カスタマーサクセスの効果を感じた層の7割で「売上が向上した」【カスタマーサクセスに関する実態調査】
企業と顧客の接点に関するコンサルティングとアウトソーシングサービスを提供するバーチャレクス・コンサルティングが「カスタマーサクセスに関する実態調査」を実施した。調査対象は全国の20歳~65歳の有職者2万9237人、期間は2023年3月17日~3月22日。
カスタマーサクセスの効果を感じている層の43.5%が「タッチモデルを構築」
カスタマーサクセスの「効果を感じている層」と「感じていない/どちらとも言えない層」のそれぞれに、カスタマーサクセスの運用について質問。「効果を感じている層」の43.5%が「タッチモデルを構築している」と回答し、2022年調査の38.1%から5.4ポイントアップした。
効果を感じている層の47.8%が「フェーズ分け運用」を実施
「サクセスロードマップに応じた運用プロセス・ルールは定めているか」について、「効果を感じている層」の47.8%がフェーズを分けた運用を実施。33.3%がフェーズ分けの試験運用を始めているという。
一方、「効果を感じていない/どちらとも言えない層」でフェーズ分け運用をしているのは7.0%。
「フェーズ分け運用を行っている」と回答したユーザーに、「どのようなクライテリア(意思決定、判断)でサクセスロードマップをフェーズ分けしているか」と聞いたところ、いずれの層も「ヘルススコア(複合)とその閾値を定めている」が最多。「効果を感じている層」では224人中47.3%、「効果を感じていない/どちらとも言えない層」は47人中の51.1%だった。
「ヘルススコア(単体)とその閾値を定めている」は、「効果を感じている層」が42.4%、「効果を感じていない/どちらとも言えない層」が21.3%だった。
効果を感じている層の54.7%が「継続率・数・額」をKPIに設定
成果指標として定めているKPIは、「効果を感じている層」の54.7%が「継続率・数・額」をあげており、2022年から2.5ポイント上昇した。
「解約率・数・額」は2022年から1.4ポイント減少の39.1%、「アップセル率・数・額」は34.8%で、2022年より2.4ポイント上昇した。2022年と比べて多少の増減はあるものの、「効果を感じている層」は特にこれらの指標を重視していることがわかる。
対して、「効果を感じていない/どちらとも言えない層」では、2022年同様半数以上が成果指標として定めているKPIは「特にない」という結果だった。一番回答が多い指標「解約率・数・額」についても、設定しているのは4分の1のみだった。
効果を感じている層の77.2%が「売上高が向上したと感じている」
「カスタマーサクセスの取り組み前後で各指標がどのように変化をしたか」を聞いたところ、「効果を感じている層」と「感じていない/どちらとも言えない層」では大きな差が浮き彫りとなった。
効果を感じている層で「売上高が向上したと感じる」と回答したユーザーは77.2%で、2022年より2.6ポイント増となった。その他の指標でも半数以上から7割が向上したと感じており、カスタマーサクセスの効果がはっきりと出ているようすが伺える。
一方、「感じていない/どちらとも言えない層」においては、いずれの指標においても向上したと感じている人は3割に満たない。また、効果を感じている層と比べて、各指標を「把握していない」という回答が多かった。
カスタマーサクセスツールの利用割合が高いほど、効果を感じている
前述の「タッチモデル構築」と「フェーズ分け運用」は、カスタマーサクセスの取り組みにおいて「サイエンス」の部分を担う重要な要素となる。これらの設定によってどう結果に影響を与えるかを調べた。
次の2つのグラフは、「タッチモデルを採用している層」「していない層」別のカスタマーサクセスツールの利用状況と効果体感を示している。「タッチモデルを採用している層」におけるカスタマーサクセスツールの利用割合は高く、大半が「カスタマーサクセスの効果を感じている」と回答した。
「タッチモデルを採用していない層」のカスタマーサクセスツール利用状況は、約半数がツールを利用していないことに加え、採用している層と比べて、効果を感じている人の割合が少なかった。
