オムニチャネルでCVR18%増やRPV20%増を実現、EC売上世界3位Staplesの最新事例
eコマース売上高世界3位で、オフィス用品世界最大手Staples(ステープルズ)はオムニチャネルの実施で、コンバージョンレート(購買率)が18%増や売上高の2ケタ成長を実現するなど、著しい成果を発揮しています。同社のExecutive Vice President であるFaisal Masud氏が、自社のオムニチャネル戦略を「IRCE」の2日目に披露。講演後にはリアル店舗とのカニバリを危惧する質問やStaplesのコンテンツマーケティングに関する質問などたくさんの質問が飛び交い、米国においてもオムニチャネル戦略は今まさに注目を浴びているテーマだと感じられました。今回はステープルズのオムニチャネル成功の秘訣を解説。
顧客と接する全ての接点を点と点でつなげることこそがオムニチャネル戦略を進める上で重要だ
ステープルズは1986年5月に創業し、世界25か国で事業展開する世界最大手のオフィス用品店。2013年の売上高は約240億ドル。eコマース黎明期の1999年にオンラインショップを開設し、現在ではeコマースの売上高は世界ランク第3位(1位Amazon、2位Apple)。
ステープルズのPCサイトを利用する顧客層はBtoBが84%、BtoCが16%とBtoBの利用が多い。一方で2008年に立ち上げたモバイルサイトはBtoBが32%、BtoCが68%とBtoCの割合が大きい。この割合の違いについてFaisal Masud氏は「ビジネスシーンではPCを使うことが圧倒的に多いからだ」と指摘しましたが、2年ほど前からPCサイトのトラフィックが徐々に減少し、変わってモバイルのトラフィックが急増しているといいます。
この状況の中で大切なのは、マルチチャネル(=PCサイト、モバイルサイト、オムニチャネル)に対応することだ、とFaisal Masud氏は説明しています。顧客と接する全ての接点、リアル店舗、セールススタッフ、オンライン、モバイル、ウェブビジネス、全ての点と点をしっかりつなげることこそがオムニチャネル戦略を進める上で重要だと強調しました。リアル店舗とネットがシェアを争い合う“カニバリ”については、「全体としてみれば良いことで1つのチャネルにこだわる必要はない。私はリアル店舗もネットもその時々によって使い分けていて、絶対リアル店舗でしか買わないという考えは持っていない。むしろどちらかしか使わないという人は少ないんじゃない? 」とFaisal Masud氏は聴講者に問いかけました。
実際、ステープルズの調査結果によると、クロスチャネルユーザー(複数のチャネルを利用して購買するユーザー)はシングルチャネルユーザー(1つのチャネルしか使わないユーザー)と比べて2~3倍多く商品を購買する。こうしたクロスチャネルユーザーをステープルズではロイヤルカスタマーと位置付け、マルチチャネル対応を強化している。どのチャネルから顧客が訪れても、簡単に利用できるサービスを提供することだ。
ステープルズのマルチチャネル(PCサイト、モバイルサイト、オムニチャネル)戦略
マルチチャネル戦略を推進するにあたりステープルズが優位だったのは、チャネル毎のトラフィックデータ、購買データなど、全てのデータを統合し管理できている点でした。その上でステープルズがオムニチャネル戦略を強烈に推進するために取り組んだ主なことをまとめると以下の通りです。
「我々はマルチチャネル戦略においていくつかの“Make it Happen(実現させる)”が重要だった、それは……」
- 最高のショッピング体験を提供するために「商品力、サービス力」を強化
- マルチチャネル(PCサイト、モバイルサイト、オムニチャネル)に対応するためにサイトの改善、機能を追加
- 無駄なコンテンツを全て削り、ナビゲーション(カテゴリ)やサイトレスポンスも改善
- ナビゲーションは顧客が欲しい情報だけを表示させるアルゴリズムに変更
- ウェブに接続した端末を「KIOSK」に設置、売り上げは前年比29%増加
- オンラインで注文し、店頭で受け取る機能を実装、昨年比39%の売上増加につながった
無駄なコンテンツは削除、顧客視点のアルゴリズムの導入で、モバイルサイトのコンバージョンは5倍以上に
顧客に最高のショッピング体験を提供するために実施したのは「商品力、サービス力」の強化。さまざまなアイテムから商品を選べるように、数千商品から1万商品まで取り扱い商品数を拡大しました。
