河野 芽久美 2021/8/25 8:00

前回は、大規模ECサイトととても親和性の高い広告プロダクト「Googleショッピング広告」の重要性と、導入や設定のポイントについてお伝えしました。

今回は、より売り上げを拡大するためには何をするべきかについて、3つのポイントをわかりやすくまとめました。

前編(前回)

ポイント① データベースを活用した広告プロダクト「スマートショッピングキャンペーン」

ポイント② 「スマートショッピングキャンペーン」の導入方法

ポイント③ 売り上げを拡大するために必須な設定条件

後編(今回)

ポイント④ 整頓されたサイト構成=カテゴリが重要な理由

ポイント⑤ カテゴリに沿ったサイト構成を活用できる、もう1つの広告プロダクト

ポイント⑥ 大規模ECサイトで採用したい目標指標とその理由

ポイント④ 整頓されたサイト構成=カテゴリが重要な理由

商品点数が数千以上ある大規模ECサイトの場合、商品の構成や価格帯の混在が想定されます。たとえば、1つのサイト内にファッションから日用品、家具まで取りそろえている場合、大カテゴリの配下に中カテゴリ、小カテゴリがいくつも並ぶことになり、膨大な数になるでしょう。

仮に、ファッションのように1つのテーマに特化したECサイトであっても、中カテゴリ、小カテゴリは存在し、その数も少なくないはずです。

前回、Googleショッピングキャンペーンについて説明するなかで、カテゴリが重要だとお伝えしましたが、それには2つの理由があります。

理由1:ターゲット設定は整頓されたカテゴリなしで実現しないから

ショッピングキャンペーンのターゲット設定については、キーワードではなく商品のフィード情報をもとに行います。マーチャントセンターに格納されているフィードには、商品属性を示す「カテゴリ」という項目が用意されており、Google広告につなぎ込まれる際、そのカテゴリ情報が「商品グループ」として組み込まれます。

Google広告の管理画面より
Google広告の管理画面より

厳密には、自社サイトのカテゴリと実際にターゲットとして使われるGoogleが定めたカテゴリはすべてが同一ではなく、異なるケースもあります。しかし、多くはブレることなく置換されますので、重要なのは自社サイトのカテゴリを商品属性に合わせて最適に分類することだと言えます。

大規模ECサイトにおけるファッション分野のカテゴリ例(一部)
大規模ECサイトにおけるファッション分野のカテゴリ例(一部)

上の図は、いろいろな商材を扱う大規模ECサイトで、ファッションを大カテゴリに仮定したカテゴリ構造の例です。

今までの広告は、「レディースファッション」「フレアスカート」「ロングスカート 麻」といったキーワードをターゲットとして設定していましたが、サイトのカテゴリ構成が整っていなくてもキーワードの設定はできるので、「いかに売れるキーワードを見つけるか」「設定したいキーワードに合ったページが無い場合、どこをランディングページに設定するか」といったことに注力していたでしょう。

しかし、ショッピングキャンペーンの場合、サイトのカテゴリ情報=Google広告の商品グループ=ターゲット設定になるため、カテゴリは整えられている必要があるのです。

Google広告管理画面の商品グループ確認ページの例
Google広告管理画面の商品グループ確認ページの例

上の図の一番左にある「商品グループ」は、Googleマーチャントセンターから取り込まれたカテゴリ情報が記載されています。ここではカテゴリ階層の小カテゴリまで実績を確認でき、この商品グループの情報を使って、広告を出す/出さないの設定をすることも可能です。

個別の商品については別タブで確認できますが、この商品グループのページでは、カテゴリ別の実績を確認できます。現状の売れ筋や各カテゴリの効率を確認することで、効率的な商品グループ群に予算を割り当てるなど、売上最大化に向けたプランが立てられます

しかし、カテゴリが適切に設定されていないと、商品グループも適切に分けられず、適切な配信や売上最大化を妨げる要因になりかねないため、サイトのカテゴリを整頓する必要があるのです。

理由2:カテゴリごとに価格帯が異なるから

たとえば、ファッションから家具まで取りそろえている総合通販の場合、

  • ファッション商品……平均商品価格:4,000円 / 平均客単価:5000円
  • インテリア商品……平均商品価格:8,000円 / 平均客単価:12,000円

というように、カテゴリによって商品の価格帯や客単価は異なるのではないでしょうか。そして、売り上げが違えば予算や目標値が変わり、同一キャンペーンでの効率化が厳しくなることが予想できます。

ショッピングキャンペーンでは「コンバージョン値の最大化」という自動入札がデフォルト設定となっており、その時、機械学習で使われる指標は「ROAS」(Return On Advertising Spend/広告の費用対効果)です。

ROASの考え方
ROASの考え方

多くの場合、商品価格帯が異なると、同じ広告費をかけたとしてもコンバージョンの頻度や売上高が異なります。同じような商品価格帯、同じようなコンバージョン頻度の商品グループを同一キャンペーンで運用することが、効率的な広告運用のカギです。

平均単価が異なる商品とROASの例
平均単価が異なる商品とROASの例

商品価格帯が異なる商品グループを同一キャンペーン内で運用すると、コンバージョン値(売上高)の最大化を目的とした自動入札では、機械学習の期間が長くなったり、価格帯の高いグループに広告配信が寄ってしまうことが考えられます。そうなると、価格帯の低い商品グループに配信抑制がかかり、広告する機会が減りかねません

これは一例に過ぎませんが、ショッピングキャンペーンにおいて売上最大化をねらう上で、広告したい商品群を適切に分けることは必須であり、そのためには、カテゴリを整えることが必要なのです。

