斉藤由貴さんと今井絵理子さんの例に学ぶ「謝罪」「釈明」「クレーム対応」の極意
元ネット通販担当者、現在は経営コンサルタントの竹内謙礼です。このコーナーでは時事ネタをからネット通販に携わる経営者や責任者、担当者に“業務に役立つヒント”をお伝えしようと思います。
今回取り上げるのは、ちまたをにぎわせている不倫騒動。有名人の不倫問題がネットやテレビで騒がれています。「不倫騒動とECに何の関係が?」とお思いでしょうが、これを機に覚えておいていただきたいことがあるのです。
今、ネットニュースで話題になっている2トップは女優の斉藤由貴さんと、国会議員の今井絵理子さんの不倫問題。この2人が釈明時に発したのが下記のコメントです。
“一線を越えてはいけない”と思い、「きちんとけじめをつけてから考えましょう」と申し上げました。
─ 今井絵理子さん
きっと好意はあるから、手を出されたらはっとつなぐ的なことはあるんだと思います
─ 斉藤由貴さん
このコメントを知った人の多くが「こんなことを言わなきゃいいのに」と思っているのではないでしょうか。
案の定、この一言が火に油を注ぐことになり、テレビのコメンテーターにコテンパンに突っ込まれて、炎上が続いている状況です。
でも、釈明しなきゃいけない状況ってありますよね
今回は事例としてたまたま不倫騒動をピックアップしましたが、私たちもネットショップ運営やビジネスの交渉の現場において、苦しい言い訳をしなくてはいけないシーンに追い込まれることは多々あります。
「クレームのメール対応で、余計なことを書いてしまってさらにお客様を怒らせる」
「電話で謝罪をしている時に、揚げ足を取られてお客様を怒らせる」
「取引先との交渉ごとで、言わなくてはいいことを言ってしまい、商談を台無しにする」
完全にこちら側に非がありるものの、それを認めてしまうともっと大変な状況に追い込まれる。そんな八方ふさがりの状況は、ビジネスの現場においてはむしろ“よくあるトラブル”と言ってももいいと思います。
私たちはただ不倫のゴシップ記事を楽しむだけでなく、今後の仕事のスキルアップにつながるようなノウハウを学んでいかなくてはいけません(学ぶにしては、ネタが下世話過ぎますが)。
人間は本音がポロリと出てしてしまうもの
人間は自分が不利な状況に追い込まれてしまうと、理性でどんなに自分の心を制御しようと思っても、どこかで“本音がポロリ”と出てしまうものです。
いくら「嘘をつこう」「この場はなんとか乗り切ろう」と思っても、人間は起きた事実や記憶、そして感情はパソコンのように完全に消去することができません。そのため、ミスを犯した出来事が言葉に結びついてしまい、発言やコメントで、ボロが出てしまうのです。
今回の不倫騒動で言えば、2人は「手をつないでしまった」という決定的な証拠を突き付けられたことが、釈明が苦しくなってしまったそもそもの要因でした。
2人は言い訳ができない状況に追い込まれていましたが、とはいえ、家族と仕事のためには認めるわけにもいかず、まさに八方ふさがりでした。そうすると、釈明時に「嘘をつく」という行為に走るしかなかったのでしょう。
しかし、結果的に今井絵理子さんの場合は「肉体関係がなかったことを強調しなくてはいけない」という思いがコメントに出てしまったと考えられ、“一線を越えてはいけない”という余計な言葉を発信することにつながってしまいました。
また、斉藤由貴さんの場合は、「好き」という感情を完全消去することができなかったために、“きっと好意はあるから手をつないでしまった”という、釈明なのか何なのかよくわからないコメントに結びついてしまったのだと思います。
苦しいときは「釈明のシナリオ」を作ろう
絶対的に自分の立場が苦しい状況での釈明しなければならない時は、“シナリオ”を作ることをおすすめします。
どのような質問を受けたら、どのような回答をするのか、頭の中でシミュレーションをするのではなく、実際に言葉をパソコンに打ち込んだりノートに書いたりして、文字に起こしてストーリーにします。
文字として問題を可視化することで、状況を客観的に見直すことができたり、矛盾した回答を発見したりすることができたりするので、“本音がポロリ”を防げるようになります。
シナリオを第三者にチェックしてもらおう
そしてもう1つ大切なことは、この釈明のシナリオを第三者にチェックしてもらうことです。
自分の犯したミスというのは誰にも知られたくないのが普通です。できることなら人に知られたくないし、相談もしたくないというのが本音でしょう。
しかし、そのような内にこもった心理状況で問題を処理してしまうと、「自分は悪くない」という思いが全面に出てしまい、どうしても言い訳がましく、独りよがりの釈明になってしまう傾向にあります。そうならないためにも、作ったシナリオを同僚や上司にチェックしてもらうのです。
客観的なチェックが入った釈明シナリオさえあれば、心の準備ができているので、いざという時に言葉が口から出やすくなり、核心を突く質問をされても冷静に言葉を返すことができると思います。
その上で相手のメールに返信したり直接会って釈明したりして、できる限り、炎上を最小限にとどめることに努めた方が良いでしょう。
相手は「ポロリ」を待っている
今回の例で言えば、おそらく今井絵理子さんの場合、「早くコメントを発表しなくてはいけない」という焦りから、FAXという書面での釈明でありながら、不用意なコメントが飛び出してしまったのだと思います。
もしくは、あのコメントをチェックした人(もしくは考えた人)が、政治関連の人ではなく芸能関連の人だったために、あのような政治家としては不謹慎な釈明コメントになってしまったのかもしれません。
また、斉藤由貴さんの場合、釈明シナリオを作る時間がなかったために、記者会見で言葉が詰まったり、不用意な発言をしてしまったりして、苦戦を強いられたのではないでしょうか。
芸能記者も遊びで来ているわけではありませんし、どんな質問をすれば芸能人からセンセーショナルなコメントを引き出せるか、百戦錬磨の彼らは心得ているのだと思います。そういう現場に準備もせず無防備に飛び込んで行けば、餌食になってしまうのは当然のことと言えます。
同じようにビジネスの現場でも、釈明や言い訳が必要な場面では、相手は「決定的な発言ミスを引き出してやる!」と手ぐすねを引いて待っているわけです。そこに対抗するには、やはりシナリオをみっちり作って準備していく必要があると思います。
釈明というのは、苦しくなれば苦しくなるほど、「早くこの状況から解放されたい」という気持ちが強くなり、思わず本音がポロリと出てきてしまうものです。それをいかに防ぐかが、ビジネスの現場では大切なことです。
今回の不倫騒動の渦中にある2人の有名人の事例から、本音がポロリと出ないためにはどうすればいいのか、真剣に考えてみる機会にしてみてはどうでしょうか。
筆者出版情報
SDGsアイデア大全 ~「利益を増やす」と「社会を良くする」を両立させる~
竹内 謙礼 著
技術評論社 刊
発売日 2023年4月23日
価格 2,000円+税
この連載の筆者 竹内謙礼氏の著書が技術評論社から発売されました。小さなお店・中小企業でもできる、手間がかからない、人手がかからない、続けられそうな取り組みを考える64の視点と103の事例を集大成。SDGsに取り組むための64の視点と104の事例をまとめています。