キヨハラサトル[執筆], 松鹿舎(奥田 晃介)[撮影] 7:30
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老舗下着メーカーのワコールは、公式通販サイト「WACOAL WEB STORE(ワコールウェブストア)」で新規会員の登録完了率が7%向上するなど、EC事業で成果をあげている。競争が激化しているアパレル・下着市場で、ワコールは決済サービスを切り口にECをブラッシュアップし、実績につなげてきた。商品本部・通信販売事業部のオウンドEC営業部長として自社ECの責任者を務める小池麻衣子氏に、効果をあげた戦略や取り組み、今後の事業展望を詳しく聞いた。

ワコール 商品本部・通信販売事業部のオウンドEC営業部長 小池麻衣子氏

2000店舗以上を販路に持つ老舗下着メーカー

老舗下着メーカーのワコールは女性向けインナーを中心に、男性向けインナー、アウターウェア、スポーツウェアブランドなど幅広い商品を展開している。そのため、ターゲット層は子供からシニアまで幅広い

女性向けインナーをメインに幅広い商品を展開
女性向けインナーをメインに幅広い商品を展開

EC事業には2000年頃から参入し、現在は、ECをベースとしたデジタルコミュニケーションの強化を顧客戦略の柱として掲げて、事業拡大を図っている。売上高全体に占めるECの規模は約2割。小池氏は「店舗とECをつなげて、お客さまになるべくシームレスな購買体験を提供できるように全社で取り組んでいます」と説明する。

ワコール 商品本部・通信販売事業部のオウンドEC営業部長 小池麻衣子氏
ワコール 商品本部・通信販売事業部のオウンドEC営業部長 小池麻衣子氏

ワコールは直営店約150店舗、百貨店や量販店などの卸店舗2000店舗以上の販路を持つ。リアルでの顧客とのタッチポイントを生かして、オンライン・オフラインの顧客情報の統合や、共通アプリの導入など、OMO戦略を推進している。

2022年には全社的な顧客情報の統合を実施し会員制度を刷新。全社共通のアプリを導入し、店頭の会員証も兼ねたシステムを構築した。これにより、顧客の購買行動がより可視化され、顧客理解が深化、コミュニケーションの確度が向上し、実店舗とECの両方を利用する顧客のLTV(顧客生涯価値)が高くなっているという。

「WACOAL WEB STORE」で扱うのはワコールの全商品。実店舗ではどうしても商品棚に限りがあるため、ECならではの豊富な商品ラインアップが強みだ。

ワコールの全商品を展開している「WACOAL WEB STORE」
ワコールの全商品を展開している「WACOAL WEB STORE」

自社ECの課題は「新規会員獲得アップ」「カゴ落ち防止」

課題解決のカギは会員登録フローの改善

「WACOAL WEB STORE」の立ち上げ当初は、実店舗運営側のスタッフから抵抗感を感じるような声もあったという。「卸中心にビジネス展開をしてきたこともあり、ネットと店舗の併用が当たり前ではなかったころは特に、社内で取り組みに賛同を得ることが難しいこともありました」と小池氏は振り返る。

徐々に社内の位置付けも変わり、現在では全ブランドを取り扱うまでに成長した。2023年10月にはサイトリニューアルを実施。UI・UXの改善や、多様な顧客層に対応するためのユニバーサルデザインの導入など、顧客体験の向上に現在も取り組んでいる。

しかし、「WACOAL WEB STORE」を運営するなかでいくつかの課題があった。その1つが新規顧客の獲得。市況により広告単価が上がるなかで、広告に頼らずに新たな顧客を増やしていく必要性に迫られていた。その大きな課題の1つが、新規訪問者の離脱やカゴ落ちを防ぐための、購入と会員登録のフロー改善だった。

新規にECサイトを訪れるお客さまのなかには、途中でサイトを離脱してしまうケースが見受けられました。それを改善するには、サイト内での個人情報の登録の手間や抵抗感を取り払うことが必要でした。(小池氏)

こうした課題認識のなかで改善に向けた対策として浮かび上がったのが、Amazonアカウントを使って買い物ができる決済サービス「Amazon Pay」の導入だった。

「Amazon Pay」導入3か月で新規会員の登録完了率が7%アップ、カゴ落ちが減りCV率向上

2024年3月末、ワコールは「WACOAL WEB STORE」に「Amazon Pay」を導入した。会員登録の際に生じる、個人情報の登録の手間や抵抗感を取り払うためには「Amazon Pay」が最適だと判断した。

ワコールは当初、新規購入者の購入ハードル低減を目的に、「WACOAL WEB STORE」におけるゲスト購入の実現を検討していた。しかし、購入後のアフターフォローなどの課題があり、ゲスト購入の動線構築は見送った。

目的に沿った別案として、個人情報の登録の手間や抵抗感を取り払うことができるサービスを検討した。それが「Amazon Pay」だった。

「Amazon Pay」はAmazonが提供している決済サービスという安心感に加え、他社でも導入事例が多くあり、「WACOAL WEB STORE」以外で使用経験のあるユーザーの方が多くいることが魅力でした。(小池氏)

ワコール 商品本部・通信販売事業部のオウンドEC営業部長 小池麻衣子氏

「Amazon Pay」の導入後、その成果はすぐに現れた。導入からおよそ3か月が経過した段階で、新規会員の登録完了率が通常導線に比べて20%高く、全体の登録完了率を7%押し上げた。さらには、新規ユーザーの売上高も2~3%増加した。

登録完了率の向上は、想定以上の効果でした。「Amazon Pay」を選択できることがお客さまの利便性向上につながっていると実感しています。(小池氏)

