フェリシモの成功事例に学ぶヒットの秘訣。犬用おもちゃが見込み販売数の3倍を売り上げたワケとは?
フェリシモが1月23日から販売している、犬用おもちゃがヒット商品となっている。中華料理を模した玩具で、小型犬の好きな触感、音、動きにこだわったもの。「犬が中華料理を食べているみたいでかわいい」とSNSなどで話題となり、約1カ月で1万4000個の予約を受注。当初見込んでいた販売数の3倍となるなど、大きな反響を呼んでいる。
定期販売の犬用おもちゃがヒット
「わんこのための本格中華を好きなだけ、犬七番飯店の会」(月1個または1セット1100円)は、「パリパリ春巻き」「のび~るラーメン」「ひとくち小籠包」「大きな小えび天」「皮かためのシューマイ」「コロコロごま団子」「くせになる餃子」の全7種類。「転がす」「投げる」「引っ張り合う」「おやつを隠す」など、愛犬と飼い主が一緒に遊べるのが特徴。7つあるため、1週間毎日異なる玩具で遊べる。
購入者には、7種類のおもちゃを載せて、中華料理風の円卓を楽しめる「包むと餃子になる犬七番飯店の円卓マット」をプレゼントするという特典もある。

めざしたのは“愛犬のかわいい姿を引き出すおもちゃ”
商品を企画したのは、同社ビジネスプラットフォーム本部IT推進部WEBビジネスGの浅野莉彩氏。開発の背景には、愛犬とのエピソードがあるという。
「まだ小さくいたずらをするから、しつけが大変な時期で疲れてしまうこともある。そんなときに愛犬がおもちゃで遊んでいる姿を見たら、うれしそうな顔がかわいらしくて疲れも一遍に吹き飛んでしまう。私が一緒に遊ぶともっとうれしそうな顔をしてくれるので、『人間と犬との間でもコミュニケーションが大事なんだな』と気付いた」(浅野氏)。
ただ、浅野氏が既製のおもちゃに抱いた不満は「機能性重視で、見た目がかわいくないこと」。そこで、「犬のしつけやいたずらに悩んでいる飼い主にも、私と同じことを感じてもらうべく、愛犬のかわいい姿を引き出せるようなおもちゃを作りたいと考えた」(同)。中華料理風にしたのは「中華は円卓を家族で囲んでワイワイ食べるイメージ。 楽しそうな雰囲気を出したくて」という理由だ。また「両手でおもちゃを抑えて噛んでいる」愛犬の姿を見て、「これを食べ物にしたら面白いかも」という発想もあった。
春巻き風のおもちゃは、犬が両手で押さえて噛みやすい形とサイズ。皮の部分はパリパリとした音が鳴るのが特徴。

また、小籠包風のおもちゃは、レンゲ柄の靴下と、音が鳴る小籠包のセット。靴下の甲部分に面ファスナーで小籠包を取り付けられる。飼い主が靴下を履いて足を動かしたり、小籠包を取り外して投げて遊んだりできるというユニークな商品だ。

飼い主と一緒に遊べるなど、犬が好きな要素を取り入れて開発
浅野氏は「それぞれのおもちゃに犬が好きそうな要素を入れることを意識した」と話す。音も単に出るだけではなく、春巻きはパリパリと鳴るし、ごま団子は中の鈴が鳴って犬の好奇心が刺激される仕組みに。 遊び方についても、飼い主との引っ張り合いや投げて遊べるようにした。
また、ギョウザの間や皿のポケットにおやつを隠して、食べ物や匂いを探し当てて楽しめるおもちゃもあるなど、さまざまな工夫を施した。浅野氏の愛犬の場合、引っ張り合うおもちゃや投げるおもちゃなど、飼い主と一緒に遊ぶおもちゃが好きだったことから、既存のおもちゃを参考に、中華料理へと落とし込んだという。
ただ、開発には苦労した面もある。「メーカーとやり取りをする際には、イメージしていた音や色を伝えるのが大変だった」(同)。たとえば「えび天」の場合、当初はエビのフリー画像から色を転写してサンプルを作成したが、あまりにも「おいしくなさそう」なえび天ができあがったことから、赤の発色にはこだわった。

