大規模ECサイトでやるべき広告施策① 「スマートショッピングキャンペーン」の使い方と売上拡大に必須の設定
大規模ECサイトでやるべき広告施策についてお伝えします。対象になるのは、商品データが数千件から数万件あり、それぞれの商品をカテゴリで分類して掲載している規模の大きなサイトです。ということは、広告したい商品やサービスも数千件から数万件あることになります。
かつてはものすごく大変だった大規模ECサイトの広告出稿
上の図は、以前行っていたキャンペーン構成を「漫画」を例に簡単に図化したものです。表記ゆれは上記以外に「まんが」「manga」などもあります。また「コミック」といった異なる名称も同様に設定していました。これに「作品名」や「著者名」「出版社名」なども加えると、それは気の遠くなるような膨大なキーワードが生成されます。
そのキーワードの数だけ器となるグループが存在し、広告文を複数作成していました。媒体によっては、1グループに入れられるキーワード数に制限があるので、複数のアカウントを作成しなければならない場合もあり、広告運用に苦戦されていた方も少なくないでしょう。
しかし今はそのような広告構成は広告媒体から推奨されておりません。広告に関するテクノロジーの進化により、整えられたサイト構成=カテゴリとデータベースを活用し、簡単に広告を出稿できるようになりました。カテゴリとデータベースを活用した広告プロダクトはとても重要で、小売業の方に大いに活用していただきたいものです。
前編・後編に分けて6つのポイントをお届けします。前編が導入時や配信スタート時に関する内容で、後編は実施後、さらに売り上げを拡大することに重点を置いた内容になります。
前編
ポイント① データベースを活用した広告プロダクト「スマートショッピングキャンペーン」
ポイント② 「スマートショッピングキャンペーン」の導入方法
ポイント③ 売上を拡大するために必須な設定条件
後編
ポイント④ 整頓されたサイト構成=カテゴリが重要な理由
ポイント⑤ カテゴリに沿ったサイト構成を活用できる、もう1つの広告プロダクト
ポイント⑥ 大規模ECサイトで採用したい目標指標とその理由
まとめ
ポイント① データベースを活用した広告プロダクト「スマートショッピングキャンペーン」
データベースを活用した広告の代表として、Googleのスマートショッピングキャンペーンがあげられます。すでに導入している企業も多いと思いますが、SEOでカテゴリを整えた後、整頓された商品データフィードを広告のアセット(材料=画像・タイトル・説明など)として活用できる広告プロダクトです。私の経験上、手動でセットしているキャンペーンより高い成果が出ています。
小売以外のECサイトではこのスマートショッピングキャンペーンは利用できないのですが、同じような仕組みを配信の手法とした「動的リマーケティング広告」があります。「動的リマーケティング広告」の説明は割愛しますが、求人や旅行予約、不動産賃貸などのジャンルの大規模ECにおいて高い成果が出ていますので、また別の機会にお伝えできればと考えています。
「スマートショッピングキャンペーン」と通常のショッピングキャンペーンの違い
従来からある通常のショッピングキャンペーンは検索ネットワークのみに広告を掲載できますが、スマートショッピングキャンペーンは、検索ネットワークに加えてディスプレイネットワーク、YouTube、Gmailにも配信可能です。
名称が似ているので混乱するかもしれませんが、通常のショッピングキャンペーンとは設定方法や配信面が異なるので、現在ショッピング広告を実施している場合は、ご自身が実施しているフォーマットがどちらなのかをまず確認してみるとよいでしょう。
上記はショッピング広告の掲載例です。実は、ここで表示されている広告が通常のショッピングキャンペーンなのか、スマートショッピングキャンペーンなのかは不明です。しかし、通常のショッピングキャンペーンよりスマートショッピングキャンペーンが優先されるので、ここに掲載されている広告はスマートショッピングキャンペーンである可能性が高いと言えます。
「スマートショッピングキャンペーン」ではコンバージョンしたキーワードが確認できない
通常のショッピングキャンペーンは商品や入札戦略、ターゲティングなどを自由に設定できますが、スマートショッピングキャンペーンはその名の通り「スマート」なので、コンバージョン値の最大化を目的とした自動入札により広告が自動的に運用調整されていきます。
通常のショッピングキャンペーンでは検索語句が確認でき、どのキーワードでコンバージョンしたかを確認できたのですが、スマートショッピングキャンペーンでは検索語句を確認できません。
一見、自分の手で設定でき、検索語句も確認できる通常のショッピングキャンペーンの方が使いやすいと感じるかもしれません。しかし、スマートショッピングキャンペーンはディスプレイネットワークにも配信されるため、圧倒的な配信量とそれに伴う商品に対する喚起を促すことができるため、成果は上がります。
たとえば、「検索ネットワークは通常のショッピングキャンペーンで、ディスプレイや他の面ではスマートショッピングキャンペーンを使ったらどうか」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、スマートショッピングキャンペーンは配信面を選べません。両方を同時に走らせると、通常のショッピングキャンペーンとスマートショッピングキャンペーンがバッティングし、配信に悪影響が出る可能性が高いのでお勧めしません。
ポイント② 「スマートショッピングキャンペーン」の導入方法
スマートショッピングキャンペーンも通常のショッピングキャンペーンも、共通するのはGoogleが用意した小売業向けの「Google Marchant Center(グーグル・マーチャントセンター)」を導入することです。そして、自社データベースとマーチャントセンターをリンクさせ、商品情報をマーチャントセンターに送る設定をすれば、配信準備が整います。
自社データベースとマーチャントセンターをリンクさせる方法はいくつかあります。詳しくはヘルプページをご覧ください。
- フィードをアップロードする | Google Marchant Centerヘルプ
https://support.google.com/merchants/answer/188477?hl=ja
カートシステムをご利用の場合は、それぞれにショッピング広告への配信オプションなどが用意されているかと思いますので、そちらをご覧ください。
検索結果のショッピング広告枠には無料掲載ができる
現在、マーチャントセンターに格納されている商品データフィードを基にした無料リスティングが掲載可能です。これは広告ではないので、文字通り無料でGoogleのショッピングタブや画像検索タブなどに掲載されます。
広告を掲載する、しないに関わらず、EC小売業なら売り上げにつながる道が増えるので、マーチャントセンターは大いに活用しましょう。
Facebookの「カタログ」とは?
