中林慎太郎[執筆] 8:00

ブランディングという呪文を日々ただ唱えているだけの皆様、こんにちは。“ブランディングをしよう”というワードは、デジタルマーケティングの世界でよく聞きますね。ここでいう“ふんわり”した「ブランドとは何か」も定まっていない状態で、ブランディングを呪文の様に唱えていませんか? この「ブランドとは何か」も含めて、この記事を通して考えてほしいと思っています。

ブランディング=お客の「頭の中」というレイヤーに、自社の価値観や世界観をインストールできている

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お客様の「頭の中」というレイヤーに、自社の価値観や世界観をインストールできている。つまりマインドシェアを獲得できているコンテンツや事業者は、その下にいるプレイヤーやプラットフォーマーの支配を受けないのだと考えました。

これはメーカー、流通業、小売業、ECショップと、ビジネスをするすべての事業者さんに考えてもらいたいことですよね。

3か月に1回リピートされる商材、数年に1回の購入タイミングの商材など、お客さまの購買頻度や継続期間によっても考え方は変わりますが、買うタイミングで思い出してもらう、まさに「マインドシェア」をしっかりと獲得し、記憶の片隅においてもらうには何をしたらいいのか――ということを考えるのが、私も重要だと考えています。

SNS、メールマガジン、YouTube、検索などさまざまなタッチポイントがあります。もちろん、デザインなどがトリガーになったりもします。この記事ではもう少し大きな枠で「マインドシェア」について触れていますが、まさにこういうことをしっかりと考えて、設計し、日々のサイト運用をしていくことの重要性がまとめられています。

ある本を読んでいたときに、「ブランディング」ではなく「ブランデッド」という言葉が紹介されていました。私は本当にその通りだと思ったんです。

私の読み取り方としては、ブランディングってブランドを“作ろう”とする形ではなくて、結果的にブランド化されるようなエピソードの地層ができているのである、ということだと思うんですよ。

自分たちのリソースや予算で賄える範囲で、コツコツと「過去を作っていく」ことを大事にしています。私はそれを「過去に投資する」と呼んでいます。未来には投資できても過去には戻れませんから。

私が敬愛する一橋ビジネススクールの楠木建教授が執筆した記事『ブランディングよりブランデッド-その2 ブランドは忘れた頃にやってくる。』を思い出しました。この記事内に出てくる文章“受動態で「ブランデッド」というのが、正しいブランドの理解だと考えています”が、青木社長が訴えることですよね。

前職(著名な洋菓子店EC責任者)の時、「CHANELがブランドを作ろうとして作ったのか」と考えたことがありました。CHANELは女性が社会的な制約から解放され、自らの人生を自由に歩むための服を提案するメーカーであり、信頼と信用と共感と時を経てブランドになったことを学びました。

私は「ブランド」になりたいのであれば、「メーカー」にまずなるべきだと考えています。青木社長の言葉を借りるのであれば、「メーカーになった一部のエピソードホルダー達(地層保有者)が、ブランドとして世の中に憧れと安心を提供できる」のだと思っているからです。

そうなるためには、しっかりとした基礎・基盤も必要ですが、過去から日々積み上げてきたものが安心・安全、すなわち消費者からの信頼や信用となり、ブランド化していく――と考えています。その情報を伝えるための手段として、過去をしっかりと掘り起こし、しっかりとコンテンツとして形成することが重要です。

私はデジタルマーケティングの世界で使われる「ブランディング」が嫌いでした。その理由は“ふんわり”しているから。そして誰もが「近い未来でブランドになろう、なれる」と思っているから。この記事では「ブランディング」がめちゃくちゃ言語化されており、共感しまくりの内容でした。今回この記事を選んだ理由がまさにここにあります。

やはり余力がないと、すべての取り組みが「必達」になっちゃうんですよ、成功しないと困るってなっちゃうんですよね。でも僕らの場合ほとんどのことはいったらラッキー、うまく行かなかったらそれはしょうがないよねと思ってやってるから。

そして、もう1つ重要なポイントだと感じたのが「余力」です。過去に同業者の先輩から「しんちゃん、最近どう? 俺は暇だわ~。いつもネットサーフィンしてるよ」と会う度に言っていたのですが、私の実施した施策を細かく把握しているんです。「こういう施策を打ったよね」と指摘してくるんです。

