Digital Commerce 360 2018/12/20 7:00

小売事業者が実店舗を閉鎖、または縮小するなか、DtoC(Direct to Consumer)モデルのECへの人気が高まってきています。

技術の進歩、消費者の嗜好の変化、新しいプレーヤーの登場により、ブランドは新たな課題に直面しています。たとえば、デジタル経済の影響で、消費者のブランドとの関わり方や購入方法が変わりました。

そんななか、消費者の期待値は今まで以上に高くなり、期待値に答えられるブランドは消費者からの厚い信頼を得られます。ブランドが、どのように、どんな場所で消費者と関係性を築くのかを再考するなかで、DtoCモデルが候補にあがってくるわけです。

小売事業者が実店舗を閉鎖、または縮小するなか、DtoCモデルのECへの人気が高まってきています。製造業者はもはや、実店舗の棚を獲得するために必死になる必要がありません。インターネットの棚は無限にあるからです。製造業者は棚ではなく、消費者の財布を直接狙っていますが、それには消費者の好みや行動を理解する必要があります。

Dollar Shave Club(ひげそりの定期購入)やWarby Parker(メガネブランド)などのデジタルネイティブなブランドは、DtoCモデルで大きな成功を収めています。2,000社以上のブランドを対象にしたAlly Commerce社の調査によると、現在、同じような成功を求める消費者グッズ製造業者の57%以上は、DtoCモデルを採用しているそうです。

ナイキのDtoCの売り上げは2017年の総売上の29.6%を占めるほどです。ナイキは2020年までにはDtoC経由の売り上げが160億ドルまで成長すると予測しています。

販売方法を習得すれば、DtoCはより高いマージン獲得と、顧客との強い関係構築につながり、直接入手したデータへのアクセスやインサイトの発見、ブランドコントロールまで可能になります。2019年を迎えるにあたり、DtoCのトレンドを見るとともに、今後どのような展開になると考えられるのかを述べたいと思います。

ブランドはカスタマーエクスペリエンスを中心に

Amazon(アマゾン)はシームレスなショッピング体験、無料配送、無料返品を実現し、消費者の期待値を押し上げました。そのため、ブランドは顧客との関係性を重視する必要に駆られ、DtoCに取り組む時にデータの取得、分析、活用など、今までにない取り組みを余儀なくされています

カスタマーエクスペリエンスを向上させるための機能を取り入れようとすると、新たな機会と課題に直面します。消費者がブランドを選ぶ時のカスタマージャーニーから、顧客との関係のライフサイクルまで考えなければいけません。

多くの小売事業者が実店舗を閉店

2017年は前代未聞の数の実店舗が閉鎖になりましたが、2018年も同じような結果になりそうです。今年は、Sears、Kmart、Victoria's Secretをはじめとする多くの有名ブランドが5,000店舗以上を閉鎖しました。

これらの小売事業者たちは、常に進化するオムニチャネルに伴い変化する消費者の好みを見抜けずにいます。次世代の購買力が高まるにつれ、昔の販売方法では、デジタルネイティブな競合に太刀打ちできません。以前は、小売事業者経由で買うしか方法がありませんでしたが、今のオンライン通販利用者は、リアルタイムで簡単に商品を比較検討し、幅広い選択肢のなかから購入できます。

消えゆく販売チャネルに頼ると成功が遠のくため、多くのブランドがオンラインで直接消費者に販売する方法を選んでいるのです。ブランドにとっては、トップに躍り出るチャンスでもあります。フレキシブルであり、現代の消費者ニーズを捉え、強いECエンジンを構築し、ブランドイノベーションと成長のために貴重な顧客データを活用できるブランドが勝つのです。

地域の販売店と協力して付加価値を生み出す

実店舗の閉鎖が続くなか、ブランドはバリューチェーンにディーラーを取り込もうとさまざまな試みをしています。たとえば、組み立てが極めて難しい商品を製造しているブランドがあるとしましょう。そのブランドは、地元のディーラーとパートナー契約を結び、DtoCで注文を受け付けてもらって、組み立てから商品の配達までお願いすることができます。

ディーラーが商品を販売したわけではありませんが、ディーラーは消費者との接点を手に入れ、アフターサービスなどを通じて関係性を築いていくことができるのです。ブランドは売り上げとエンドユーザーを獲得すると同時に、商品の在庫を管理し、地元の消費者にアフターサービスを提供してくれる販売パートナーに付加価値を提供できます。

DtoCを始めると、コンテンツからデジタルマーケティングに至るまで、マーケティングを深いレベルで考えるようになります。そうなると、ブランドの露出や、画像、動画などのコンテンツも増え、結果的にディーラーや販売パートナーとも良い関係が築ける波及効果も出てきます。

アマゾンはより複雑に

スピード、カスタマイズ、質を求める現代の消費者のリクエストに応えているアマゾンは、全米のEC売り上げの49%以上を占めており、その勢いは続いています。eMarket社の報告によると、米国において、アマゾン経由で販売される商品の合計金額は今年2,580億ドルに達すると見られ、昨年から約30%も上昇しています。

全米のオンライン小売販売において、市場の49.1%をAmazonが占めている(編注:eMarketerの資料を編集部がキャプチャし追加)
https://www.emarketer.com/Chart/Top-10-US-Companies-Ranked-by-Retail-Ecommerce-Sales-Share-2018-of-US-retail-ecommerce-sales/220521

ブランドはアマゾンを販売チャネルとして戦略的に活用する方法を考えなければいけません。アマゾンに食い込む方法はいくつかあります。

たとえば、サードパーティの販売業者に商品を販売する(3P)、アマゾンリテールと卸売りの契約を結ぶ(1P)は重要なやり方です。アマゾンの仕組みは複雑で、常に変化しています。アマゾン内で販売する方法、アマゾンに販売する方法など、複数のやり方がありますが、明確な戦略を持つブランドが成功するのです。

同時に、アマゾンは製造業者でもあるということを理解しておく必要があります。自社商品を製造するアマゾンが、ブランドにとって脅威なのは間違いありません。事実アマゾンは、洋服から家庭用品まで、さまざまなカテゴリーの商品を製造、販売しています。マーケットプレイスの販売事業者と競争するアマゾンの戦略は明確です。ベストセラー商品を見つけて、自社で製造、販売するのです。

アマゾンがいかにすばやく、1つのカテゴリーを独占できるかは、乾電池の売り上げを見れば明らかでしょう。2009年、アマゾンはアマゾンベーシックというブランド名のもと、いくつかのプライベートブランドを立ち上げました。その数年後、アマゾンベーシックは乾電池のオンライン販売シェアの約3分の1を占めるようになり、現在ではEnergizer社やDuracell社よりも乾電池を売っています。ブランドと調和を保つ方針から、競合になる道へとアマゾンは舵を切っているのです。

DtoCの活用は新たな機会だと捉える

DtoCのトレンドは衰えることはないでしょう。広告業界団体のInteractive Advertising Bureauの調査によると、3分の2の消費者はブランドと直接つながることを望んでいます。DtoC戦略をマスターしているように見えるデジタルネイティブな競合を怖がる必要はありません。新たな機会と捉えましょう。新しい環境に適応できるブランドであれば、同じように成功できるのです。

ECは複雑で、常に変化しています。オンライン店舗の設計から、マーケットプレイスでの販売、支払い管理、税金、偽物対策、物流、カスタマーサービスまで、戦略的なパートナーを見つければ、複雑なDtoCのオペレーション管理を助けてもらうことも可能です。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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