ポイント⑤ カテゴリに沿ったサイト構成を活用できる、もう1つの広告プロダクト

ここまでショッピングキャンペーンのお話をしてきましたが、もう1つ、大規模ECサイトの広告に最適な広告プロダクトがあります。それは、「動的検索広告」です。動的検索広告もキーワードをターゲットとせず、サイトのカテゴリやページURL、ページタイトルなどをターゲットとして広告を配信するプロダクトです。

動的検索広告の場合は、マーチャントセンターと直接つなぎ込みを行いません。また、このプロダクトはGoogleだけではなく、Yahoo!の検索広告にも実装されています。

両媒体とも動的検索広告のターゲット設定の方法は似ており、広告文のタイトルを設定する必要もありません。広告の説明文を複数(3本程度)作成・設定すれば、広告の配信をスタートできます

広告のタイトルは、検索語句とマッチした商品ページのタイトルがそのまま掲載されるケースが多く、そのためクリック率も総じて高い、とても優秀な広告プロダクトだと筆者は考えます。

たとえば、新商品が発売されるなど商品情報がプラスされた時、新しいURLを同一カテゴリのグループ内に設定すれば、審査等のタイムラグは発生しますが、迅速に広告が開始できます。また商品の欠品など、そのページを広告したくない場合も、ターゲットをオフにしたり、除外キーワード設定を行うといった簡単な設定で、すぐに広告を停止できます

Googleの場合

Google広告ではグループレベルで設定でき、WebページのカテゴリやURL情報を用いて細かく設定できます。マーチャントセンターと接続していたり、サイト内のカテゴリの構造化をGoogleがクロールできたりすれば、「おすすめのカテゴリ」という項目も表示され、設定に活用できます。

それとは別に、独自のフィードをアップロードすることもできます。そのフィード上で商品にラベルを設定しておけば、マーチャントセンターに設定されているカテゴリとは異なる商品ページ群をカテゴライズすることも可能です。

Google広告管理画面の動的広告グループの設定画面
動的広告グループの設定画面(Google広告管理画面より)

Yahoo!の場合

Yahoo!検索広告の場合、設定はキャンペーンレベルで、商品情報のフィードをアップロードする必要があります。フィードの必須情報は「URL」とそれに対する「カスタムラベル」だけ。アップロードが成功すれば、広告グループでカスタムラベルをターゲットとして使えるようになります。

オーガニック検索にも効果

商品ページのタイトルはオーガニック検索でも重要な役割を担っています。動的検索広告は広告としてページタイトルを配信できるので、クリック率を見ながら、ページタイトルそのものを改善していくことにも役立つのではないでしょうか。

整えられたカテゴリを活用した広告を配信し、その結果をページの改善に役立てる、まさに、「ダブルループ学習」を実践できるプロダクトだと言えます。

ポイント⑥ 大規模ECサイトで採用したい目標指標とその理由

広告は何かしらの目標をもって運用を行います。大規模ECサイトの場合、広告経由での売上金額を最大化することが目標になるのがほとんどではないでしょうか。

もちろん、会員登録数や売上個数を目標とする場合もあるでしょう。その場合、コンバージョン数の最大化を目標とし、広告の指標はCPA(Cost par Acquisition / Action)にして、効果を見ていくのが良いでしょう。

しかし売り上げを目標とした場合、目標指標はコンバージョン値の最大化、目標ROASを設定し、そこを目指すことが妥当だと考えます。

平均商品単価が異なる2つの広告実績の例
平均商品単価が異なる2つの広告実績の例

上の表は平均商品単価が異なる2つの広告実績だと考えてください。平均商品単価が4,000円の方はコンバージョン数が多く、CPA(顧客獲得単価)は安いが、売上高とROASも低いという結果。平均商品単価が8,000円の方は、コンバージョン数が低くCPAも高いが、売上高とROASは高い、という結果です。

広告でよく用いられるCPAを目標指標にすると、平均商品単価が4,000円の方がCPAは低くコンバージョンの獲得効率が高い。一方で平均商品単価が8,000円の方は、CPAが高くコンバージョンの獲得効率が低い、という評価になります。しかし、実際に売り上げが高いのは平均商品単価8,000円の方であり、ROASも高く、「効率良く売り上げにつながっている広告」という評価ができます

先ほども述べましたが、大規模ECサイトの場合は、カテゴリによって商品単価に幅があり、コンバージョン数よりコンバージョンによる売上高を伸ばすことに注力するべきだと考えますので、用いる目標指標はROASが適切なのです。

また、Googleのショッピングキャンペーンは、デフォルトの自動入札設定が「コンバージョン値の最大化」です。効率が安定してきたら目標ROASを設定し、さらに目標に近づけるような運用を行うことも可能です。その際、カテゴリ×商品単価を意識してキャンペーンやグループを構成することが、売上最大化へのカギになります。

売上最大化のためにやるべきことまとめ

ここまで、大規模ECサイトの広告についてお話をしてきましたが、売り上げの最大化を目指すためにやるべき事をまとめると、下記のようになります。

  • サイトカテゴリの整頓
  • スマートショッピングキャンペーンの導入
  • 広告に利用するフィードの充実
  • 画像やタイトルの整備
  • 動的検索広告の導入
  • ダブルループ学習でページタイトルを改善
  • 目標指標はROASを採用

しかし広告は、上記をすべて実行すれば、手放しで効率良く売り上げが立つ販売ルートではありません。商材の種類にもよりますし、ニーズのトレンドや競合の広告配信状況にも左右されます。予算の増減によって安定稼働までに時間がかかる、一筋縄ではいかない面倒な一面のある販売ルートです。

それを十分に理解した上で試行錯誤を繰り返し、成果を積み重ねることで、安定した販売ルートに進化させられるものですので、根気よく取り組み、成功パターンを見出していってください。

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