長フェーズ:売り上げを最大化し利益を出していく
成長フェーズは、売り上げを最大化して利益を出していく最も重要なフェーズだ。
ここでの課題の1つ目は「広告以外でのチャンネルが育っていない」ということだ。広告がユーザーの流入や売上増加につながると「さらに売り上げを上げたい」と考え、広告を出し続けてしまう。その結果、広告費用が膨大になり、やめてしまうと売れなくなるという状況に陥ってしまう。
2つ目は「CRMによるファン化ができていない」というもの。ユーザーに商品を1回しか購入してもらえず、ユーザーの囲い込みやファン化ができていないことが原因だ。
3つ目は「社内リソースが不足して施策が行えない」。成長して売り上げが上がれば業務量が増え、人が必要になってくる。しかしそのままの状態で運営していれば、売り上げにも影響を及ぼしてしまう。
課題に対する意思決定のコツの1つ目は、広告だけでなくSEO、SNSなどの施策でベースを作り、さまざまなチャンネルからの売り上げを獲得していくこと。2つ目は、CRM分析を行い顧客に合わせた施策を実施すること。3つ目は、リソースは社内だけでなく外部に委託するなど、自社にあった方法で補完していくことだ。(飯澤氏)
成長フェーズでの事例として、多数のゴルフブランドを取扱うグリップインターナショナルを取り上げた。
エートゥジェイは、ブランドサイトの構築、運営、撮影、広告運用、販促企画、制作支援などを支援。下の図が立ち上げから成長フェーズまでのロードマップだ。
一次フェーズではSEO・広告施策、二次フェーズではブランドの多角化を実践。三次フェーズでは広告コストを増やして売上増加を加速させた。
フェーズごとに、会社や業種によってさまざまな課題が出てくる。今回あげた12個のポイントは、さまざまな問題を1つずつクリアして、成長できるECサイトを構築する上で参考にしていただければ幸いだ。(飯澤氏)