高野 真維 2023/5/11 7:00

リンクアカデミーが実施した「リスキリング対象者層のITスキル教育」に関する調査によると、「リスキリング(Re-skilling)」の取り組みに力を入れている企業が増えているようだ。

企業のリスキリング施策導入者層(経営者・人事担当者)とリスキリング対象者層(経営者・人事担当者以外の従業員)を対象に調査を実施した。なお、調査での「リスキリング」は、「現職とは異なる職種、特にデジタル職種に転換するためにスキルを塗り替えること」と定義している。

リスキリングは増加傾向

2022年度と2023年度に見るリスキリングの進捗状況

リスキリング施策導入者層の回答結果は「既に取り組んでいる」(52.6%)、「取り組むことを決めている・検討している」(42.4%)、「何も取り組めていない」(5.0%)となり、リスキリング対象者層の回答結果は「既に取り組んでいる」(42.8%)、「取り組むことを決めている・検討している」(44.1%)、「何も取り組めていない」(13.1%)となった。

リスキリングの取り組み状況
リスキリングの取り組み状況

リスキリング対象者層は、2022年度調査では9割以上が「何も取り組めていない」と回答していたが、2023年度調査では1割台に減少している。

リスキリングの取り組み状況について具体的に聞いたところ、次のような回答があった。

  • 【既に取り組んでいる】DX戦略を行っているためITスキルを習得する必要があり、資格試験などを中心とした取り組みを行っている。(20代女性・会社員)
  • 【取り組むことを決めている・検討している】ITスキルが身についていない社員がほとんど。小売業である当社は今後スキルをつけてもらう必要性を感じている。その上で、何ができないか何ができるかを考えたい。(40代男性/会社員)
  • 【取り組むことを決めている・検討している】DXにより今までとは環境が変わる可能性があると考えているため、リスキリングに取り組むつもりではいるが、具体的に何から取り組めばよいのかわからないのが現状。(40代男性・経営者)
  • 【既に取り組んでいる】現代社会に必要不可欠なデジタル分野で日本は世界的に遅れをとっているため、ITに関するスキルを幾つか身につける必要があると思う。(50代男性・経営者)

企業側に求めるリスキリングの機会とは?

リスキリング対象者が企業側に求めているのは「ITスキルに関する研修の提供」が大きい。回答者に占める割合も34.8%(2022年度調査)から52.0%(2023年度調査)に増加している。

リスキリングによって高めたいスキルにも変化がある。2023年では、基本的なスキルに加え、RPA、プログラミングといった中程度~高度なスキルまで、個人によって学びたい内容が多様化している。

リスキリングの機会は「ITスキル」がトップ

リスキリング対象者層に対して、どのようなリスキリングの機会を求めているかを質問したところ、「ITスキルに関する研修の提供」(52.0%)が最多。このほか、「OJTの場の提供」(40.0%)と回答した人の割合も2022年度から大幅に増加した。

プログラミングなど高度なスキルを高めたい人が増加

リスキリング対象者層に対して、具体的に高めたいスキルを聞いたところ、「プログラミングなどの高度なスキル」(30.2%)が最多で、「ノーコードやRPAなどの中程度のスキル」(23.6%)が続いた。

リスキリングについて会社に求めること(左)と、高めたいスキル
リスキリングについて会社に求めること(左)と、高めたいスキル

リスキリング施策導入者層の課題は“人材不足”

リスキリングを実施する側は現在、3~4社に1社の割合で「コア人材が不足している」と感じていることが調査結果からわかった。また、「レガシーシステム(古いシステム)が残ってしまった」と感じている人の割合は、2022年度(17.4%)と2023年度(34.0%)を比べると約2倍に増加している。

リスキリング施策導入者層に対して、DXの推進について感じている課題を調査したところ、「DX推進のための投資判断ができない」(35.3%)が最多となり、「レガシーシステムが残ってしまっている」(34.0%)、「プロジェクトを推進するコア人材が不足している」(32.8%)、「そもそもDX戦略を描けていない」(28.8%)が続いた。

企業のDX推進における課題
企業のDX推進における課題

「特に課題はない」と回答した人の割合が2022年度の28.0%から7.5%に大きく減少したことから、リンクアカデミーは「リスキリングの取り組み状況が進捗したことで新たな課題も浮上しているようだ」と分析している。

IT人材の不足、解決の手立ては?

