ジャパネットが航空業界の従業員をコールセンターで出向受け入れ。「社会全体で新型コロナを乗り越えられるように行動します」
ジャパネットホールディングスのグループ会社で、注文の受け付けから購入後の問い合わせ対応などを行うジャパネットコミュニケーションズは2月2日、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けている航空業界の従業員を、出向者として受け入れることを決定したと発表した。
中部国際空港における国内外の航空会社の空港地上業務を受託するドリームスカイ名古屋から65人の従業員を出向者として受け入れる。新型コロナウイルス感染症拡大の影響が収束した後、ドリームスカイ名古屋に戻ることを前提とした期間限定での出向となる。
業務内容は注文の受け付けや問い合わせ対応などのコールセンター業務。「空港地上業務を行う中で培われた高いホスピタリティや応対品質は、弊社がお客さまと接する中で大切にしている『質の高いコミュニケーション』に共通する部分が多くあると考えている」(ジャパネットホールディングス)としている。
就業場所はドリームスカイ名古屋社員寮(愛知県常滑市)とジャパネットコミュニケーションズ本社(福岡県福岡市)。ドリームスカイ名古屋社員寮では、最上階フロアにコールセンターの設備を設置し、業務環境を整える。
お互いに良い刺激を与え合いサービス向上にもつなげていくことを期待しています。このような状況の今だからこそ少しでも世の中に貢献できることをめざし、社会全体で新型コロナウイルスを乗り越えられるように行動してまいります。
コロナ禍の巣ごもり消費ニーズの増加を受けて、通販・EC業界は好調とされている。こうした状況下、アスクルの100%子会社で物流業務を手がけるASKUL LOGIS(アスクルロジスト)も、全国の空港で航空機地上支援業務(グランドハンドリング業務)を幅広く担うスイスポートジャパンの従業員を、出向者として受け入れる取り組みを始めている。
出向者は約6か月間、物流センター内の庫内業務に従事する。主な業務は、ピッキング、商品補充、梱包、検品など。空港業務の需要が回復するまで期間を定め、物流業務に従事してもらいコロナ禍における雇用維持につなげる。
雇用シェア(在籍型出向制度)で雇用維持を図る取り組みを政府が後押し
ジャパネットやアスクルの取り組みは、雇用シェア(在籍型出向制度)と呼ばれており、コロナ禍における雇用維持の観点から政府も後押しをしようとしている。
政府は進めようとしているのが新たに制度の創設。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で事業活動が一時的に縮小している事業者が、出向で労働者の雇用を維持する場合、出向元と出向先の双方の事業者に運営経費を助成する「産業雇用安定助成金」(仮称)だ。
2021年の通常国会で可決された令和2年度第3次補正予算案に盛り込まれており、厚生労働省令の改正などを経て確定する見込み。
「産業雇用安定助成金」は、出向する労働者に関する一部経費について、出向元事業者と出向先事業者が共同事業主として支給申請を行い、それぞれの事業者へ助成金を支給する制度。申請手続きは出向元事業者が行う。
たとえば、コロナの影響で輸出が減少した中小企業メーカーが、従業員を百貨店・総合スーパーへ出向。受け入れ企業は、出向者の生産工程管理の技術を自社の社員へ承継するなどのケースを想定している。
助成金の対象となる「出向」
- 対象:雇用調整を目的とする出向(新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業者が、雇用の維持を図ることを目的に行う出向)
- 前提:出向期間終了後は元の事業所に戻って働くこと
- 要件:出向元と出向先が、親子・グループ関係にないなど、資本的、経済的・組織的関連性などからみて独立性が認められること。出向元で代わりに労働者を雇い入れる、出向先で別の人を出向させたり離職させる、出向元と出向先で労働者を交換するなど、玉突き雇用・出向を行っていないこと
助成率・助成額
出向運営経費
出向元事業者および出向先事業者が負担する賃金、教育訓練、労務管理に関する調整経費など、出向中に要する経費の一部を助成
出向初期経費
就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業者が出向に際して行う教育訓練、出向先事業者が出向者を受け入れるために用意する機器や備品など、出向に要する初期経費の一部を助成
助成対象となる経費
- 出向開始日が2021年1月1日以降の場合
出向開始日以降の出向運営経費、出向初期経費が助成対象となる - 出向開始日が2021年1月1日より前の場合
1月以降の出向運営経費のみ助成対象となる
助成額比較例(イメージ)
政府は2021年2月までの延長を決めた現行の「雇用調整助成金」特例措置を、3月から縮減する方針。「雇用調整助成金」でも雇用調整を目的とする出向に関する助成があるものの、助成対象は出向元の事業者のみ。また、従業員を休業させた場合よりも低い金額となっている。
こうしたことを踏まえ、政府は出向元と出向先の双方の企業に助成金を支給する「産業雇用安定助成金」の創設を決めた。