米国ECのシェア5割を占めるAmazon。DtoCブランドがアマゾンと協業すべき理由
Amazon(アマゾン)は、競合他社を出し抜こうと学ぶ向上心の高いブランドに対して、非常に魅力的な広告プログラムを提供しています。DtoCブランドも例外ではありません。アマゾンが対応できていないユニークな商品を提供してくれるブランドならなおさらです。
新しいDtoC(Direct to Consumer)ブランドが、アマゾンとの取り組みを始めたくない理由は理解できます。巨大で、なんでも販売しているアマゾンは、ほとんどのスタートアップが提供する特別でパーソナルなブランド体験とはかなり趣が異なるでしょう。さらに、DtoCビジネスのスタートアップの多くが、アマゾンは競合になるのではないかと心配しています。
実際、アマゾンが独自の機会を提供するプラットフォームなったため、グーグルから離れて、アマゾンをより活用しようとする企業も増えています。しかし、DtoCブランドはチャンスを見逃しています。
アマゾンは小売事業者のチープなカスタマーエクスペリエンスとは異なるものを提供していますし、アマゾンの新しい広告メニューを利用すれば、目利きのメディアバイヤーがすばらしい結果を達成できるのです。
アイデアの盗用を心配するよりも儲ける方が賢明
多くの小売スタートアップ企業は、競争を心配していますが、アマゾンに関しては考え方を変える必要があります。アマゾンは、何百万もの商品を販売すると同時に、76ものプライベートブランドの商品も売っています。アマゾンは、大きな市場において収益の機会があるとわかれば、競争を仕掛けてきますが、とりあえずはアマゾンの動向に関係なく、アマゾン内で収益を上げる方が賢明なのです。
DtoCブランドを検索すると、アマゾンでは販売していないブランドをターゲットにしている小売事業者がたくさん出てきます。“Warby Parker”(編注:米国発のメガネブランド)と検索したら、10ドルのコピー商品から、競合他社のデザインまで表示されるでしょう。
アマゾンを無視することは、小売の重要な部分と広告機会を無視することと同じなのです。ゴールドマンサックスのレポートでは、オンライン通販利用者、特にミレニアル世代の男性にとって、アマゾンは最初に訪れるサイトで、どのカテゴリーでも、「最も好きな購入場所」にランキングされています。
そして、94%のオンライン通販利用者はアマゾンで買い物しています。これは米国全体のオンライン小売売上の49%にものぼります。速さと利便性を求める人が多く、DtoCブランドも同じような消費者層にリーチしたいのであれば、消費者が集まっているところに出向いていく必要があるのです。
ブランドはエクスペリエンスをコントロールできる
アマゾンのボロボロの箱で商品が届いたら、カスタマーエクスペリエンスが台無しになってしまうと考えるブランドもあるでしょう。また、アマゾンの無駄を省いたサイトデザインや「スポンサー広告」や「ディスプレイ商品広告」など、一般的な広告フォーマットでは、ブランドを表現したり、コントロールしたりできないのも事実です。
ブランディングされたアプリには及びませんが、アマゾンの「ストアフロント」などを利用して、ある程度デザインに自由度を持たせているブランドも多く存在します。アマゾンは、ブランドのウェブデザインや管理を改善するために、「ストアフロント」を売り込んでいます。
サムスンが良い例で、ホームページに加えて、カテゴリーが違う商品ごとに別セクションが設けられています。すべてのブランドが利用しているわけではありませんが、アマゾンもブランドの意見を取り入れ、ブランドがウェブ管理をできるように、新しい機能を追加しているのです。
賢いブランドはアマゾン広告の恩恵を受けている
小売事業者向けの広告プラットフォームとして、アマゾンは何百万もの熱心な顧客と、膨大な在庫を持っています。バラエティに富んだサービスがなければ、小売事業者は自分たちでアマゾン内の広告方法を考えなければいけません。
アマゾンはプロセスを整理し、混乱がなくなるよう、様々な広告を見直すと発表しました。しかしまだ、成功事例を公表したり、サービス担当のスタッフを増やしたりするまでには至っていません。ですから、賢いブランドにとっては、今が大きなチャンスなのです。
お金が儲かるという確信はあるのでしょうか? Flywheel社のように、元アマゾン社員が立ち上げたアマゾンに特化した代理店が沢山でてきました。グーグル検索やアドワーズが出はじめた頃に検索広告代理店ができましたが、今ではもうブームの業界になっています。それと同じ現象が起きているのです。
アマゾンは競合他社を出し抜こうと学ぶ、向上心が高いブランドに対して、非常に魅力的な広告プログラムを提供しています。DtoCブランドも例外ではありません。アマゾンが対応できていないユニークな商品を提供してくれるブランドならなおさらです。
事業を拡大のタイミングこそアマゾンの出番
Casper(寝具ブランド)やHarry's(ひげそりブランド)といったDtoCブランドが、小売業界を揺るがしています。ベンチャーから多額投資を受け、コストのかかるデザインを展開し、顧客中心のサービスを提供することで、見た目とメッセージ性の両方を訴求できていない古いブランドよりも先を行っています。
しかし、優位な立場にいることは、ときとして危険です。今まで多くのDtoCブランドと関わってきましたが、ビジネスの初期段階から広告や戦略にこだわりすぎると、殻を破らなければビジネスを拡大できないと後から気づくのです。
アマゾンで販売したり、広告を出したりすることで自尊心が傷つくこともあるでしょう。注目を浴びるスタートアップにとっては、まるで自分を裏切っている気分になるかもしれません。
しかし、グーグルとフェイスブックの独壇場に食い込み、アマゾンは成長し、変化し続けています。成長期には、アーリーアダプターになることによって、他にはない機会に恵まれたり、アマゾンの将来のサービスに影響を与えられるかもしれません。
フェイスブックやグーグルのように、アマゾンには数百万の顧客がいます。アマゾンを無視すれば、競合のためにわざわざ道を開けているようなものです。