松原 沙甫[執筆] 1/15 7:00

顧客体験向上のための支援サービスなどを提供する米国クアルトリクスの日本法人が発表した「2025年消費者トレンドレポート(グローバル調査)」によると、カスタマーエクスペリエンスの悪化ににより、企業は世界全体で約585兆円(3兆8000億ドル)の売り上げを失うリスクにさらされていることがわかった。前年調査よりも18.3兆円(1190億ドル)増えている。

日本においては、カスタマーエクスペリエンスの悪化が原因で年間約11.9兆円(780億ドル)の機会損失の可能性があると算出。前年の7兆円を大きく上回る。

消費者は、悪いカスタマーエクスペリエンスを体験した後に支出を減らす傾向が強まるという。カスタマーエクスペリエンスが低下すると、企業は顧客の信頼回復などのためにコスト増加を強いられる状況となっている。

悪い顧客体験の後に支出を減らす業種、「オンライン小売業」は64%

アンケートに協力した消費者のうち53%が「悪いカスタマーエクスペリエンスの後、支出を減らす」と回答。また、企業とやり取りをしたケースでは、10件に1件(12%)が「期待を満たさなかった」と回答している。

消費者が悪い購入体験をした後に支出を減らすリスクが高い業種で上位を占めているのは、「ファストフード」66%、「百貨店」65%、「オンライン小売業」64%、「自動車ディーラー」63%、「携帯電話事業者」59%、「宅配便サービス」56%だった。

カスタマーエクスペリエンスに問題があった点として、消費者は「サービス内容」46%、「コミュニケーション」45%、「従業員の応対」39%をあげている。それ以外にも「価格」37%、「品質」35%、「購入後のサポート」21%などがあがっている。

「現場の負担軽減」ほか、顧客と従業員に優れた体験を提供する5つの方法

調査によると、企業は顧客体験を良くしようとしているものの、現場でサービスを提供する従業員の企業に対するエンゲージメント、継続勤務意向、インクルージョンのスコアが低くなっていることがわかった。これは企業にとって、カスタマーエクスペリエンス低下のリスクをさらに増大させる恐れがある。

各業種における現場の従業員のエンゲージメント、ウェルビーイングなど(画像はクアルトリクス日本法人が発表したリリースから編集部がキャプチャ)
各業種における現場の従業員のエンゲージメント、ウェルビーイングなど(画像はクアルトリクス日本法人が発表したリリースから編集部がキャプチャ)

こうした調査結果を踏まえ、クアルトリクスは顧客と従業員に優れた体験を提供するための5つの方法を提案している。

  • 現場の従業員の負担を軽減する:店頭、コールセンター、デジタルチャットの管理などさまざまな業務で、現場の従業員は良好なカスタマーエクスペリエンスを提供するにあたって課題が多い。業務プロセスの合理化し、コミュニケーションの改善、従業員の育成に投資することで、企業は現場の従業員やチームのパワーアップにつながり、全体的な顧客満足度を高めることができる。
  • 消費者と明確かつ頻繁にコミュニケーションを取り、混乱を減らす:消費者は、商品の在庫確認から購入、納品、アフターサービスまで、あらゆる段階で必要な情報を提供してくれる企業を好む。企業にとって適切な情報を適切なタイミングで提供することが、顧客の満足や信頼の獲得につながり、不明点や不満による問い合わせの数を減らす上で重要となる。
  • 顧客との約束を守り、信頼を維持する:たとえば注文された商品の翌日配送をうたっている企業は、顧客の信頼を維持し、余計なストレスや不安を与えないよう、約束を確実に果たさなければならない。会社として約束したことに顧客がどのような期待を抱くのか、考慮しておく必要がある。
  • 顧客のニーズに常に敏感に対応する:顧客のニーズ、企業が提供するサービスや商品への期待、好み、行動は常に変化している。企業はアンケート調査、オンラインレビュー、コールセンター、ソーシャルメディアなどから得られるカスタマーインサイトを活用して、変化を先取りしていく必要がある。トレンドや、まだ満たされていないニーズを把握することで、商機をつかむ可能性が高まる。
  • 重要な場面で顧客や従業員の期待を上回る:業界をリードする企業は、顧客や従業員にとって重要な場面や瞬間に着目し、そこで期待を上回ることを重視している。そのために、提供する情報の信頼性を確保し、顧客や従業員とのやり取りをスピーディーにする必要がある。たとえば、顧客とのやり取りがデジタルチャネルで完結するケースが増えており、人と人との関わり合いの場面を重視していくことなどが考えられる。

調査概要

  • 実施時期:2024年7-9月期(純第3四半期)
  • 回答者数:日本を含む23の国・地域2万3730人。そのうち日本の回答者は1199人
  • 調査方法:オンラインアンケート
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