売上TOP1000社の半数が動画を使う米国EC企業、なぜ利用する? どのように訴求する?
ECサイトで動画コンテンツを利用するネット通販事業者が増えています。商品の使用方法を紹介する解説的な内容や、動画から直接商品が購入できるSNS用の動画投稿など、ブランディング、売上アップのためにさまざまな動画が利用されています。
動画はブランドへロイヤリティ&コンバージョン率の向上に役立つ
アパレルのネット通販を手がけるEloquii Design社は、プラスサイズ服を着用する女性が古いファッションルールを打ち破れるような商品などを提案しています。Eloquii Design社は、女性達を大胆にさせる最も説得力の高い効果的な方法は動画コンテンツだと言います。
ブランドマーケティングと消費者インサイトを担当しているクリステン・カンポラッタロ氏は「動画を通じてコミュニティが形成されるため、より深く消費者とつながることができるようになります。動画への投資は、ブランディング面でも売り上げ面でも効果が高い」と説明。それを踏まえ、次のように話します。
商品を販売する上で、ストーリーを伝えることは、とても重要であると同時に、レスポンスも高いのです。動画を通じて、特別なコレクションのPR、商品誕生の背景、商品の背後にあるインスピレーションを伝えてきました。スタイリングのアドバイスをする上でも、動画はとても便利です。お客さま全員にスタイリングのアドバイスをすることはできませんが、動画を視聴してもらうことで好みのスタイリングを見つけてもらうことができます。
インターネットリテイラー社発行「全米EC事業 話題の100社 2018年版」に登場する多くのEC有力企業と同様に、Eloquii社も動画が万能なマーケティングツールだと感じています。
ブランドストーリーはもちろん、感情に働きかける要素の盛り込み、商品のスタイリング、使用方法などを紹介することで、売り上げアップにつなげることができるからです。
「全米EC事業 トップ1000社 2017年版」で56位に位置するEloquii社は動画の戦略やアイディアをほとんど社内で企画。最終的な動画制作な制作会社にアウトソーシングしています。
カンポラッタロ氏によると、今まで最も影響力が大きかったのは「Closet Confidential」というタイトルの動画です。シリーズ化したこの動画は、消費者をEloquii社本社に招き、パーソナルスタイリングのアドバイスを受けている様子を収録するというもの。動画の目的は、消費者がEloquii社の新しい洋服を身にまとい、普段の自分の殻を破ることによって視聴者に勇気を与えることです。
動画コンテンツを採用してから、ブランドへのロイヤリティも高まり、コンバージョン率もアップしました。カンポラッタロ氏は、次のように話します。
マーケティングファネルの上部に位置付けられる見込み客には、動画をインスタグラム広告で配信するのが最も効果が高いようです。動画の大半を見る見込み顧客の多くが、フォローアップ広告で購入してくれます。
ただ、Eloquii社は動画コンテンツへの投資額や効果検証データは開示していません。
EC事業者はどのように動画を活用して売上UPを実現するか試行錯誤の状態
Top500Guide.com社が提供する分析データによると、「全米EC事業 トップ1000社データベース 2017年版」に掲載された企業の51.9%が自社ECサイトで動画コンテンツを提供しています。
動画を利用している企業全体で、「YouTube」に8万5000本の動画をアップ。平均すると各企業304本の動画を掲載している計算になります。eコマース業界で、動画制作は新しい手法ではありません。ただ、「Snapchat」(スナップチャット)に勢いがある現在の市場で、どのように動画を活用して売り上げを伸ばすかは、各事業者が試行錯誤している状況にあります。
動画制作で注目したいのがMikMak社です。小売業界の動画制作で勢いのある会社として「話題の100社」に選ばれたMikMak社は、インスタグラムとスナップチャットを活用し、より購入につながる動画体験を作り出しています。
MikMak社が提供する「MikMak Attach」というサービスを使うと、動画が入ったランディングページを作成することができ、どんなショッピングカートにリンクすることができます。このサービスは一定価格で利用でき、利用者はMikMakが運営するスタジオの制作サービスも使うことが可能です。
スタジオでは、動画制作に関する最初から最後までの工程を担当し、“カートに入れる”ボタンを押してもらえるような、短い商品紹介動画を作成します。
MikMak社のCEO、レイチェル・ティポグラフ氏はこう言います。
