武藤 綾子 2014/8/29 12:00

世界最大のECイベント「IRCE2014」の初日に終日実施された、アマゾンを活用して売り上げを最大化するための専門セミナー「Amazon & Me Workshop」。そのなかで、日本ではまだ提供されていない米国アマゾンだけの新プロダクトについての詳細な話を聞いてきました。将来的には日本でも導入される可能性があり、アマゾンジャパンで売り上げを伸ばしたい日本のEC企業必見のサービスです。

成長するアマゾンの理由を米国企業がひもとく

セッションの冒頭でEC向けソリューションを提供するChannel Advisor Corp.のCEO、Scot Wingo氏がECサイトに対してアマゾンの利用を推奨しました。なぜWingo氏がアマゾンをお勧めするのか――。それはアマゾンが卓越したビジネスモデルを構築し、今では自社サイトへアマゾンユーザーを誘導するための広告プロダクトを展開するなど、進化を続けているからでしょう。読者の皆さんにお伝えしたい点を紹介します。

2013年のアマゾンの売上高は前年比26%増。Eコマースの成長率が15%と言われるなかで、大きな成長を維持しています。2013年の小売業界における売上ランキングではWalmart、Costco、Targetに次いで4位にランクイン。アクティブバイヤー(会員数ではなく実際に購入しているユーザー数)は2億4千万以上で、前年と比べ19%増加しています。売上構成は60%が米国、40%がインターナショナルです。

アマゾンの急成長の背景には、「顧客を中心に据えた考え方があったから」とWingo氏は説明しています。徹底的に顧客の調査を行い、まず重要と考えたのは「Free Shipping(送料無料)」で、マーケティングコストを削減してFree shippingを実施。次に取り扱いジャンルを本からおもちゃ(TOY)に広げ、次々にジャンルを拡大していきました。

米国でもECサイトがアマゾンを利用するには「1st Party」(あるいはWholesale)と言われる方法と、「3rd Party」(あるいはMarketplace)の2つの方法があります。

「1st Party」は、アマゾンが商品を買い取って販売、自社で配送する方法で、「3rd Party」はショップがアマゾン内に商品を出品して販売する方法です。Wingo氏は「1st Party」と「3rd Party」が混在するこのパターンに着目した点がアマゾンの成長のカギだと付け加えました。

つまりショップがアマゾンで商品を販売することを受け入れることで、消費者にとって商品の選択肢が多様になり、かつ商品が比較されることで価格競争がアマゾン内で行われるようになりました。消費者はアマゾンで商品を比較検討し、価格を含めた他社情報を閲覧することによって、十分に商品を探した(検索した)と感じ、購入ステップに進むのです

アマゾンが買い取り、アマゾンが配送する方法「「1st Party」」だけでは不十分だったのです。「3rd Party」の受け入れは、結果として、消費者の満足度、利便性を向上させ、アマゾンを訪れる人々(トラフィック)が増加。アマゾンで売りたいというショップを呼び寄せる好循環を生んだのです。

Best traffic you can buy from internet.(ネットで集客するための最も良い広告)」。Wingo氏はアマゾンについてこう表現しています。アマゾンに出店することが、最も効率的に集客できる売り場ということを説明したのでしょう。

さらに、アマゾンの魅力はその基盤投資と顧客体験の拡張であるとも指摘しました。基盤では、フルフィルメント by Amazon(FBA)、Amazonウェブストア(出店)、Amazon ウェブサービス(クラウド)、チェックアウト by Amazon(CBA)などがあり、顧客体験の提供では、Kindle、FireTV、Amazon Prime、Amazon Prime Fresh、Amazon Mom/Studentなどが挙げられます。これらの基盤、サービスを上手に利用してこそアマゾンを活用した売り上げの最大化が実現すると強調していました。

日本でも導入されるかも? アマゾンユーザーを自社に誘導できる「Amazon Product Ads」

「1st Party」と「3rd Party」に加えて米国ではもう1つアマゾンを利用する方法があり、それについても言及しました。「Amazon Product Ads」という日本ではまだ開始されていない広告サービスになります。

「Amazon Product Ads」はアマゾンの新しいCPC(クリック課金型)広告で、商品データをアマゾンにフィードすることで、アマゾン内に広告が表示される仕組みです。アマゾンユーザーに自社サイトの商品を見せたいと思うショップには魅力的なサービスとなります。

「3rd Party」との違いは、アマゾンで商品を販売する場合にはアマゾン内で購入されますが、「Amazon Product Ads」を利用すると、アマゾンで商品を閲覧させ、購入は自社サイトで行われる点にあります。その際、アマゾンから自社サイトに誘導された手数料をアマゾンにCPCで支払う方式となります。

アマゾンで決済する場合、米国のアマゾンサイトでは「Add to Cart(カートに入れる)」というボタンが表示されますが、「Amazon Product Ads」では「Shop This Website」と表示されます。

米国アマゾンが展開している広告「Amazon Product Ads」

「Amazon Product Ads」への外部リンクの部分は「Shop This Website」と表示される

米国アマゾンが展開している広告「Amazon Product Ads」

アマゾンのデータフィード(自社の商品データをアマゾンに登録)すると商品ページが自動生成され表示される

米国アマゾンが展開している広告「Amazon Product Ads」

検索結果ページ以外にも、詳細ページを閲覧しているユーザーなどにも自社サイトへのリンクが表示される

「Amazon Product Ads」が「3rd Party」と異なる点をまとめてみます。

  • 自社の商品詳細ページにショッピングユーザーを誘導することが可能。「3rd Party」の場合、決済はアマゾン上で行われるため、どのお店で商品を購入したのか分かりづらい。「Amazon Product Ads」を利用するとショップで直接決済手続きを行うためショップの認知度が向上できます。
     
  • 「Amazon Product Ads」からの購買データが自社で保有できるようになります。メールやリターゲティングなどのプロモーションを行うことで、サイトへの再訪が期待できるのです。
     
  • アマゾンの出品サービスは購買に対する手数料を支払うモデルですが、「Amazon Product Ads」はクリック課金型です(入札した単価によるクリック課金型)。

「Amazon Product Ads」が日本で展開されるかはまだ発表されていません。しかし、アマゾンを利用するユーザーに自社商品を露出し、自社サイトへ誘導できるという仕組みは非常に魅力的でしょう。ユーザーとのタッチポイントがまた1つ増えるという点で大変興味深い広告だと感じています。

「Amazon Product Ads」を利用するためにはGoogle Product Listing Ads(商品リスト広告)と同様に、アマゾンへ商品データを登録する必要があります。当社ではGoogleや価格コムなどに登録するためのデータフィードサービス「DFO」を提供しているので、そうした観点からも「Amazon Product Ads」の日本でのサービス開始に注目しているところです。


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