「WACOAL WEB STORE」の決済手段のうち「Amazon Pay」が占める割合は15~20%に達した。他の決済手段であるクレジットカード決済などから「Amazon Pay」の利用にシフトした顧客もいるが、「新規登録のハードルを下げる」という目的において「Amazon Pay」が効果を発揮したと見ている。

「Amazon Pay」を導入した目的は、単に決済手段を拡充するということではありません。お客さまの新規登録のハードルを下げることが大きな目的でした。この観点でも、狙い通りの成果が出ました。(小池氏)

「Amazon Pay」の導入によって「会員獲得」「カゴ落ちの低減」は見込んでいたが、新規ユーザーの登録率アップ効果は想定を上回ったという。

「Amazon Pay」導入によって購入や登録フローが短くシンプルになりサイト全体のUX改善、全体のコンバージョン率の向上、カゴ落ちの低減につながっています。「Amazon Pay」の導入により、確実に「WACOAL WEB STORE」の利便性が高くなりました。(小池氏)

Amazonそのものの認知度の高さも「WACOAL WEB STORE」での買い物を後押しした。Amazonが提供する決済という安心感・信頼感を醸成でき、初めて利用するECサイトの買い物で、購入者の不安感を減らすことにつながる。これにより、新規会員獲得にも寄与したと見ている。

事実、ワコールは他社の決済も導入していたものの、「新規登録のハードル」「新規訪問者の離脱やカゴ落ち」の改善は継続課題にあがっていた。「Amazon Pay」導入でなぜそれらが解決できたのか? 新規訪問者が商品を購入する場合、まずは新規登録をしてレジへ進む購入フローだが、「Amazon Pay」を使うことで住所登録など面倒な個人情報などの入力作業を省略することができ、数ステップで購入と会員登録が完了できるようになった。この利便性向上が、「新規登録のハードル」「新規訪問者の離脱やカゴ落ち」の改善につながっている。

新規訪問者はカゴ内で「Amazon Pay」を選択すれば、会員登録などの入力することなく、商品を購入できる
新規訪問者はカゴ内で「Amazon Pay」を選択すれば、会員登録などの入力することなく、商品を購入できる

4か月でサイトを大幅リニューアル

「WACOAL WEB STORE」における「Amazon Pay」の導入・実装のプロセスは、着手からローンチまで4か月弱。次の内容を実装した。

  1. 「Amazon Pay」と「WACOAL WEB STORE」のフロントシステムとのAPI連携
  2. 会員導線の新規作成(デザイン含む)

Amazon Pay側との連携テストや、請求先と配送先の個人情報の取り扱いを分けるなど、細部の調整も行った。「WACOAL WEB STORE」としては大規模な改修となった。「Amazonのサポートも手厚く、スムーズに進めることができました」(小池氏)

新規・既存顧客の購買ハードル引き下げに成功

「WACOAL WEB STORE」では「Amazon Pay」が新規顧客獲得と既存顧客の利便性向上の両軸で有効に働いているという。

「お客さまの利便性が上がっていることが、数字にも表れています」と小池氏。「Amazon Pay」を導入したことで顧客の購買障壁が下がり、新規顧客の獲得と既存顧客の利便性向上という2つの効果をもたらしたと小池氏は分析する。

ワコールのEC戦略は、単なる販路拡大にとどまらない。先述の通り、店舗とECの連携、顧客データの統合、決済手段の多様化など、顧客体験の向上を軸に据えた取り組みが進んでおり、オンライン販路とオフライン販路のシームレスな購買体験の実現をめざしている。

現時点で、顧客がWebで見て気になる商品の店舗取り寄せ施策を展開中。「新規登録のハードルを下げる」「新規訪問者の離脱やカゴ落ちの改善」を実現したワコールは、こうした買い物体験の向上に取り組むとしている。

店舗で実物の商品を試せるなどオンラインとオフラインのシームレスな顧客体験に力を入れている
店舗で実物の商品を試せるなどオンラインとオフラインのシームレスな顧客体験に力を入れている

「Amazon Pay」のマーケティング活用進む

ワコールではマーケティング面でも「Amazon Pay」を活用し始めている。たとえば「Amazon Pay」と連動したキャンペーンの実施があげられる。

2024年7月に実施した「Amazonプライム」会員限定セール「プライムデー」にあわせて実施した「Amazon Pay」のキャンペーン。「Amazon Pay」を使い自社ECサイトで決済したプライム会員にAmazonギフトカードをプレゼントする「Amazonギフトカード大還元祭」(「Amazon Pay」で1000円以上(税込)の決済を対象にプライム会員は最大10万円を抽選でプレゼントする)に、ワコールも参加した。

小池氏は「2024年7月に実施したキャンペーンでは、『WACOAL WEB STORE』内で『Amazon Pay』が利用できることの訴求を強化しました。現時点でポジティブな手応えを感じています」と説明。既存顧客も「Amazon Pay」を利用する傾向が見られ、全体の伸び率が期待できるという。ワコールでは今後も「Amazon Pay」を活用した施策や、利用の訴求を継続する計画だ。

こうした「Amazon Pay」のキャンペーン施策は、新規訪問客の増加、既存顧客の利用促進などにもつながると考えています。今後、Amazonのお客さまにも「Amazon Pay」を通じて「WACOAL WEB STORE」を利用いただき、今まで「WACOAL WEB STORE」と接点のなかった顧客とつながりを持てるようになることを期待しています。(小池氏)

ワコール 商品本部・通信販売事業部のオウンドEC営業部長 小池麻衣子氏

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