雇用シェア(在籍型出向制度)で雇用を維持、出向元と出向先の事業者に運営経費を助成する「産業雇用安定助成金」とは
政府は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で事業活動が一時的に縮小している事業者が、出向で労働者の雇用を維持する場合、出向元と出向先の双方の事業者に運営経費を助成する「産業雇用安定助成金」(仮称)を創設する。
2020年12月15日に閣議決定された令和2年度第3次補正予算案に盛り込んでいる。2021年1月の通常国会での予算案承認、厚生労働省令の改正などを経て確定する。
「産業雇用安定助成金」は、出向する労働者に関する一部経費について、出向元事業者と出向先事業者が共同事業主として支給申請を行い、それぞれの事業者へ助成金を支給する制度。申請手続きは出向元事業者が行う。
たとえば、コロナの影響で輸出が減少した中小企業メーカーが、従業員を百貨店・総合スーパーへ出向。受け入れ企業は、出向者の生産工程管理の技術を自社の社員へ承継するなどのケースを想定している。
助成金の対象となる「出向」
- 対象:雇用調整を目的とする出向(新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業者が、雇用の維持を図ることを目的に行う出向)
- 前提:出向期間終了後は元の事業所に戻って働くこと
- 要件:出向元と出向先が、親子・グループ関係にないなど、資本的、経済的・組織的関連性などからみて独立性が認められること。出向元で代わりに労働者を雇い入れる、出向先で別の人を出向させたり離職させる、出向元と出向先で労働者を交換するなど、玉突き雇用・出向を行っていないこと
助成率・助成額
出向運営経費
出向元事業者および出向先事業者が負担する賃金、教育訓練、労務管理に関する調整経費など、出向中に要する経費の一部を助成
出向初期経費
就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業者が出向に際して行う教育訓練、出向先事業者が出向者を受け入れるために用意する機器や備品など、出向に要する初期経費の一部を助成
助成対象となる経費
- 出向開始日が2021年1月1日以降の場合
出向開始日以降の出向運営経費、出向初期経費が助成対象となる - 出向開始日が2021年1月1日より前の場合
1月以降の出向運営経費のみ助成対象となる
助成額比較例(イメージ)
雇用調整助成金は縮小する予定、「産業雇用安定助成金」で雇用を維持する方針
政府は2021年2月までの延長を決めた現行の「雇用調整助成金」特例措置を、3月から縮減する方針を示している。
「雇用調整助成金」は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で売り上げが減少した事業者が休業手当を支給して従業員を休ませた場合、政府がその費用の一部を助成する制度。
「雇用調整助成金」でも雇用調整を目的とする出向に関する助成があるものの、助成は出向元の事業者だけが対象となっており、従業員を休業させた場合よりも低い金額となっている。
こうしたことを踏まえ、政府は出向元と出向先の双方の企業に助成金を支給する「産業雇用安定助成金」の創設を決めた。