浅野氏の愛犬の反応も参考にしながらサンプルを何度も作成し、現在の商品が生まれた。ちなみに、浅野氏の愛犬が特に好きなのは、「ひとくち小籠包」だという。浅野氏は「今まで靴下型の犬用おもちゃは見たことがなかったが、私の犬が靴下好きということもあってアイデアが浮かんだ。実際に作ってみたら思った通りにはしゃいで遊んでくれた」と破顔する。
かわいらしさや躍動感をSNSでプロモーション
ヒット商品となっている、フェリシモが1月に発売した「わんこのための本格中華を好きなだけ、犬七番飯店の会」。同社のペットをテーマとした商品では、猫好きを対象とした「猫部」が有名だが、これは猫好きのための猫グッズが中心。同社がペット用おもちゃを販売するのは珍しい。
同社によると、8割の愛犬家がSNSでペット写真を投稿し、5個以上の犬用おもちゃを所持しているという外部の調査結果があるという。中華料理を模した特徴的なデザインに仕上げたことで「映える」のはもちろん、「犬が好きそうな要素を入れる」ことで「犬と飼い主が遊びやすい」、つまりコミュニケーションが取りやすいおもちゃとなったわけだ。
犬向け商品を開発するのは初めてということもあり、既存顧客以外へのアプローチで重要になってくるのは、やはりSNS。猫部担当者のアドバイスもあり「かわいらしさを感じられる写真を載せることに専念した」(クラスター本部特別企画販売Gの赤木圭史氏)ことが奏功。さらには、犬が楽しそうに遊んでいる姿やおもちゃと戯れる躍動感を見せるために、動画も活用した。
犬用おもちゃの平均を下回る値付けで販売
犬が口に入れる商品ということもあり、品質管理には細心の注意を払った。たとえば、噛んだときに面ファスナーで口内が傷つく恐れもあるので、角を丸めるといった工夫を施した。「乳幼児向け基準ほどではないが、安全性は十分担保することができた。とはいえ、犬によって習性はさまざまなので、フィードバックを参考に改善することでより安心安全な商品にしていきたい」(クラスター本部未来価値開発室の武智直久部長)。
値段については、主要仮想モールで売れている犬用おもちゃの価格を調査した。平均で約1500円だったことから、それ以下に収めることに腐心。1セット1100円という「ワンワン価格」になった。
発売後、SNSなどで大きな話題となった犬七番飯店の会。「第一声で『かわいい』という消費者が本当に多かった」(赤木氏)。常にかわいらしいだけではなく、本物の中華料理そっくりに仕上げたことで消費者の興味関心を引き、さらに「『実際に犬に遊ばせてみたら本当に食いつきがいい』というコメントが目立った」(同)。
新規顧客の反応が上々。販売は好調
約1か月で1万4000個の予約を受注、当初見込んでいた販売数の3倍となった。赤木氏は「想定外の売れ行き。特に、既存顧客ではなく、外部顧客の反応が非常に良かった」と顔をほころばせる。特に、同社公式Xを経由して購入する人が多いほか、2月に投稿した動画の反応も非常に良いという。
ランダムに届く定期便は「SNS向き」
ただ、犬七番飯店は同社の特徴的な売り方である「コレクション(定期便)商品」。つまり、欲しいアイテムを選んで買えるわけではなく、1か月ごとにランダムで商品が届き、7カ月間で全7アイテムを揃えるというスタイルだ。
つまり、同社商品のファン以外にはあまりなじみのない売り方といえる。武智部長は「新規顧客がどんな反応をするのかは未知数で、正直なところハードルが高いと思っていた。ただ、新規にとっては障壁となりかねない『7カ月』があっても、関心を持ってくれる消費者が非常に多いというのは、嬉しい誤算」とし、さらに「『何が届くかわからない』というのは、届いたアイテムの感想を投稿できるということで、SNS向きということなのかもしれない」と分析する。
中型・大型犬向けや、おもちゃ以外の商品展開も検討
思わぬヒットとなったフェリシモの犬用おもちゃ。今後の展開について、武智部長は「おもちゃだけではなく、食べ物や衛生用品、散歩用グッズなど、犬向け商品という切り口ならさまざまな商品が考えられる。また、今回のおもちゃは小型犬向けだが、中型犬や大型犬もいるので、そういった犬が対象の商品も考えたい」と話す。
まず、犬七番飯店購入者への定期便が完了した段階で、アンケートを行って犬向け商品の需要を探っていく。さらに武智部長は「これまで犬に特化した商品を作っていなかったのに、たくさんの新規顧客に反応してもらえた。犬七番飯店がゴールではなく、顧客の需要を踏まえながら面を拡大し、猫部に『噛みつく』くらい成長できれば」と笑う。
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