「インターネットは近い将来、1つの大きな動画になっていくと真剣に考えています。ビジネスもその一部にならざるを得ないのです。ブランドは常に、ソーシャルネットワーク上の動画でも販売できるようにしておく必要があるのです 。
MikMak社はアンダーアーマー(「全米EC事業 トップ1000社 2017年版」36位)、Birchbox(199位)、ケイト・スペード(124位)、B&H Photo-Video(241位)、ロレアルグループ(276位)といった企業にサービスを提供。ソーシャルビデオコマースの活用、動画視聴から購入につなげるための施策も行っています。ティポグラフ氏によると、MikMac Attachを利用すると、約14%の消費者が商品をカートに追加するそうです。MikMak社は、2015年設立以来、毎年100%ずつ成長を遂げています。
ティポグラフ氏によると、ソーシャルメディア上の画像やテキスト、GIFやストリーミング動画よりも、動画コンンテンツが購入の決め手となったと答えた消費者は86%に上りました(eMakrketer社のソーシャルコマースに関する最新データ)。巨額の宣伝費を持つ有名ブランドではなくても、商品ストーリーを伝えることができる動画活用に注目が集まっているとティポグラフ氏は考えています。
中小企業は決して高くないクオリティの動画も販売用に採用しています。スマートフォンで数多くの動画を撮影し、有料広告にまでそれらを採用しているのです。画質の粗い動画コンンテンツの方が、洗練されて綺麗な動画よりも反応が良いことは多いのです。消費者は画質の粗さや、音質の悪さに慣れているんです。」
実際、モバイル向けのフィードが、マーケティングファネルを崩壊させたとティポグラフ氏は考えています。
インスタグラムのフィードでは、1億円かけて制作したCMが、安価なカミソリのすぐ横にあります。消費者はブランドのメディアプランなど気にしていません。全てが同じ土俵にあるのです。ダイレクトマーケティングは今や、ブランドを確立するためのマーケティング手法になっています。
ティポグラフ氏は、動画をマーケティングの中核に据えたブランドとしてDr. Brandt Skincare社をあげました。どんな要素が消費者をマーケティングファネルの各段階に移動するのかを見極めるため、全てのSKUで複数の動画を制作。
27秒間のSnap広告では、フェイスマスクの使い方を説明しつつ、40%オフのクーポンコード、商品詳細とカートに追加するボタンを掲載しています。
ティポグラフ氏は、ショートヘアの女性をターゲットにしたLiving Proof社のクレイ商品のインスタグラム広告と、ホリデーシーズンにTarget社(「全米EC事業 トップ1000社 2017年版」20位)が掲載したPepperidge Farm(お菓子)のデコレーション方法を紹介した広告を成功事例としてあげました。
スマートホーム用の商品をオンラインで販売し、「話題の100社」に選ばれたWink社も、コンテンツにハウツー動画を取り入れ、スマートホーム商品の機能や自宅での操作方法を説明しています。Wink社のマーケティングおよびパートナーシップ担当のマット・マクゴヴラン氏はこう言います。
スマートホームの恩恵を受けたいと考えている人はたくさんいますが、その多くは操作が複雑と感じています。消費者の多くは、自分たちの生活のなかに、スマートホーム商品をどのように取り入れらたら良いのか、まだよくわかっていないのです。動画コンテンツを活用して、ハードルを下げるとともに、スマートホームの技術は誰でも簡単に使えることを伝えています。
Wink社のECサイトにアップされている動画は、スマートホームをわかりやすく説明しています。また、サイト内にさまざまな動画を散りばめる工夫をしています。消費者は動画を通じ、ユーザーがWink社の商品を使って温度調整をしたり、ライトを消したり、ガレージのドアを閉めたり、コンセントを入れっぱなしにしていたヘアアイロンの電気を、スマートホーム商品を通じて消す様子を目の当たりにします。
マクゴヴラン氏は、「サイト訪問者が動画を視聴して、スマートホーム商品を購入することで生活が楽になると知ってもらいたい」と考えています。Wnk社の動画は社内制作と外部委託の両方を活用しています。
玩具・趣味用品のECサイトの7割が動画を活用
コンピューター・電化製品を販売する事業者のなかでも、Wink社のECサイトは多くの動画を活用しています。
玩具や趣味用品を販売している事業者は、10社に7社がECサイトに動画をアップしています。インターネットリテイラー社が調査したカテゴリー内ではトップ。コンピューター・電化製品のカテゴリーは57.7%で4位でした。今回調査対象となったカテゴリーでは、半数以上の事業者が動画を活用しています。
今回紹介した企業や、革新的なオンライン事業者の詳細は、インターネットリテイラー社発行の「話題の100社 2018年版」をご覧ください。