加えて、各種サポートサービスもサイドビジネスとして提供。例えば、テクニカルサポートを行う「Staples easy tech」や、アップロードするだけですぐに印刷できる「Staples copy & print」、コンサルテーションをする「business interior by Staples」など、オンライン、オフラインどちらでも利用できるサポートサービスを拡充しています。「Copy & print」は昨年比34%で売り上げが増加し、現在では米国の1700店舗で利用可能ということです。
そして「商品力、サービス力」の強化と並行してPCサイト、モバイルサイトのインターフェースの改善、機能追加を行いました。共通している考え方は「使いやすいか」ということだけ。無駄なコンテンツは全てそぎ落とし、シンプルで使い勝手の良いサイトにするために約2000か所を4か月かけて改修、PCサイト、モバイルサイト共にリニューアルしました。また、ナビゲーション(カテゴリ)やサイトレスポンスも改善。特にナビゲーションについてはこだわったそうです。
1999年にPCサイトを立ち上げた時にはナビゲーションという概念が一般的には、ステープルズはカテゴリを考えた第一人者だとFaisal Masud氏は冒頭で紹介していました。ちなみに、当社でも「ショッピングサーチ.jp」という商品検索のメディア事業を提供していますが、顧客が商品にたどり着くためにはカテゴリは重要な情報だと考え、日々最新のカテゴリにメンテナンスを実施しています。
さて、そんなナビゲーション(カテゴリ)に対する強いこだわりを持つステープルズが取り組んだことは、従来の売り手側の意図を反映させたものではなく、顧客が欲しい情報だけを表示させるアルゴリズムに変更することでした。サイト訪問ルート、過去の閲覧履歴、検索履歴などのデータを活用し、パーソナライズしたコンテンツを表示させるアルゴリズムを取り入れたのです。
モバイルサイトについては、コンバージョンが5倍以上に上がり、「Black Friday(感謝祭の翌日の金曜日)」では売り上げが184%増加しました。スマートフォンアプリ、タブレットアプリはまだローンチしたばかりですが、毎月改善を加えているそうです(タブレットはPCユーザーのシフトを想定した設計を行っているとのこと)。
ウェブに接続した端末を「KIOSK」に設置することで、売上は前年比29%増に
オムニチャネル戦略の1つとして、ウェブに接続した端末を「KIOSK」に設置。これにより、店頭の棚に陳列されていないステープルズの商品にアクセスできるようになりました。利用調査を行ったところ、55%が店頭で商品を探す方法として便利だと回答し、45%は店頭で取り扱っていない商品を購入したと答え、売り上げは前年比29%増加しました。
「KIOSK」はスモールビジネスと認識していたのは過去の事。端末設置による売り上げが増加していることから、今後も「KIOSK」内での端末利用を推奨するよう、ショップオーナーに対してインセンティブ制度を設けて利用を促していく方針を掲げています。
またもう1つのオムニチャネル戦略として、オンラインで注文し、店頭で受け取る機能をテスト的に実装しました。帰宅途中や外出時に店舗に立ち寄り、商品が受け取れるため、配送料がかからずにすぐ商品が手に入ります。利用者は年々増加し、既に600万ユニークビジターが利用、100万商品が受け取られ、昨年比39%の売上増加につながっています。
2013年7月に正式版としてローンチするとIRCEではアナウンスされ、予定通りローンチされたようです。そのサービス名称「buy online, pick up in-store」は注文後2時間後に商品を受け取ることが可能で、受取れなかった場合には何らかの特典が付くそうです。
「モバイルのトラフィックがこれからも増加していくと考えると、その情報を店舗と共有することで、顧客のショッピング体験をさらにパワーアップできないかと考えている」とFaisal Masud氏。
聴講者からコンテンツマーケティングについて考え方を質問されると、「今の商品説明文や画像は他企業でも利用されているもの。今後、顧客が欲しいと思う情報を念頭に、独自のコンテンツに切り替えていく方針」と回答しました。ステープルズの強さの秘訣はこうした技術力の高さと共に、優れたセールススタッフが支えていると何度も話し、高いリピート率が実現できていると話していました。
オムニチャネル戦略が注目を浴びるなか、昨年もIRCEに参加して感じたのは、日本の接客力の高さです。「顧客を中心に考える」とイベント中、何度も耳にしましたが、日本の企業は最初からお客を中心に考えていると思います。
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