中川 昌俊 2014/6/20 12:00

通販で購入した際、代金を商品が届いた後にコンビニや銀行で支払うことができる「後払い決済サービス」を提供する事業者が増えている。近年は大手企業の参入が相次ぎサービスが多様化。後払い決済の認知度や信頼感が高まり、消費者の利用も増えることが予測される。また、後払い決済の消費者ニーズの高まりに合わせて導入するEC事業者もさらに増える可能性が高い。市場拡大が見込まれる後払い決済サービスを提供する各社の現状や、今後の戦略などを聞いた。

 

市場を作ってきたネットプロテクションズが成長を続ける一方、20128月に通販大手のニッセンが参入。昨年8月から決済代行大手のGMOペイメントゲートウェイが子会社を通じてサービスの提供を始めている。通販大手のスクロールも通販支援子会社のスクロール360を通じ、「後払いドットコム」という後払い決済サービスを提供するキャッチボールを買収、後払い決済サービスに参入した。今年4月には、クレジット決済大手のジャックスが参入。さらに、10月からはヤマトグループで金融事業を手がけるヤマトクレジットファイナンスも後払い決済サービスを始める予定だ。

新規顧客獲得に有効

未回収リスク保証型の後払い決済サービスの基本的なスキームは、サービス提供事業者が通販事業者に購入者の商品購入代金を立て替え払いした上で、購入者に商品が届いたのちに請求を発送、顧客はコンビニや銀行などで代金を支払うというもの。そのため、通販事業者は商品代金をとりはぐれることがなく、未回収代金の督促といった作業も必要なくなる点が特徴だ。

後払い決済にはどのようなメリットがあるのか。まず、消費者の視点から見てみると、注文した商品を確認してから代金の支払いができることが挙げられる。例えば、今で使ったことがないECサイトで商品を購入する際、消費者は注文した商品が届くのか不安を持つケースがある。後払い決済があれば、商品が届いた後、代金を支払ことができるので、安心して商品を注文できるわけだ。

つまり、通販事業者から見れば新規顧客の獲得ツールにもなると言える。ネットプロテクションズが行った消費者調査でも、初めて訪れるネットショップで商品を購入する際、最も利用したい支払い方法として、67%が後払いを選択。クレジットカードを選んだ消費者の8.3倍となっているという。

初めて訪れるネットショップで希望される決済比率(ネットプロテクションズ調べ)

代金振り込みサイクルも自由に選定可能

通販事業者のメリットは債権の未回収リスクがないこと。自社で後払い決済を提供すると、きちんと代金を支払う顧客なのかという見極めが難しく、代金を支払わない顧客に対しては督促を行うなど販売とは別の人的リソースが必要となる。クレジットカード決済でも、チャージバックなどが発生すれば、EC事業者は購入代金を回収することができない。その点、未回収リスク保証型の後払い決済サービスを利用すれば、こうした未回収がなくなる。

代金の振込みサイクルが比較的自由に決めることができるのも後払いサービスの強み。サービス提供者は立て替え払いを行うことを前提にしているため、いつ通販事業者に代金を振り込んでも影響は少ないためだ。後払い決済は少しでも早く代金を回収したい通販事業者にとっては、利用しやすい決済サービスといえる

競合増加で新たなサービス開発に

競合が増えることで、さらに市場の拡大が見込まれる。大手企業の参入増加することで、消費者への認知度が高まるとともに、後払いサービスを利用する消費者も増えると考えられる。また、サービス提供事業者間の競争が行われることで、EC事業者にとってさらに使いやすい料金で提供されたり、新たな機能が追加されるなど、さらに使いやすいサービスに発展する可能性もある。そうなれば、導入するEC事業者も拡大するだろう。

すでに新たな機能が生まれ始めている。GMOペイメントサービスやニッセンが提供しているリアルタイム与信は、通常10分ほどかかっていた与信をその場で行うというもの。スムーズな取引ができるとして、取引量が多い大手ECサイトに人気の機能だ。

ネットプロテクションズは会員向けのポイントサービスを始めた。ポイントは後払い決済を選ぶ要因になるほか、EC事業者にとって集客サービスとして活用可能。新たなサービスとして期待されている。

さらに、スマートフォンEC市場の拡大が追い風となる。スマホでカード情報を登録するのは手間がかかり、セキュリティ面からもユーザーの不安は大きい。そのため、スマホECと後払い決済は相性は良い。実際、決済各社ではスマホECの取引額の伸び率は、市場の伸び率よりも高いようで、スマホと後払い決済の相性の良さを実証している。

