成果の頭打ちはどう改善する? 運用型広告の費用対効果を伸ばす3つのポイント
ECサイトの広告運用担当者は、GoogleAdwordsやFacebook広告、Criteoといった運用型広告の費用対効果を高めるには、どのような施策を打つべきか。運用型広告専門の広告代理店として多くのEC事業者を支援してきたオーリーズの鈴木多聞社長が、クライアントの成功事例を踏まえてノウハウを解説する。 写真◎Lab
広告効果の頭打ちはなぜ起きるのか?
鈴木社長は「運用型広告は、上手に活用すれば高いパフォーマンスを上げることができる」と運用型広告のメリットを強調。一方で、運用型広告にまつわるさまざまな課題が出てきていることに触れ、「広告効果が頭打ちになっていると相談をよせるEC事業者が増えている」と指摘した。
運用型広告を取り巻く3つの環境変化
鈴木社長は運用型広告を取り巻く環境が大きく変化している事象として3点をあげる。「広告チャネルの多様化」「機能の自動化」「媒体の断片化」だ。この環境変化によって、広告の運用方法や効果測定の方法が激変。広告主と広告代理店は広告運用の見直しを迫られていると指摘した。
(1)広告チャネルの「多様化」
運用型広告のチャネルやツールが増えたため、最適な広告媒体を選ぶ際に高度な判断力が求められるようになった。
(2)機能の「自動化」
運用型広告の入札や配信機能の自動化が進んだことで、自動化機能を使いこなすスキルが求められるようになった。
(3)媒体の「断片化」
さまざまな形式のWeb媒体、スマートデバイスやSNSが登場したことで広告媒体が断片化し、広告効果の測定の難易度が上がった。
このような広告を取り巻く環境が変化しているにも関わらず、広告のラストクリックのCPA(顧客獲得単価)だけに着目しているような旧態依然としたスタンスで広告を運用していると、広告効果の頭打ちが起きる。(鈴木氏)
運用型広告の費用対効果を改善する3つのポイント
運用型広告の費用対効果を改善するために実施すべきこととして、鈴木氏は次の3ポイントをあげた。
- ポイント1 アトリビューション分析を実施する
- ポイント2 自動化機能を積極的に導入する
- ポイント3 クリエイティブの改善に注力する
ポイント1 アトリビューション分析で本当の広告効果を測定する
多様化と断片化が進んだ現在、CPAだけに着目していては広告効果を正確に判断することは難しいという。たとえば、GoogleAdwordsとFacebook広告、Criteoの3つの広告を経由してコンバージョンに至ったユーザーがいた場合、最後にクリックされた広告のCPAだけを計測すると、途中でクリックされた他の広告の貢献度が無視されてしまう。また、Facebook広告はコンバージョン数が少なくても、「いいね」がたくさん付いた場合には、認知向上やブランディングに貢献した可能性も否定できない。
こうした課題を踏まえ、鈴木氏は「広告効果をより正確に測定するには、広告ごとの貢献度を可視化するアトリビューション分析が必要」と指摘。具体的な方法として「均等評価モデル」や「Budget Cut Graph(バジェットカットグラフ)」をあげた。
均等評価モデル
ユーザーがコンバージョンに至るまでに接触したすべて広告の貢献度を調べる手法。たとえば、ユーザーがコンバージョンまでに3つの広告を経由した場合、それぞれの広告の貢献度は0.33ずつカウントする。
そして、「均等評価モデル」で広告ごとの貢献度を計算した後、「バジェットカットグラフ」を作成することを推奨した。「バジェットカットグラフ」は横軸に広告予算、縦軸にトータルコンバージョンの件数を置き、予算に対する広告の生産性(広告効果)を可視化するものだ。
「バジェットカットグラフ」で広告ごとの効率を可視化した後、効率が悪い広告の予算の一部をコスト効率が良い広告に再配分する。そうすることで、予算の総額を変えずとも広告効果を高めることができる。鈴木氏はオーリーズのクライアントの実績から、「バジェットカットグラフを活用するとコンバージョン数がおおむね10~30%増えた実績がある」と説明した。
ポイント2 広告運用の自動化機能を積極的に取り入れる
続いて鈴木氏は、運用型広告の費用対効果を改善するためのポイントとして「広告運用の自動化機能を活用すること」をあげる。運用型広告を自動化する方法の例としてGoogleアドワーズやFacebook、criteoについて次のように紹介した。
Googleアドワーズ
Googleアドワーズは広告の入札の自動化機能を紹介。アカウントの構造をシンプルにして広告グループに運用データを集約、統計的有意な情報量を蓄えることで効果的に運用できる。広告運用の自動最適化には一定の学習期間が必要なので、広告を一定期間継続することも重要である。
Facebookの類似オーディエンスによるターゲットセグメントについて紹介。広告配信のターゲティングをカテゴリー選定して行った場合と比べ、類似オーディエンスによるターゲティング設定の方が高い成果を上げることも珍しくない。
Criteo
リターゲティングに特化したパーソナライズ・レコメンデーション広告を展開しているCriteoは、レコメンド機能によってユーザーの需要を掘り起こす。機械学習エンジンが自動的に広告配信を行う点が特徴的だ。「購入頻度の期待度が高いユーザー」「購入単価の期待度が高いユーザー」などを自動で判断し、アプローチする。
ポイント3 クリエイティブの改善にリソースを投下する
鈴木氏は運用型広告の費用対効果を改善するための3つ目のポイントとして、「クリエイティブの改善」をあげた。運用型広告のクリエイティブは成果の状況に応じて差し替え続けることが必要と指摘した。
さらに、データフィードの改善では、「クリエイティブのテキストや写真、オプション情報など愚直にフィード情報を改善していくと成果は向上する」と述べた上で、クリエイティブの改善を通じてCTRが約40%改善した事例も紹介した。
広告主が広告代理店に求めるべきこと
鈴木社長は最後に、運用型広告を取り巻く環境の変化に合わせて、広告主と広告代理店の関係性を見直す必要があるのではと指摘し、「本日説明した3つのポイントを踏まえ、新しいスタンスで広告代理店との関係性を築いてほしい」と参加者に訴えかけ、セミナーを締めくくった。