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近年、さまざまな業界で採用され始めている「サブスクリプション」。このサブスクリプションのビジネスモデルも、ある意味で「買い物プロセスの省略」から生まれたサービスといえる。サブスクリプションとは、製品やサービスを定額で一定期間使用(利用)できるビジネスモデルのことだ。日本語では「定額制」や、略称の「サブスク」などと呼ばれることもある。

日本でこの言葉を一般消費者に広めたのは、音楽配信サービスだろう。2016年に日本市場に参入してきた「Spotify(スポティファイ)」、サイバーエージェントとエイベックスが手掛ける「AWA(アワ)」、ほかにも「Amazon Music Unlimited」や「Apple Music」、「LINE MUSIC」など、さまざまなサービスが展開されている。それぞれ聴けるアーティストや曲数などの差はあるが、「定額で音楽が聴き放題になる」という点では共通している。

音楽のサブスクのイメージ

音楽のサブスクが始まる以前は、CDショップやレンタルショップといった店舗が、消費者と音楽を結ぶ存在だった。しかし、そうした店舗での購入やレンタルは、われわれにとって不便と感じられることも多かったのだ。

CDを買うのにも、借りるのにも、まず店舗に行かないといけない。店舗でCDを見つけたら、それをレジに持って行き精算をする。買い物が終わってからも面倒なプロセスが多い。CDプレーヤーにCDをセットする。CDラックの整頓をする。レンタルであれば、店舗への返却も絶対に忘れてはいけない。

CDとサブスクの間の過渡期ともいうべき時期には、1曲単位でパソコンやスマートフォンにダウンロードする音楽配信も始まった。CDを買ったり借りたりするのと比べてプロセスは大幅に省略されたが、曲ごとに決済するプロセスはまだ残っていた。サブスクは、定額制にすることでそのプロセスを排除し、

たくさん音楽を聴きたい。

音楽をかけっぱなしにしておきたい。

曲ごとにいちいち決済するのが面倒くさい。

といった人たちを取り込むことに成功した。アカウントを作成し、クレジットカード情報などを登録しておくだけで、あとはいつでも、いろいろなデバイスから音楽を再生することができる

1990年代に日本の音楽CD市場は黄金期を迎え、その後、「CDが売れない時代」へと突入した。一部の人たちからは、「日本のアーティストがいい曲をつくらなくなったからだ」と批判する声が上がることもあるが、いわゆるCD不況は日本だけでなく世界中で起こっていることであり、原因は別のところにあったと考えたほうが自然だろう。

その原因こそ、先ほどからたびたび触れている「買い物のわずらわしさ」なのだ。

サブスクは、「買い物のストレス」から音楽ファンを解放した。買い物のわずらしさのために音楽を聴かなくなっていた人たちを、音楽に振り向かせたという功績も大きい。

アーティスト側からは当初、サブスクのサービスに楽曲を提供することに拒否反応もあった。自分がつくった曲は、「聴き放題」で聴かれるよりも、「曲を買った人」に聴いてもらいたい。アーティストでなくても、その気持ちは十分理解できるところだ。現にサブスクのサービスが始まったばかりの頃は、人気アーティストの楽曲が少なく、利用者としてはがっかりすることも多かった。

しかし、サブスクが浸透する流れの中で、大物アーティストらも続々とサブスクでの配信を解禁しているのだ。時代の流れには抗えないのだろう。

世の中のあらゆるものが「サブスク化」される

音楽以外のサブスクでは、「Netflix」や「Hulu(フールー)」、「Amazon Prime」などの動画配信サービスが活況を呈している。これも先ほどの音楽CDと同様、ユーザーは毎月定額料金を払うことにより、動画配信会社が提供する映画やドラマなどの映像作品を制限なく楽しめるようになっている。

最近は、こうした動画配信会社がオリジナル作品の制作も手掛けているが、その予算も年々膨らんでいる。オリジナル作品というと、低予算のものをイメージする人も多いかもしれないが、大物俳優が起用されたり、スケールの大きなSF作品がつくられたりもしているのだ。

「Netflix」はオリジナル作品の制作にとりわけ積極的で、2019年のオリジナル番組予算は実に150億ドル(約1.6兆円)にまで拡大しているのだ。同社の攻勢は既存の映画業界関係者たちも無視できなくなっており、スティーブン・スピルバーグ監督が「Netflixの作品をアカデミー賞から除外すべきだ」と意見表明するほどだ。