こうしたIT人材不足の解決に向けて、企業は既存の従業員に対しては、基本的なスキルから中程度のスキルまで幅広くスキルを高めてほしいと考える傾向があるようだ。一方で、コア人材の確保は中途採用(経験者採用)を検討する傾向が見られる。

IT人材の不足を解消するための考えをリスキリング施策導入者層に質問したところ、「中途採用」(43.0%)が最多。「派遣会社やアウトソーシングの活用」(34.7%)、「既存従業員へのITスキル育成」(28.6%)と続いた。

既存従業員のITスキル育成についてどのような機会を提供したいと考えているのかを調査したところ、「ITスキルに関する研修の提供」(46.3%)、「外部からのIT人材確保」(43.4%)、「OJTの場の提供」(39.9%)となった。

2022年度の調査結果と比較すると、「ITスキルに関する研修の提供」と回答した人の割合は10ポイント近く増加している。先述の、リスキリング対象者層が企業側に求める調査結果と同様に、リスキリング施策導入者層についても、ITスキルに関する研修機会の割合が高まっていることがわかった。

IT人材不足を解決する手段(左)と、既存従業員のITスキル育成に向けた取り組み
IT人材不足を解決する手段(左)と、既存従業員のITスキル育成に向けた取り組み

既存の従業員に高めてほしいと考える具体的なITスキルを聞いたところ、「ノーコードやRPAなどの中程度のスキル」(27.8%)、「ExcelやPowerPointなどの基本的スキル」(25.0%)、「プログラミングなどの高度なスキル」(23.6%)となった。

Excelといった基本的スキルからRPAなど中程度のスキルまで、幅広く実務に活用できるスキルを身に付けてほしいという考えが見られた。

既存従業員に求めるITスキル
既存従業員に求めるITスキル

中堅層・管理職の育成がDX推進の鍵?

リスキリング施策導入者層に対して、DX推進を阻む人的要因・課題をどのように解決したいと思うかを質問したところ、「中堅層の(IT研修など会社主導での)育成」(31.3%)が最多となり、「管理職の(IT研修など会社主導での)育成」(30.3%)、「若手の(IT研修など会社主導での)育成」(25.9%)と続いた。

DXの推進を阻む人的な課題を解決するための手立て
DXの推進を阻む人的な課題を解決するための手立て

DXの推進を拒む人的要因や課題について、解決策となるのは「(企業主導による)管理職や中堅層へのIT研修」だと考えているようだ。調査結果によると、管理職や中堅層にIT研修が必要だと思う理由は次の通り。※回答は一部抜粋

  • 【管理職の(IT研修など会社主導での)育成/中堅層の(IT研修など会社主導での)育成】上が変わらないと社員がついてこない。(20代女性・会社員)
  • 【管理職の(IT研修など会社主導での)育成】管理職の意識が変わらないと会社全体が変わらないと思うから。(30代男性・経営者)
  • 【管理職の(IT研修など会社主導での)育成】まずは指導者がITについて熟知しないといけないと思うため。(50代女性・経営者)
  • 【管理職の(IT研修など会社主導での)育成/中堅層の(IT研修など会社主導での)育成】まずはトップからの研修が最適だと感じるから。(50代男性・会社員)

調査結果を踏まえて、リンクアカデミーは次のように分析している。

DXの「推進フェーズ」では、実際にシステムを活用していく従業員全員のITスキルが重要であり、リスキリングなどによって従業員のITスキルを育成する必要があるが、まだまだ課題も多い。

企業は、外部のITリソースを頼るのではなく、リスキリングなどで従業員のITスキルを育成し、内部のITリソースを増やしていく必要がある。

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