フェーズ分け運用を行っていない層の7割強は、カスタマーツールを利用していない
「サクセスロードマップに応じたフェーズ分け運用(導入/活用・定着/更新/関係深化など)」を行っている層、行っていない層別に、カスタマーサクセスツールの利用状況と効果体感を調べた。
それぞれのツール導入率に対して、フェーズ分け運用を行っている層が「カスタマーサクセスの効果を感じている」割合が高いことがわかる。
また、フェーズ分け運用を行っていない層の7割強は、カスタマーツールを利用していない。これらのことから、ツールの活用においても、ただ導入するだけではなくその活用に伴うルール作り、つまり「サイエンス」が非常に重要であることがわかる。
タッチモデル採用、フェーズ分け運用をしている層の約70%が業況指標の向上・増加を体感
タッチモデル採用の有無、フェーズ分け運用の有無で、業況に関する指標に差があるかを見た。直近一年の売上高、利益率、新規契約数、継続率、アップセル率すべての指標において、タッチモデルを採用している層の多くが「向上した/増加した」と回答している。
一方、タッチモデルを採用していない層では、各指標に対して「変化なし」の回答が多く、カスタマーサクセスに取り組んでいるものの、指標に変化が見られないことで「効果の有無はどちらとも言えない」と感じていることが推察される。
また、「サクセスロードマップに応じたフェーズ分け運用」を行っている層においても、各指標において直近一年で「向上した/増加した」という回答が多く、効果を体感している人が多いことがわかる。
フェーズ分け運用を行っていない層においては、「変化なし」の割合が多く、効果についても「どちらとも言えない」と感じている人が多い結果となった。
効果につながった取り組みは「正しい顧客への販売」が最多
カスタマーサクセスの取り組みを行っているすべてのユーザーに「効果につながったと思われる取り組み」について聞いたところ、最多は「正しい顧客への販売」(34.2%)で、次いで「顧客の離脱防止策の実施」「カスタマーヘルスの把握・管理」(いずれも26.4%)だった。
成果が出た要因、半数が「カスタマーサクセスの概念が社内に浸透していること」
カスタマーサクセスの「効果を感じている層」に成果が出た要因を聞いたところ、半数以上が「カスタマーサクセスの概念がメンバーや社内に浸透したこと」をあげた。「ソフトウェアを導入し、有効活用できたこと」「会社がカスタマーサクセスへの予算を確保/拡大したこと」「カスタマーサクセスの取り組みを継続したこと」が続いた。
全社レベルの取り組みと、継続的な金銭的・時間的投資、また「テクノロジーの活用」が効果創出につながったと感じている人が多いことがわかった。
今回の調査結果から、バーチャレクス・コンサルティングは次のようにコメントした。
いわゆるカスタマーサポートの施策を行うことだけが成果につながったのではなく、カスタマーサクセスの原則を社員が共通認識として理解した上で仕組み化・指標化をはかったこと、まさに「アート」と「サイエンス」のかけ算がうまく機能したからこそというのがよくわかる。
2016年に米国で発表された「カスタマーサクセスの10原則」は、現在アップデートされ「新・カスタマーサクセスの10原則」とされているが、日本国内ではカスタマーサクセスに取り組んでいるものの、「基本のき」が行えていない企業がまだまだ多いなか、その基本原則を押さえていくことで少しずつ結果が出てきている。
効果を感じている層の多くはタッチモデルの構築やフェーズ分け運用、成果指標の設定などを行った上でテクノロジーツールを活用しているなど、「サイエンス」部分をしっかり固めた上で取り組みを行うことで業況的にも結果が出ている。まずは「原則」を見直してみることが成功への近道といえるだろう。
調査概要
- 調査タイトル:カスタマーサクセスに関する調査 2023年版第四弾
- 調査方法:インターネットアンケート
- 調査実施期間:2023年3月17日~2023年3月22日
- 対象地域:全国
- 対象者:20歳から 65歳の有職者(契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、個人事業主・フリーランス、専業主婦・主夫、家事手伝い、学生を除く)2万9237人