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Amazon(アマゾン)は広告分野でも勢力を伸ばしてきています。アマゾンで商品を販売しているブランドは、Google(グーグル)やFacebook(フェイスブック)の広告と同様に、アマゾンでの広告展開にもきちんとした戦略を持って取り組む必要があります。

検索エンジンと化すアマゾン

消費者の購買行動を大きく変え、小売業界を破壊してきたアマゾンが今、検索とデジタルマーケティングを混乱させています

アマゾンは2012年にグーグルを抜いて、米国のネット通販ユーザーが最初に訪問するサイトになりました。現在、アマゾンは全米トップのEC事業者であり、検索エンジンとしてもトップになり、商品やブランドを消費者に知ってもらうための重要なチャネルになっています。

この大きな変化に伴い、ネット通販企業は商品をマーケティングする機会が増え、対応すべき案件が急増しています。ネット通販事業者はアマゾンを有効活用するメディアプランを早急に作る必要があるのです。

アマゾンが「洋服からコンピュターまで全てのものを販売」していたJunglee社を買収したのが1988年。本以外の商品を販売するようになってから、さまざまな企業が商品を販売するためにアマゾンとの関係性を構築してきました。ネット通販企業などが自社の商品をアマゾンサイトで広くPRできるようになったのは、つい4年前(2014年)のことです。

オンラインマーケティング会社Bloomreachが2016年に行った調査で、55%の消費者がアマゾンで最初に検索行動を行うことが明らかになりました。2015年の44%から11ポイントもアップしています。この勢いは、今後も続くでしょう。

アマゾンは検索エンジンとしての地位を確率しただけではなく、購入プロセスの無駄を省き、4~5のステップ(検索、スクロール、選択、内容確認、購入)で1分以内に買い物ができるようにしています。すでに保存されているクレジットカード情報で、消費者は素早く買い物ができるわけです。

常にスマートフォンを肌身離さず持っている私たちにとって、衝動買い、忘れていた商品を急に買うときなども、すぐにインターネットを通じて対応できる状況になりました。いまは、急成長しているアマゾンの音声認識機能「Amazon Alexa」を使えば、指を使わずに買い物もできるんです。

2015年…アマゾン44.44%、検索エンジン34.34%、その他の小売サイト21.21% 2016年…アマゾン55.56%、検索エンジン28.28%、その他の小売サイト16.16%
オンラインショッピングのスタート地点として検索エンジンを使用するユーザーの割合は約28%。アマゾンで検索するユーザーは約55%(2016年調査)
出典:インターネットリテイラー社

メディアとしてのパワーを持つアマゾン

ニューヨーク大学でデジタルマーケティングを教える教授で、「The Four:アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルが持つ隠れたDNA」の著者でもあるスコット・ガロウェイ氏は、週刊投資金融情報専門紙であるBarron’sの取材で、「アマゾンのメディアパワーは、フェイスブックやグーグルよりも早く成長している」と指摘します。

調査会社のeMarketer社は、「Amazon Advertising: Reconsidering the Retail Platform(アマゾンの広告:巨大プラットフォームの再考)」と題したレポート内で、2017年のアマゾンの広告収入は16億5000万ドルになったと推測しています。

Amazonの広告売上…1.12億ドル、1.65億ドル、2.35億ドル、3.19億ドル
伸び率…58.0%、48.2%、42.0%、36.0%
米国のデジタル広告市場おけるAmazonの広告収入の割合…1.6%、2.0%2.5%、3.0%
出所:eMarketer社の公表資料を編集部で加工

グーグルやフェイスブックと比較するとまだまだ小さい数字ですが、Twitter(ツイッター)やメッセージアプリのSnapchat(スナップチャット)の広告収入はすでに追い抜いています。

何らかの商品をオンラインで販売しているブランドで、もしアマゾンで販売していないならば、出店・出品を検討する必要があるでしょう。

すでにアマゾンで販売しているブランドは、自社のデジタルマーケティングチームがアマゾンのマーチャンダイジングチームと良いパートナーシップを築き、商品プロモーションを最大化できるように働きかけるべきです。グーグルと同様、アマゾン内で成功するには、検索結果で上位に表示される必要があるからです。