その先輩に対して、普段何をしてるんだろう? と思っていましたが、まさにこの「余力」があったから、私が在籍していた会社のことをベンチマークし、把握していたのだと気付きました。周りがどのように動き、現状がどのようになっているのか、それらを把握した上で自分達が何をするのかを決める――これは「余力」がないとできません。

さらに、この「余力」がなければ新しいこともできません。なぜなら、新たな取り組みをそもそも実行する時間がないから。心と時間の余裕がなければ、今の売り上げをどう伸ばせばいいのかだけに集中してしまいます。

そのため、「売り上げが伸びている時こそ、余裕をもってふんぞり返るのではなく、何か新しい挑戦をしたり、新しい施策を打ったりしてほしい」と思っています。順調な時こそ、次の何かをするチャンスです。そしてそのチャンスが訪れた時に、既に準備をしているかどうか。日々、次のTryを考えておくことも重要です。それが次の過去を作る為の、地層の礎となっていくと思っています。

◇◇◇

今回もECとは直接関係のないお話をピックアップしてしまったかもしれませんが、この枠の中で重要なことをお伝えするのが、私の使命だとおもっています。

読者の皆さんが勤めている企業の成長フェーズや規模感があるでしょう。でも、会社規模が違うから、フェーズが異なるから自分達とは違う――と考えないでください。しっかり、自分自身のフィルターを通して考える癖を付けましょう。そうすると、さまざまな記事が皆さんの身となり肉となるはずです。

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決済だけで取引が増加するのは当たり前だと思っていますが、ベンダーに依存している部分ではあるので何ともなところ。今後、対応スピードを含めカートを選ぶ時にもポイントになりますね。

不適切点呼で軽貨物車も処分へ、物流に影響か 国交省が日本郵便に | 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/AST923CM8T92UTIL01DM.html

また処分が出てしまいましたね。今後配送面にどう影響が出てくるのか心配ではあります。前回の飲酒に引き続きのスキャンダル。大手配送キャリアの1/3が止まってしまうとECとしては大きな問題になるので、しっかりして欲しいですね。

2024年BtoC-EC市場は26.1兆円に拡大も成長率は9.2%から5.1%に鈍化!EC関連ニュースまとめ【2025年8月】 | CommercePick
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2025年1-3月期の実質GDP(国内総生産)は前期比が-0.2%、2025年4-6月期の実質GDPは前期比2.2%。日本全体のGDPは大きく成長していないので、今のところはそこまで危惧する事もないのかもしれませんね。

Yahoo!ショッピングの広告運用が「コマースアドマネージャー」に統合。これからの広告戦略はどう変わる? | プロテーナム
https://proteinum.co.jp/blog/yahoo-commerce-ads/

多少の動きの変化はあるものの、まだ始まったばかりで結果がちゃんと出てきてはいません。個人的にはリアルタイムの動きが見られなくなったのでちょっと不満ですが、それ以外は期待しています。

ヤマト運輸/ネコポス「厚さ3cmまで」にサイズ拡大、置き配にも対応 | 物流ニュースのLNEWS
https://www.lnews.jp/2025/08/r0827603.html

これは常温で出荷する商品を扱うショップさんに朗報ですね。ジャンル問わずうれしい話になりそうですね。今年は色々ありましたが、やっとうれしいニュースですかね。

ShopifyにGoogle・Facebookのソーシャルログインが搭載 | コマースメディア
https://commerce-media.info/blogs/ec/social-login

まったく進まない日本のソーシャルログインですが、これは「SHOPLINE」の影響かな。ユーザーとしては競争のない市場はコスパが悪くなるので、そう意味でもっとユーザビリティ関連の機能は進むといいですね。

今週の唸った・刺さった・二度見した

自分の人生自分でやって|ちゃんみな - WORK HARD | THE FIRST TAKE
https://youtu.be/vALHX3c7aqc?si=0iLG85c01CqZXBWC

甘くないよ人生は
目を覚ましなよnow
何きたいしてんのhow
自分の人生自分でやって

ちゃんみなさんの「WORK HARD」という曲の歌詞です。これを題材にするかどうか迷いました。なぜなら、書き過ぎると私がハラスメントを指摘され、バッシングされ、炎上するかもしれない……と。

結論だけ言います。基本的に、世の中が成り立っているのは、いろいろな物事が等価交換だと思っています。これを聞いて、自分自身を鼓舞する為の応援歌になるよう、皆さんのマインドをセットするきっかけになればいいな、とこの曲を選びました。この曲を聞きながら最後はお別れしたいと思います。今月も最後までご拝読ありがとうございます。また、来月!

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