ファッション分野でも進むAmazon化――老舗アパレルを抜きアマゾンは米国で人気No.1
消費者は、店舗内でインターネットを使って価格を比較します。約58%の消費者は、お店で試着もしくは品物を確認した後にオンラインで購入しています。
ファッションの最先端というわけではありませんが、Amazon(アマゾン)はオンラインでアパレル、靴、アクセサリーを買う人たちの人気スポットになっています。インターネットリテイラー社とBizrate Insights社が3,012人のアメリカ人消費者を対象に行った独自調査で明らかになりました。
過去12か月間で、どのオンライン通販サイトでアパレルを購入にしたかを聞いた際、24.3%がアマゾンと答えました。他のどのサイトよりも高い数字です(アマゾンは、「全米EC事業 トップ1000社データベース 2018年版」第1位)。
アマゾンの次にランクインしたのは、巨大小売事業者ウォルマート(同第3位)で13%。アパレルとアクセサリーを販売するKohl's(同第18位)が10.3%。それ以外の事業者は10%以下でした。
オンラインで買い物する消費者のデータを収集・分析しているMeredith社傘下のBizrate Insights社代表、スコット・メイコン氏は次のように言います。
この結果から、アマゾンとその子会社がアパレル市場で大きな存在感を示していることがわかります。プライベートブランドを拡大することによって、アマゾンは精力的にアパレルカテゴリに注力してきましたが、その努力が実を結んでいるようです(スコット・メイコン氏)
調査によると14.9%の消費者は、今までオンラインでアパレルを購入したことがないそうです。店舗ではアパレルを購入しないと答えた6.4%と比べると、まだ成長の機会があると捉えられるかもしれません。しかしながら、週に一度はオンラインでアパレルを購入すると答えた人が20.4%、週に一度は店舗でアパレルを購入すると答えた人が19.6%と、購入頻度に関してはあまり差がありませんでした。
アパレルの購入頻度 オンライン vs 店舗
リアルタイムで比較する消費者
アマゾンやその他のオンライン通販事業者との競争は、パソコンかスマートフォンかという話ではありません。多くの消費者は店舗で買い物する傍ら、インターネットを使って情報集めています。その事実を考えると、オフラインの売り上げを上げるには、お店へのトラフィックを増やすだけでは足りないのです。57.5%の消費者が店舗で実際に商品を確認したり、試着したりした後にオンラインでアパレル、靴、ファッションアクセサリーを購入したと答えています。
店舗で買う前にオンラインで商品を確認するか
今回の調査結果を見ると、消費者がオフラインとオンラインのチャネルをうまく使い分けていることがわかります。約58%の消費者が、店舗で商品を確認したり、試着したりした後にオンラインで購入しています。それだけではありません。店舗内でインターネット使って価格をチェックすることが当たり前になってきています。約4分の1の消費者が、店舗でアパレルや靴、ファッションアクセサリーを購入する前に必ずインターネットで価格を比較すると言っています。毎回ではないけれども、よく価格をインターネットでチェックするという消費者も3分の1にのぼっています。
アマゾンのアパレルを牽引するのはベーシックブランド
多くのアパレル小売事業者がeコマースに参入していますが、アマゾンとウォルマートの人気は際立っています。オンライン通販事業者の上位1000社のうち、266社はアパレル、靴、ファッションアクセサリーを専門に販売しています。Kohl’sに加え、メイシーズ(6位)、ノードストローム(16位)、J.C.ペニーなどの百貨店や、オンライン販売に特化したスポーツウェアブランドFanatics(29位)、ラグジュアリー商品を販売するYoox Net-a-Porterグループ(78位)などです。
アマゾンはオンラインのアパレル販売で最も利用されているサイトではありますが、高価格でスタイリッシュな商品を求めている消費者が、必ずしもアマゾンを訪れるわけではありません。今年初めにマーケットリサーチ会社Gartner L2社が発表した調査では、ホリデーシーズン期間中でも、Tシャツや下着といった安価でベーシックな商品がアマゾンのアパレルカテゴリを牽引しています。
データ分析企業One Click Retail社の調査では、2017年の第3四半期でアマゾンのアパレルカテゴリで最も成長したのはベビー用品でした。
だからといって、アマゾンがハイファッションの市場を諦めているわけでありません。昨年アマゾンは、洋服を購入する前に自宅で試着できるサービス「プライムワードローブ」を立ち上げました。またテーマによってアパレルをグループ分けし、おすすめ商品を紹介しています。そうすることで消費者が新しい商品を見つけやすくなり、スタイリングのアイデアも探すこともできるのです。
一方、ウォルマートはオンラインの小売事業者を買収し、より富裕層の消費者にアピールしようとしています。Jet.com, Bonobos, Moosejaw, Modcloth, Shoebuy.comの買収によって、ウォルマートは収入や教育レベルの高い消費者をサイトに呼び込むことに成功しています。
ウォルマートは富裕層を狙っているとはいえ、価格に敏感な消費者を無視しているわけでありません。ウォルマートは、女性、子ども、大きなサイズを対象にした安価な洋服ブランドを立ち上げています。アマゾンの利用者を取り込み、アパレルの売り上げを増加させる狙いがあるのです。