明確なAMS戦略を持っているマーケターはたった17%

検索マーケティングに特化しているCatalyst社はこのほど、テクノロジー関連のWebメディア『ClickZ』と協業し、ネット通販企業などがアマゾン内で行っているマーケティング施策を調べました。

その調査結果によると、ECマーケターの17%しか明確な「アマゾンマーケティングサービス(AMS)」(編注:クリック単価入札形式の広告ソリューションサービス)向けの戦略を持っていませんでした。AMSはアマゾンが提供する広告サービスで、新たな消費者を取り込み、売り上げをアップするためのソリューションです。

その調査では、回答者の15%しかAMSを最大限活用していないことも明らかになりましたが、この結果は驚くべきことではありません。アマゾンは何年にも渡り、「消費者とマーチャンダイジングチームの意見が最優先です」とブランドのデジタルマーケティングチームに言い続けてきたからです。

しかし、その姿勢は変わりつつあります。その証拠に、回答者の61%が、アマゾンでの有料広告に関してデジタルマーケティングチームが責任を持って運用していると答えているからです。

複数の調査結果を見ると、多くのECマーケターが、アマゾンに投入するマーケティング予算を増やそうとしているようです。63%が予算を増額42%が新たにアマゾンへ予算を割り振ろうとしています。これらの数字を見ると、デジタルマーケティグプランと予算配分において、アマゾンの存在が高まっていることがわかります。

しかしながら、マーケターの17%しか明確なAMS向けの戦略を持っていない状況を見ると、多くの企業が予算の無駄遣い、もしくはAMSの可能性を最大限に生かしきれていないことになります。

アマゾンで結果を出すための包括的な戦略

アマゾン内で成果を出すために、多くのネット通販企業はディスプレイ広告から始めますが、それではマーケティングファネルの上部に位置付けられる見込み客にしかアプローチできません。良い場所に表示されるディスプレイ広告は、競合対策や認知度向上には寄与しますが、売り上げにつながることは少ないので、マーケターは高いROAS(広告費用対効果)を残すことはできません。

アマゾン向けの包括的な戦略には、「ヘッドライン検索広告」「スポンサードプロダクト広告」を含みましょう。グーグルやBingの有料検索広告と同様、これらの広告はキーワードを使うため、検索クエリに合わせて広告プロモーションを最適化できます。

アマゾンの検索結果の上部に表示される「ヘッドライン検索広告」は、キーワードでターゲティングした広告が、検索結果ページの一番上に表示されるものです。消費者がヘッドライン検索広告をクリックすると、ブランドや商品群を紹介する詳細ページに移動します。

アマゾンのヘッドライン検索広告
ヘッドライン検索広告のイメージ(画像はAMSの資料から編集部がキャプチャ)

「スポンサードプロダクト広告」は、キーワードでターゲティングした広告を、検索結果ページに表示します。この広告では、プロモーションしたいメイン商品の売り上げアップが期待できます。

アマゾンのスポンサードプロダクト広告
スポンサードプロダクト広告のイメージ(画像はAMSの資料から編集部がキャプチャ)

ヘッドライン検索広告もスポンサードプロダクト広告も、「PDP」(Product Detail Pages)と呼ばれる特定の商品詳細ページ(ブランド、タイトル、商品画像、レビュー、価格、特徴、商品スペックや関連商品情報が掲載されているアマゾン内の商品ページ)に紐付いているため、ROASの数値が伸びると同時に、自然検索でもビジビリティ(可視性)が高まるため、全体的なクリック率(CTR)や売り上げのアップが期待できます。

アマゾン内で広告展開を始めるのは比較的簡単です。しかし、好レビューが少ない不完全なPDPでは、より効果的なPDPを展開している競合企業に勝つことはできません。PDPは見つけやすく、買いやすいページでなければいけないのです。

見つけやすさと買いやすさを重視すれば、多くのブランドが欲しがる「アマゾンチョイス」(Amazon's Choice badge、編注:一般的な日常的なアイテムを探すときに時間と労力を節約できるようにする機能。Amazon Alexa対応デバイス向けの機能で、特定の基準を満たす製品をAmazonが認定するもの。対象商品はAmazonプライムと考えられるという)の称号をもらうことができ、「Alexa」の音声検索の対象に入る可能性が高まります。

