通販新聞 2015/9/11 8:00

自社が持つ顧客以外にアプローチする手段として大きな成果を挙げているのが企業間のコラボレーション。近年は商品の共同開発だけにとどまらず、販促キャンペーンの一つとしても他社の売り場やキャラクターとコラボを行う事例が見られるようになった。思い切った異業種企業との交流で、既存の通販事業だけではリーチできなかった客層を取り込めた事例も多いようだ。業界の垣根を越えて交わった両社が見せる新しい“化学反応”の形を探った。

タカラトミー 「大人リカちゃん」ルミネを“占拠”

通販と他の異業種企業が組むことによって生まれる“化学反応”で成果をあげる企業の事例①
館内では等身大パネルや広告などを展開

玩具メーカーのタカラトミーでは他社のリアル売り場とタイアップした販促キャンペーンを行い、大きな成果を挙げている。同社では「リカちゃん」の通販限定ブランドとして「LiccA(リカ、税抜価格1万円)」を6月に発売。従来の女児向けではなくファッション性を重視した大人向けの商品切り口であることから、若年女性客の多い「ルミネ池袋店」と期間限定のコラボ企画を展開した。

同商品は新規型ボディの「スタイリッシュボディ」を採用。背中のくびれや足、腕の関節などで人間らしいボディラインを再現し、ヘアスタイルやメイク、ファッション、小物など最新のトレンドを踏まえた大人向けのスタイリッシュなデザインを特徴としている。

通販と他の異業種企業が組むことによって生まれる“化学反応”で成果をあげる企業の事例②
ルミネ池袋店とコラボした「LiccA」

今回の販促イベントは通販サイトで商品予約の受け付けを開始した6月から8月まで行い、ルミネ池袋内にLiccAが館内で買い物をしている様子を再現した等身大パネルやディスプレイを各所に展示。パネルには二次元バーコードを貼付して、通販サイトへ誘導したほかオリジナル壁紙がダウンロードできるようにもした。そのほかにもリカちゃんの声による館内放送を行ったほか、館内のカフェとコラボした「LiccA CAFE」もオープン。店内をLiccAの写真やコーディネートした商品で装飾し、特別限定メニューも提供した。

「ルミネは20代女性が洋服を買いに来るということで、スタイリッシュなLiccAと店の構成が合うのではと感じた」(同社)と今回の経緯を説明。ターゲットの属性を考慮し、最適なタッチポイントとしてファッションテナントビルを使ってアピールを図ったという。

通販と他の異業種企業が組むことによって生まれる“化学反応”で成果をあげる企業の事例③
コラボカフェの店内は商品や写真で装飾

公式ツイッターの開始が契機に

リカちゃん人形は長年、子供向け商品としてのイメージが強かったが、1年前に公式ツイッターを開始してからは20~30代の女性を中心にフォロワーが集まり始め、大人の消費者にも再認識してもらえるようになったという。「あまり宣伝色を付けずにファッショナブルなコメントや画像など1日2件ほどのペースでつぶやき続けたところ、複数のサイトでリカちゃんの『女子力』が話題になっていった」(同)とする。結果的に1年間でフォロワー数が5万7000人まで拡大した。

今回のLiccAは3月にツイッター上で人気投票を行った人気のデザインに、ユーザーから寄せられた声を反映させて商品化したもの。ツイッター発の商品企画でもあることからフォロワーも含めて予約販売を受け付けたところ、初回生産分の1000体はすぐに完売。「ルミネとの販促キャンペーンが始まってからは、更に予約数の山ができた。結果的に追加生産も行って合計2000体を受注できた」(同)とした。

同社のタイアップ企画は今回のルミネ池袋店以外でも実施しており、紙媒体では女性向けファッション雑誌の「装苑」とコラボレーションしてアートディレクターの吉田ユニ氏が手がけるLiccAのビジュアルを8月号に掲載した。また、リカちゃん公式ツイッターのこれまでのツイートを厳選して、リカちゃんのライフスタイルなどもまとめた書籍も宝島社から発売している。

自分達だけの情報発信では消費者に伝わりきれない側面もある。リアルの現場や他社のウェブなども通じてうまく掛け合い、互いに送客していくような取り組みが必要だと思う」(同)とした。

オークローンマーケティング “スター”作り、フィットネス業界盛り上げる

通販と他の異業種企業が組むことによって生まれる“化学反応”で成果をあげる企業の事例④

テレビ通販大手のオークローンマーケティング(OLM)は「芸能事務所」とコラボレーションし、フィットネス業界を盛り上げる“スター”の発掘・育成に取り組むという一風変わった試みを行っている

同社では現在、芸能事務所のエイベックス・マネジメントとの共同プロジェクト「フィットネススタープロジェクト」を立ち上げ、推進している。同プロジェクトはオーディションで鍛え上げられた肉体を持つ“筋肉男子”の中から将来性のあるスター人材を選抜・育成して、フィットネス業界を中心に活動を行ってもらうことで業界を盛り上げる取り組みだという。OLM側の狙いとしては「幅広い層に“フィットネスプログラム”を親しんでもらうためのきっかけ作り」なのだという。

