2050年、EC化率は39%に。小売業販売額の減少、実店舗の最適化、110億個を超える宅配便個数など小売市場の未来

みずほ銀行が2022年に公表した調査報告書「みずほ産業調査 Vol.70」で、「2050年の日本産業を考える~ありたき姿の実現に向けた構造転換と産業融合~」をテーマにさまざまな産業の変化をまとめている

瀧川 正実

2023年11月14日 8:00

2050年にEC化率は39%に達する――。みずほ銀行が日本産業の未来を予測した調査報告書は、購買のオンライン化をこう予測する。ECが日本で始まったとされるのが1995年。なだらかに上昇を続けたEC化率は2022年に9.13%まで拡大した。ようやく10%台が視野に入った現在までにかかった期間はおよそ27年。そして、現在から27年後の2050年。買い物のオンライン化は加速度的に進み、EC化率は約4割まで広がる。みずほ銀行の調査報告書から、変わる未来の小売市場を見ていく。

人口減少、人口動態の変化で加速するEC化

2050年に向かう過程で、食料品・日用品といった「非自発的な作業としての購買」は限りなく自動化され、買い物にかける時間は短くなる。

みずほ銀行がこう予測する購買行動によって、EC市場は加速度的に拡大する。

2020年で3.3%だった食品EC化率は、2030年に10%台へ突入。2050年には39.6%に達する。非食品EC化率も同様に急伸し、2050年には37.9%まで伸びると予測する。

2050年、EC化率は39%に。小売業販売額の減少、実店舗の最適化、110億個を超える宅配便個数など小売市場の未来 C化率の推移と今後の予測
EC化率の推移と今後の予測(画像はみずほ銀行の「みずほ産業調査 Vol.70」の資料から編集部がキャプチャ)

EC化が加速するのは人口減少、人口動態などの影響も大きい。消費の中心を担う15~64歳は2020年の7406万人から2050年には5275万人まで減少。一方、2050年の消費の担い手は全世代でデジタルに高い親和性を持つ世代に移る。そのため、消費は一気にデジタル化が進むと見ている。

2050年、EC化率は39%に。小売業販売額の減少、実店舗の最適化、110億個を超える宅配便個数など小売市場の未来 日本の年代別人口構成の変化
日本の年代別人口構成の変化(画像はみずほ銀行の「みずほ産業調査 Vol.70」の資料から編集部がキャプチャ)

なお、人口減少の影響で小売業販売額は2020年の120兆円弱から2050年には約100兆円まで目減りすると予測。また、EC化率の進行と同時に、実店舗面積の圧縮も進む。2050年には2020年比で約30%圧縮されるとみずほ銀行は見ている。

2050年、EC化率は39%に。小売業販売額の減少、実店舗の最適化、110億個を超える宅配便個数など小売市場の未来 小売業販売額の見通し
小売業販売額の見通し(画像はみずほ銀行の「みずほ産業調査 Vol.70」の資料から編集部がキャプチャ)

店舗の役割も多様化し、40~50%は来店前提、配送拠点・ダークストアは20~30%、その他のオンオフ融合型店舗は20%程度になるとしている。

2050年、EC化率は39%に。小売業販売額の減少、実店舗の最適化、110億個を超える宅配便個数など小売市場の未来 店舗・商業床面積の予測
店舗・商業床面積の予測(画像はみずほ銀行の「みずほ産業調査 Vol.70」の資料から編集部がキャプチャ)

宅配便取扱個数は2050年に110億個超え

EC市場の飛躍的な発展に伴い宅配便取扱個数も大きく増加する。国土交通省が発表した2022年度(2022年4月~2023年3月)の宅配便取扱個数は50億588万個。それが2050年には110億個を大きく超える。

2050年、EC化率は39%に。小売業販売額の減少、実店舗の最適化、110億個を超える宅配便個数など小売市場の未来 宅配便取扱個数の見通し
宅配便取扱個数の見通し(画像はみずほ銀行の「みずほ産業調査 Vol.70」の資料から編集部がキャプチャ)

2030年までの短中期的には物流需要が物流供給を上回り物流コストのインフレ影響が増大する一方、人手不足を解消するためのイノベーションの進展が加速。2030年以降、輸送・ラストワンマイル部分は宅配ロボットやドローン、自動運転などに置き換わると、みずほ銀行は予測している。

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