今回、後払い決済を提供する5社に取材を行い、各社のサービスの強みや今後の展開を聞いた。サービスの概要についてアンケートを実施し、以下にまとめた(2014年6月20日時点)。

後払い決済機能比較表
社名	株式会社キャッチボール	GMOペイメントサービス
株式会社	ジャックス・ペイメント・
ソリューションズ株式会社	株式会社ニッセン	株式会社
ネットプロテクションズ
サービス名	後払い.com	GMO後払い	ATODENE(アトディーネ)	ニッセンコレクト@払い	NP後払い
導入費用	なし	なし	なし	なし	なし
1購入あたりの
決済上限額	なし	54,000円(税込)	54,000円(税込)	54,000円(税込)※1	50,000円(税抜)
請求書発行費用
(1通あたり/税別/同梱時と別送時が
違う場合はそれぞれ)	別送:160円
同梱:85円	別送:はがきタイプ 140円、封書タイプ 180円
同梱:89円	別送:150円(非課税)
同梱:未定	別送:143円
同梱:83円	別送:1取引ごとに190円(税込205円)※2
同梱:97円(税込、収納費92円+印字用紙代5円)
通販事業者への
入金手数料(1振込あたり/税別)	ジャパンネット銀行:3万未満140円、3万以上300円
その他の金融機関:3万未満400円、3万以上600円	ジャパンネット銀行:50円
その他の金融機関:3万未満160円、3万以上250円	三菱東京UFJ銀行:3万未満150円、3万以上300円
その他の金融機関:3万未満400円、3万以上500円	りそな:150円
他銀行:350円	100円~700円
導入までの平均期間	当日~7営業日前後	お申し込みから1週間程度	2週間	平均10日	10営業日
契約期間	なし	なし(1か月以上)	1年以上	自動継続	なし
ユーザーの
支払い可能期間	請求書発行から14日後まで	請求書発行から14日間	請求書発行日から2週間以内	請求書発行日から14日以内	請求書発行日から14日以内
代金振込みサイクル
(複数ある場合はすべて)	毎週(金曜日締め、翌週金曜日払い)、月2(15日・月末締め、翌週金曜日払い)、月1(月末締め、翌月15日払い)	毎週(金曜締・翌金曜払)、月2回、月1回(月末締・翌月末払)	月3回、月2回、月1回	毎週、月2回、月1回	毎週、月2回、月1回
月間振込回数の
変更の可否	○	○	○	○	○
リアルタイム
与信の可否	○	○	構築中
(7月開始予定)	スマート接続プラスの利用で可能(加盟店様側でのシステム改修で導入可能)	×
システム自動連携
サービスの提供の
有無	○	○	構築中	スマート接続プラスの利用で可能(加盟店側でのシステム改修で導入可能)	○※3
すでに自動連携
しているシステム数	5システム	10システム	─	なし
(他社システムとはcsv連携)	10システム
すでに自動連携している主なシステムの名称(3つまで)
カラーミーショップ
おちゃのこネット
喜信堂ネットリンク	EC-CUBE
えびすマート
おちゃのこネット	─	─	COMPANY ECシリーズ
ネクストエンジン
たまごリピート
請求書同梱の可否	○	○	構築中	○	○
請求書のタイプ	圧着はがき	封書、圧着はがき	圧着はがき	圧着はがき	封書
対応している
主なコンビニ	セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、サークルK、サンクス、ミニストップ、デイリーヤマザキ、ポプラ、セイコーマート、コミュニティストア、セーブオン、スリーエフ、ココストア、生活彩家、くらしハウス、スリーエイト、MMK設置店、ヤマザキデイリーストア、every one、ヤマザキスペシャルパートナーショップ など全国約4万店舗	セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマート、デイリーヤマザキ、サークルK、サンクス、ミニストップ、ココストア、スリーエフ ほか	セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、サークルK、サンクス、デイリーストア、スリーエフ、ミニストップ、ポプラ など18社	主要コンビニ約46,000店	ココストア、コミュニティ・ストア、サークルK、サンクス、スリーエフ、セイコーマート、セーブオン、セブン―イレブン、デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、ミニストップ、ローソン
郵便局での
支払いの可否	○	○	×	×
(対応予定)	○
ユーザー向けポイント付与サービスの有無	×	×	×	×	○
後払い決済の
代理店制度の有無	○	○	検討中	○	○
導入店舗数	4000店舗以上	非公開	非公表	数百社	10,000店舗
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