通販新聞 2021/1/28 9:00

ZOZO(ゾゾ)は今期(2021年3月期)、センスのある個人と一緒にファッションブランドを作るD2C事業「ユアブランドプロジェクト・パワードバイ・ゾゾ」をスタートし、一定の成果を得ている。同プロジェクトではブランドの立ち上げに必要なすべての工程を「ゾゾタウン」で培った知見とネットワークを活用して全面的にバックアップする。

PB「ゾゾ」や「ウェアリスタ」でD2C事業の土台を構築

同社はプライベートブランド(PB)の「ゾゾ」で生産面の土台を作ったほか、販売面では「ゾゾタウン」が順調に成長を続けている。販促面でもファッションコーディネートアプリ「ウェア」で育てた公認ファッショニスタの”ウェアリスタ”を中心にインフルエンサーがプロモーションを仕掛けるなど、生産、販売、プロモーションの体制が整った。

加えて、今期は「MORE FASHION×MORE TECH」をコンセプトにした成長戦略を打ち出しており、従来の”売ること”だけでなく、新たな価値を創造する商品を自ら生み出して世に広めていくことが必要と考え、D2C事業を始動することになったという。

ユアブランドプロジェクトのリーダーは、「ウェア」を中心にインスタグラムやユーチューブ、ティックトックなどのSNSで活躍するインフルエンサーを活用した施策を手がける藤本真美さんで、自身もインスタグラムで1万4000人、「ウェア」で約7万7000人のフォロワーを抱える。

通販新聞 ZOZOTOWN D2C YOUR BRAND PROJECT インフルエンサー 藤本真美さん
「YOUR BRAND PROJECT」リーダーの藤本真美さん

プロジェクトは藤本さんが主体となって参加者(インフルエンサー)と二人三脚で推進。自らもブランド作りに初めて挑戦し、「nimiru(ニミル)」を立ち上げることで、D2C事業のプロトタイプ作りに役立てるとともに、参加者の適切なサポートを行えるようにした。

藤本さんのチームで参加者のマネジメントや商品企画を行いながら、生産面はPBの担当部署、販売面ではEC事業本部など各部署と連携している。

一般公募から参加者を選定。大半がブランド開発経験なし

「ユアブランドプロジェクト」は昨年6月15日から一般公募オーディションを開始。応募総数は約7000人で、「ウェア」利用者やファッション分野以外で活動する人、学生や主婦も多く、幅広い層から応募があった。

参加者を絞り込む過程では、熱量を持ってエントリーシートに記入している人を重視。意欲やブランド開発に向けて具体的なビジョンを持っている人、ブランドにかける覚悟などが垣間見られる人を選んだ。

合格者を含め、お笑い芸人の丸山礼さんや人気野球ユーチューバーのトクサン、ファッションデザイナーの日髙琴葉さん、スタイリストの濱本愛弓さんなど個性豊かな18組を選出。参加者の大半がブランド開発の経験がないという。

また、ゾゾから声がけしたウェアリスタと、「ゾゾタウン」出店ブランドとのコラボやD2Cブランドを立ち上げており、いずれも「ゾゾタウン」限定で商品を販売している。

「自前主義精神」でブランド開発から製作まで社内で完結

10月下旬からD2Cブランドを順次ローンチしたが、7月中旬の合格者発表から約3カ月で各ブランドをスタートできたのは、業務を極力外注せずに内製化するというゾゾの”自前主義精神”によるところが大きく、今回のブランド開発に当たってもコンセプト作りやブランドのロゴといった服作りの手前の制作面でもデザイナーの部署などと連携することで、社内で完結できた

生産面はPB事業やマルチサイズプラットフォーム(MSP)事業の協力を得るなど、「ゾゾが持つノウハウをすべて生かしてインフルエンサーさんも含めたワンチームで取り組んだ」(藤本さん)という。

また、藤本さん自身もブランド「ニミル」を手がけた。これまで商品企画や販売については経験がなかったが、同プロジェクトではインフルエンサーと短期間でブランドを開発し販売する必要があったため、自身のブランドを約1カ月早く立ち上げることで、課題や成果を共有できるようにした。

通販新聞 ZOZOTOWN D2C YOUR BRAND PROJECT インフルエンサー 藤本真美さん nimiru ニミル
藤本さんのブランド「nimiru(ニミル)」
(画像は「ZOZOTOWN」サイトから編集部がキャプチャし追加)