サブスクリプションサービスのイメージ

この“サブスクブーム”は、音楽や映画のコンテンツ配信のみならず、ほかの商品・サービスにも広がっている。

雑誌や漫画のサブスク。自動車やバイクのサブスク。洋服・子ども服・クリーニング・家具のサブスク。ウォーターサーバーやコーヒーサーバーのサブスクなどを利用している企業も多い。ラーメン屋や居酒屋などの飲食店まで、最近は定額食べ放題・飲み放題というサービスも始めている。いまや、探せばどんなジャンルでもサブスクサービスに当たるほどなのだ。

サブスクのメリットは、「好きなものをどれだけ使っても料金は一定である」という点だ。中には買い取り形式のものや、回数制限のあるサービスもあるが、1回ごとに商品の値札を見て、財布と相談する必要はない

サブスクが省略している買い物プロセスとしては、店舗への移動・決済・商品の包装・受け渡しなどが挙げられる。また、「選ぶ」についても、長い時間をかけて検討することはあまりない。いろいろなものを実際に使ったり、食べたり、試したりすることができ、また多くの場合は解約も簡単なので、たとえ商品選びに失敗しても、それほど痛手ではないだろう。

今、われわれが「わずらわしい」と感じることをいくつも省略しているサブスクリプションサービスは、ますます広がっていくものと考えられる。

サブスクで利用メリットが大きいものの「ある共通点」とは?

サブスクのメリットは、商品やサービスの価格が高いものほど感じやすいといえる。

たとえば自動車。今の若い人たちにとって、車は手の届きにくい高額商品の筆頭だ。地方に住んでいて、「車がないと暮らせない」という人以外、自動車を買う若者は少なくなっている。

そんな中、トヨタや中古車販売のガリバーなどは、サブスクで自動車を貸し出すサービスを開始している。新車価格で500万円ほどの車種が月々10万円以下で、200万円弱の車種なら4万円程度で乗れるだけでなく、税金や保険料も節約できるので、購入に比べて大幅に費用が圧縮される。

もちろん、これでも「高い」と感じる人もいるだろうし、「ずっと乗るなら買ったほうが安い」という意見もあるだろう。

ただ、「まとまったお金が貯まるまで時間がかかる」「子どもの成長に合わせて車を乗り換えていきたい」「買えば高額な新車に乗ってプライベートを楽しみたい」といった人には、経済的なメリットの大きいサービスなのである。

ファッションのサブスクのイメージ

女性の場合、ファッションにいちばんお金をかけているという人も多い。ただ、平均的な給与では、好きな服を好きなだけ買うということは叶わない。ブランド品も特別な買い物だろう。

そこでサブスクの出番である。定額で洋服が借り放題になるサブスクは、すでにいくつかある。自分では買い揃えられないほど多くの洋服を着ることができ、家で洗濯をしたり、服をクリーニングに出したりする必要もないのだ。月々1万円程度の利用料なら、毎月の洋服代より安く済むかもしれない。

シャネルやグッチ、エルメスなど、ブランド品のバッグを貸し出すサービスも現れた。「ラクサス」というサブスクのサービスでは、月額6800円でブランドバッグが使い放題になる。この金額で好きなブランドのバッグを使い回せるのは、ブランド好きな人にはかなりお得かもしれない。ラクサスがサービスを開始したのは2015年だが、会員数はすでに30万人を超えているというから、いかにこのサービスが浸透しているのかがわかる。あなたの職場にユーザーがいてもおかしくないだろう。

勘のいい人は、すでにお気づきかもしれない。

サブスクとレンタルが、とてもよく似ているということに。

自動車のサブスクは、毎月決まった料金を払えば、自分の好みの車に乗ることができる。ただしこれは、呼び方を変えればカーリースやレンタカーと変わらない。契約内容で細かな違いはあれど、その車は結局「自分の所有物」ではないのだ。

サブスクの中には、返却の必要のないもの(買い取り形式のサブスク、飲食のサブスクなど)もあるが、サブスクの存在理由の1つは、「所有するにはお金がかかるものを、手頃な価格で借りられること」なので、「サブスクといえば借りるもの」と認識する人も増えている。

実際、サブスクとレンタルの境界線はあいまいになってきている。サブスクを利用するかどうかの選択は、「所有するか、所有せずに借りるか」と同義になりつつあるということなのだ。

そして今、その「所有」の概念が大きく変わりつつある。

この記事は『2025年、人は「買い物」をしなくなる 次の10年を変えるデジタルシェルフの衝撃』(望月智之 著/クロスメディア・パブリッシング 刊)の一部を特別に公開しているものです。

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デジタル先進国である米国、中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集している筆者が、近い未来の消費行動や求められるECのあり方を予測する。

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望月 智之

株式会社いつも.

1977年生まれ。株式会社いつも.取締役副社長。

自らデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの第一人者として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。

ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

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