通販新聞 2015/6/30 9:00

2015年の上半期も通販業界では大きな動きがあった。企業買収や提携案件をはじめ、配送周りでは新サービスが相次いで登場。法改正では4月に「機能性表示食品」制度が始まり、今後の健食通販の市場活性化に大きな期待が寄せられている。その一方で広告手法を巡ったトラブルもいくつか見られるなど、法改正の動きが進む中で通販業界を監視する目が一層厳しくなっていることも伺えた。この半年間に起きた通販業界の主な出来事を振り返ってみる。

今上半期も買収や提携が話題に

2015年上半期に起きた主な通販・EC業界の出来事

今年上半期も企業の買収・業務提携関連の話題があった。中でも関心が高かったのが、健康コーポレーションによる夢展望の買収だ。夢展望が実施した第三者割当増資の約7億4800万円を健康コーポレーションが引き受けたものだが、上場からわずか1年半で債務超過の危機に陥った夢展望の転落劇には業界内外から驚きの声が上がっていた

また、総合通販の千趣会も活発な動きを見せている。3月に子会社の主婦の友ダイレクト雪印メグミルクが出資する形で提携し、機能性食品通販の強化に着手した。翌4月にはJフロントリテイリングと資本業務提携を結び、千趣会がJフロントリテイリングの持ち分法適用関連会社となって、今後はリアル店舗と連携したオムニチャネル戦略の推進や商品の共同展開などを進めていくという。

Jフロントリテイリングの山本良一社長と千趣会の田邉道夫社長
Jフロントリテイリングの山本良一社長(右)と千趣会の田邉道夫社長

そのほか通販企業の新体制発足や新たな取り組みとしては、1月にジャパネットたかたで創業者の高田明氏からバトンを受けた高田旭人氏が新社長に就任。組織体制も大幅に刷新して新体制の初年度を走り出している。4月には携帯電話のアクセサリーなどを販売するHameeが東証マザーズに新規上場。やずやではシニア世代向けの新規事業として、シニアマーケットの調査研究を行う「総研事業」と50代以上の女性向け雑誌を発行する「出版事業」を開始している。昨今注目されている越境ECの分野では、6月に中国ネット販売大手の京東集団(ジンドン)が越境仮想モール内に日本専門サイトを開設。爽快ドラッグなど日本企業300社が出店した。

広告手法を巡り適格団体と衝突

健食通販業界にとっては今後の市場動向を左右する注目の新制度がスタートした。4月に始まった「機能性表示食品」制度は企業自らが「機能表示」をできる制度で、6月には当該商品の販売が始まっている。消費者庁によると開始以来200件の書類提出があり、6月19日の時点で37件に届け出番号を付与。「目」「関節」「肌」といった、これまではできなかった身体の部位にまで言及した商品が登場した。新制度下で生まれた表現が新たな商品訴求につながり、今後の健食市場の拡大につながるという見方は多いようだ。

規制改革で前向きな話題があった一方、依然として健食広告での法令違反が後を絶たない。2月にはライフサポート、5月には全日本通販がそれぞれダイエット健食の広告で景品表示法の優良誤認に当たるとして措置命令を受けている。「機能性表示食品」制度の運用と並行するように、消費者庁で健食の“表示根拠”に対する監視を強めていることが伺えた

また、今年は適格消費者団体の通販企業に対する見方も厳しくなっている。5月に健康コーポレーショングループのRIZAP(ライザップ)が行う「全額返金保証」の広告に対して、適格消費者団体が景品表示法の有利誤認に当たるとして広告の削除を要請。指摘を受けたライザップ側はその後、返金に際しての承認規定を撤廃し、いかなる理由でも返金する内容に変更している。さらに1月にはサン・クロレラ販売の広告手法を巡り京都地裁が景品表示法に違反するとして適格消費者団体の差し止め請求を認めるなど、商品広告の在り方に一石を投じた一幕もあった。いずれにしても広告表現の問題は日に日に注目度が高まっており、事業者にとってはこれまで以上に細心の注意を払うことが必要になるだろう。

広告以外に通販業界で起きた問題といえば、仮想モールと出店者とのトラブルがあった。3月には「楽天市場」内の出店店舗の評価を不正に上げる“やらせ”レビューを行っていたとして、楽天が大阪市のECマーケティング会社を提訴。「ヤフー!ショッピング」では、「家電専門店まいど」を運営するディーケイシーがポイントを不正に取得していたことが判明。その後ディーケイシーは各モールの店舗を閉鎖し、4月に自己破産を申請している。

メール便廃止で新サービス登場

物流関連でも大きな動きが見られた。カタログやパンフレットなど小型商品の発送で通販企業からも需要の高かったヤマト運輸の「クロネコメール便」が“信書リスク”を理由に3月末で廃止。4月からは専用ボックスを使った「宅急便コンパクト」や郵便受け投函型の「ネコポス」などを開始し、小型荷物への対応を図っている。一方、SGホールディングスでは6月にローソンとの業務提携を実施。共同事業会社の「SGローソン」を立ち上げて、ローソン店舗を起点とした小商圏での宅配便配送やコンビニ店頭商品受注などの御用聞きサービスを開始するという。

また、ヨドバシカメラでは商品注文から約6時間後に配送するサービスを都内で始めたほか、楽天日本郵便と連携して都内の郵便局などに「楽天市場」の購入商品が受け取れる専用ロッカーを開設。楽天独自でも全国50カ所に同様のロッカーを設けるなど、配送周りでの利便性拡充は今年度も各社の重要テーマとして位置付けられている印象だ。

今後の動向が注目されている案件としては、3月に改正に向けて検討が始まった特定商取引法があり、通販企業にとって欠かせない販促活動のアウトバウンドに規制がかかることなどが懸念されている。また、昨年起きた大規模な個人情報流出問題を背景に、個人情報保護法の改正に向けた動きもすでに進み始めている。結論が出るのはまだ先となるが下半期以降も気になる話題が目白押しとなっている。

 

「通販新聞」掲載のオリジナル版はこちら:
【上半期の通販業界を振り返る】 新表示制度に期待の声、広告表現の"監視"強まる(2015/06/25)

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