藤本さんは「ウェア」やインスタグラムを通じた発信を続けており、D2Cブランドの告知やPR面などの成功事例をアドバイスできるほか、インフルエンサーと同じ目線で取り組めるように努めているという。

インフルエンサーの発信力×ゾゾのノウハウ

ZOZO(ゾゾ)は、センスのある個人と一緒にファッションブランドを作るD2C事業「ユアブランドプロジェクト・パワードバイ・ゾゾ」の出だしが好調だ。

生産業務を自社で行うことで利益率を高められるのに加え、プロモーションでは参加するインフルエンサーが積極的に情報発信することで、大きな費用をかけることなく購入につながっている。

「ユアブランドプロジェクト」の商品作りについては、基本的には各インフルエンサーの意見を聞いた上で、流行りのシルエットなど「ゾゾタウン」の売れ筋を踏まえた意見を顧客目線で伝えるなど、インフルエンサーの思いに加え、服好きなゾゾ社員の感覚とデータ、これまで培ってきたサプライチェーンのノウハウを投入して商品化した。

D2Cブランドは昨年10月22日から順次始動。「ゾゾタウン」での販売から5分程度で在庫切れが相次ぎ、発売当日に全商品が完売したブランドもあった。プロジェクトの中で売り上げトップのブランドは、通常の新規ショップ開設後5日間の平均値と比べて売上高が6倍に、1品番当たりの売上高が200倍になった

フォロワーとのコミュニケーション強化が重要

出だし好調の背景としては、プロジェクト参加者(インフルエンサー)によるSNSでの積極的な情報拡散がある。合格者を発表した9月下旬からの約1カ月間、参加者は自身のSNSのストーリーズやライブ配信、イベントカレンダーの設定といった機能をフル活用してブランドコンセプトや商品の紹介を行った。

通販新聞 ZOZOTOWN D2C YOUR BRAND PROJECT インフルエンサー ブランド一例
「YOUR BRAND PROJECT」のブランド一例
(画像は「ZOZOTOWN」サイトから編集部がキャプチャし追加)

発売開始前に全ラインアップを発信し、質問を受け付けて丁寧に答えることで、販売開始前に商品の不明点やサイズの不安を払拭したほか、当日の販売状況をリアルタイムでシェアするなど、参加者とフォロワーとのコミュニケーション強化が奏功した

プロジェクトリーダーの藤本真美さんによると、初速が良かったブランドの共通点は、「インフルエンサーがブランドに対して”自分事”として取り組んだこと」とする。

動画コンテンツを駆使し、売り上げにつなげる

今回、SNSのフォロワー数は数万人規模から、20~30万人までプロジェクト参加者の発信力に差はあったものの、インスタグラムのライブ配信など動画コンテンツを駆使し、継続的に配信することでフォロワー数が数万人の参加者でもしっかり売り上げにつながった。また、初日から完売アイテムが出たことは各インフルエンサーのモチベーションにつながったという。

藤本さんも自身のブランド「nimiru(ニミル)」のアカウントを通じて販売開始の1週間前や前日にインスタライブを実施。藤本さんもプロジェクトの各参加者と同様に本業がある中でブランドを立ち上げているが、「頑張ればできるということを示したかった」とし、参加者にライブ配信を参考にしてもらったという。

通販新聞 ZOZOTOWN D2C YOUR BRAND PROJECT インフルエンサー 藤本真美さん

すでに、21年春夏シーズンに向けた商品企画を進めており、各D2Cブランドの展開型数は大きくは増やさず、1型当たりの販売数拡大に努める。

男性向け、異業種のインフルエンサー参加に期待

ただ、将来的にはD2Cブランドの展開型数や販売数を爆発的に伸ばしたい意向で、「ゾゾタウン」の取扱高拡大に貢献することを目指す。また、利益率向上への寄与や、各インフルエンサーが抱えているフォロワーを「ゾゾタウン」の新規会員として獲得することなども重視する。

足もとでは、20年秋冬シーズンにデビューしたD2Cブランドをしっかり育成しながら、新しいインフルエンサーの発掘も進めるほか、「成功パターンの再現率を高め、継続的に取り組んでいけるかが重要になる」(藤本さん)としている。

なお、今回のD2Cブランドはジャンル、年齢層は幅広かったものの、アパレル業界のインフルエンサーや女性向けブランドが多かったことから、今後は男性向けのブランドや、異業種で活躍するインフルエンサーの参加にも期待している

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