OLMとエクササイズ業界の関係は深い。大ヒットした「ビリーズブートキャンプ」をはじめとするエクササイズDVDの販売のほか、近年ではスポーツジム向けに「フィットネスプログラム」の提供を行う新たなビジネスを展開しており、一定の成果を上げているが、同社によるとフィットネスには“ある傾向”があり、それが1つの課題になっているようだ。その傾向とは“利用者層の偏り”だ。

スポーツジムのフィットネスプログラムで汗を流す人の中心は中高年層で、若い層は多くないのが現状のようだ。「若い層は最近ではランニングもしくはヨガを行うことが多く、フィットネスプログラムには少し関心が薄いよう。何とかこうした若い層を含め、幅広い層に関心を持ってもらえるようにしたい」(同社)ということから、芸能事務所と共同で今回のプロジェクトをスタートしたという。

現在、「フィットネススタープロジェクト」の進捗および成果としては、オーディションの最終選考まで残った8人が自慢の肉体を披露する数分間のミニ番組「THE BODY」を8月28日から衛星放送のFOXチャンネルで放送を開始したほか、オーディションの最終選考者の中から、SHU‐TO、KO‐TA、LA‐SONの3人をメンバーとしたユニット「VO2MAX(ヴィオツーマックス)」を結成。7月末に開催したスポーツ関連商材の展示会「SPORTEC」のOLMのブースで対外的に初披露(画像)した後、スポーツ関連イベントへ参加するなどの活動をすでに始めており、直近では9月12日に東京・台場で開催されるOLMが協賛する女性向けランニング大会「RunGirl★Night Vol.6~RUNderful LIFE!~」(主催・ランガール、東京臨海副都心グループ)にも「VO2MAX」が参加する。

同イベントではOLMが販売するEMS商品「スレンダートーンビューティー」などを展示したり、試用することができる専用ブースなどを設けるほか、同社が今年4月からスポーツジム向けに提供を始めたアルファベットや数字を描くステップをベースとし、ダンス初心者でも簡単に振りを真似ることができるフィットネスプログラム「BOKWA(ボクワ)」をランニング前のウォーミングアップとして、同イベントの参加ランナーに体験してもらう「BOKWA体験会」を実施するが、「ボクワ」のインストラクターの資格を持つ「VO2MAX」のメンバーなどがランナーと一緒に参加して、体験会を盛り上げる。

「まだ動き始めたばかりで先のことはこれから。具体的に決まっていることはない」(同社)とするが、今後、同プロジェクトから輩出される“人材”や「VO2MAX」のようなユニットの活動などにOLMも協力して、知名度を高め、フィットネス業界を盛り上げる施策を展開していきたい考えのようだ。その上でオリジナルのフィットネスプログラムの開発や新規ユーザーの獲得施策などにもつなげていきたい狙いもあるようだ。

ピーチ・ジョン 音楽フェスとコラボ商品

通販と他の異業種企業が組むことによって生まれる“化学反応”で成果をあげる企業の事例⑤
イベントのロゴがファッションのポイント

ピーチ・ジョンでは音楽フェスティバルとコラボした商品を展開中だ。音楽フェスの公式ロゴなどをあしらいつつ、トップスとしても着用できる素材やデザインを採用したファッション性の高い下着を企画。同フェスのオフィシャル企業として出店するブースで販売するものだ。音楽フェス自体は9月中旬の開催だが、8月7日から先行販売する同社通販サイトではすでに“売り切れ”となる商品も出ているなど、反響は上々のようだ。

同社では9月19日から3日間開催される音楽フェスティバル「ULTRA JAPAN」とのコラボ商品として、「レーシィブラトップ」(税抜価格3241円)と「スリーラインチューブ」(同2778円)を企画した。同商品とも下着でありながら、トップスとしても着用できる素材やデザインを採用。また、ハイウエストボトムスなどのトレンドアイテムとのコーディネートや、背中を見せるファッションを楽しむことができるファッション性の高い商品となる。「昨今、ブラをファッションアイテムの1つとしてわざと見せるスタイルがトレンドになっていることを踏まえた」(同社)という。なお、両商品とも“コラボ感”を出すことを狙い、「ULTRA JAPAN」の“公式ロゴ”を、アイテムに付属する取り外し可能なリボンチャームやスリーラインのゴムベルト部分にそれぞれ記載。ロゴをアクセントに音楽イベントを楽しめるデザインとしているという。

ピーチ・ジョンではコラボ商品の販売のピークは当然、フェス期間中を想定しているが、ただ、開催前にも関わらず、先行販売する自社通販サイトではすでに完売になっている商品もあり、好評のようだ。コラボ商品で音楽やファッションを好む若者への認知度を高め、新規層獲得を狙う

「通販新聞」掲載のオリジナル版はこちら:
"異業種コラボ"で広がる客層(2015/09/10)

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