ちなみにFacebookにもマーチャントセンターと似た機能があります。「カタログ」と呼ばれるデータフィード機能で、自社データベースとの接続機能も付いています。「カタログ」を導入することで、FacebookやInstagram上で、広告を介さずに商品を販売できます(詳しくは単品系通販の回で解説します)。
ポイント③ 売上を拡大するために必須な設定条件
スマートショッピングキャンペーンで売上を拡大するために必須なこと、それは、美しく鮮明な商品画像の設定と、充実した商品データベースのつなぎ込みです。
必須条件1:美しく鮮明な商品画像
ショッピング広告の大きな特徴は実際の商品画像をそのまま広告として利用できることです。ユーザーはサイトに訪れる前に商品を画像で確認でき、魅力を感じたらサイトに訪問し、購買行動を行います。そのため、ショッピング広告に掲載する画像はとても大切な役割を担っています。
ショッピング広告で使用できる画像は、ガイドラインをクリアしたものに限ります。
- 商品画像リンク [image_link]について | Google Marchant Centerヘルプ
https://support.google.com/merchants/answer/6324350
画像が不鮮明であれば、売り上げにつながりにくいことは言うまでもなく、マーチャントセンター内の審査で落ちてしまうこともあります。鮮明/不鮮明の線引きは難しいのですが、少なくとも見るに堪える画像である必要があります。
同時に、美しい商品画像は人の興味を喚起し購買意欲をそそります。華美な装飾や演出はガイドラインに抵触するのでショッピング広告の画像としては不適切ですが、「手に取ってみたい」と思わせるような画像を設定しましょう。
ここ数年、画像を変更していない商品があるようでしたら、ぜひこの機会に見直してみることをおすすめします。
必須条件2:充実した商品データフィード
ショッピング広告は通常のリスティング広告と違ってキーワードを設定しません。では何をターゲットとして広告を配信するのでしょうか? それは、マーチャントセンターに格納されている商品情報です。ユーザーが能動的に検索したタイミングでショッピング広告が表示されることで、新規ユーザーにアプローチでき、ブランド認知や購入の可能性が高まるので、商品情報は充実させておくべきです。
そのために必要なのが、自社データベースにある情報をデータフィードとしてマーチャントセンターに格納する際、所定の項目をきちんと埋めることです。商品情報をマーチャントセンターへ送る方法には、以下の3つがあります。
1. 自社データベースから直接マーチャントセンターへ商品情報を送る場合
自社データベースでは独自の呼び方や独自のカテゴライズが可能ですが、マーチャントセンターに格納する際は、マーチャントセンターが用意しているカラムにデータが入るようにしなければなりません。
自社データベースから直接マーチャントセンターにつなぎたい場合は、自社データベースの商品データをマーチャントセンターのフィードのカラムにマッチさせるために、何かしらの手段でフィードを作成、アップロード方法を指定し、格納する必要があります。
マーチャントセンターには、フィードのルールを作成する機能があるので、マーチャントセンター内である程度の調整は可能です。
2. カートシステムを介してマーチャントセンターへ商品情報を送る場合
カートシステムを利用している場合、各カートシステムでマーチャントセンター用にフィードを生成し格納できるサービスが用意されていることがあります。
その際、自社サイト用の商品項目のカラム以外に「広告用」とか「ショッピング広告用」といった項目で、広告用の文言をカスタム設定できるケースがあるので、そちらにも商品情報を入力していくことが重要です。
ショッピング広告枠のタイトルカラムは短いので、例えば、商品タイトルの冒頭にキャッチコピー的な内容を入れてしまうと、商品名がわからなくなります。
テキスト広告の場合は購入意欲を向上させる「送料無料」や「限定品」といった文言を冒頭に持ってくることがありますが、ショッピング広告の場合、それは適切ではない、ということです。
また、カートシステムから「広告用カラムは記載を省略してもよい」とアナウンスされていたとしても、用意されている広告用のカラムはすべて埋めるようにしましょう。
3. フィード生成ツールからマーチャントセンターへ商品情報を送る場合
おそらく、一番適切にマーチャントセンターへフィードを送れるのは、第三者のフィード生成ツールを利用することです。詳細はサービスによって異なるため割愛しますが、フィードを作ることに特化しているツールですので、ショッピング広告で表示される際、ユーザーに届く文言を改めて設定し、購買行動を起こしてもらうためのテストなども実施できます。
最後に、マーチャントセンターに格納するフィードの主要な商品データについて簡単にまとめました。☆(必須)または○(任意)の項目はぜひ記載しておきたい情報です(△は必要な時のみ)。
主な商品データ一覧
どんなにスマートな広告プロダクトであっても、効率良く運用フェーズに乗せるためには、それなりに人が考え、手を加える必要があります。すでにスマートショッピングキャンペーンを導入されている方も、今一度、適切な設定が行われているか確認してみてください。
後半は、整えられたサイトを上手に活用しながら売り上げを拡大していくために、何を目標にして広告運用していくべきか、という内容を中心にお伝えします。