Amazon.comで展開されている、Amazon Alexa対応デバイス向けの機能で、特定の基準を満たす製品をAmazonが認定する「Amazon's Choice」
Amazon.comで「Amazon's Choice」を獲得している商品(画像は編集部がキャプチャ)

グーグルやBingと同様、アマゾンの商品ページには自然検索と有料検索の両方で検索にヒットされる要素を盛り込む必要があります。詳しくPDPを作成したとしても、消費者が検索時に使用しているキーワードを最適化しなければ、商品を見つけてはもらえません

自社商品を消費者に買ってもらうために必要な情報を提供するのがPDP内のコンテンツの役割で、キーワードは商品の関連性を高める役割を担っています

消費者インサイトと検索行動に基づくコンテンツ戦略では、商品コピー、画像、インフォグラフィックを活用できる、A+(アマゾンのランディングページ用最適化サービス。日本では2015年に「商品紹介コンテンツ」機能としてリリースされている。詳しくはこちら)を利用しましょう。A+のPDPは、消費者が求める商品情報だけでなく、消費者が気付いていなかった細かい特徴まで網羅することができます。

米アマゾンが提供する「A+」(日本では「商品紹介コンテンツ」と呼ぶ)
「商品紹介コンテンツ」機能のイメージ

キーワードやPDPも考慮した有料プロモーションと、自然検索を融合させた包括的な戦略は、アマゾンで成功したいブランドには欠かすことができないものです。たとえば、この包括的な戦略を持って取り組んだブランドは、ROASが174%から350%に増加。3か月間の広告費は43%アップに対し、収益は188%増加しました。

使いやすさの追求

企業もマーケターも理解しておかなければならないのは、最終的にアマゾンは自社顧客を尊重し、すべての決定はカスタマーエクスペリエンスを向上させるために下されるという点です。

アマゾンが言う「使いやすさ」を達成するために、販売事業者はいくつものハードルを乗り越えなければなりません。私たちが開催した最近の会合では、ブランド側の参加者はアマゾンの要求が厳しすぎると話しています。アマゾンのルールに則っていない場合、商品の販売停止、最悪のケースではサイトから削除されてしまうことに対する不満を漏らしていました。

アマゾンは価格とスピード配送に重点を置いていきます。ブランドは、ベンダーもしくはセラーとしてアマゾンを活用できますが、それぞれ立場は異なります。

ベンダーはアマゾンに商品を発送し、商品はアマゾンの倉庫から消費者に配送します。ベンダーから提供される1回ごとの入荷ボリュームを少なくしながら、納品回数を増やすアマゾンのやり方は、ベンダーにとっては非効率ですよね。一方、セラーの場合、アマゾンのサイトをプラットフォームとして利用するだけで、多くのケースで商品は直接消費者に届けられています。

ベンダーが提供する商品は、ネット上の同商品の価格を元にアマゾンが決定します。セラーに関しては、販売事業者が価格を決定することができます。ベンダー側が良いのか、セラー側が良いのかは、各企業の状況、戦略に応じて決定しなければなりません。セラーには配送や価格決定の自由がありますが、アマゾンは競争力のある価格付けができないため、スピード配送を実現できるベンダー商品を優遇するからです。

まとめ

アマゾンは急速に進化し、サービスを拡張。「Amazonフレッシュ」や「Amazon Now」にも新しいプロモーション方法を設けています。アマゾンへ無駄に資金を投入して、うまくいくように祈るのではなく、明確な戦略を持つ17%の企業の中に早く入ることが重要です。

アマゾンの進化とともに、消費者の行動も変わっていくはずです。トイレットペーパーがなくなった時、今はまだ店舗に足を運ぶかもしれませんが、近い将来「Alexa」に話しかけるだけで購入。もしくは事前に購買行動を予測して、商品がなくなったらすぐに届けてくれるようになるでしょう。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア「Internet RETAILER」の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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