石居 岳[執筆] 2023/3/22 6:30

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが実施した、通販化粧品部門のNPSベンチマーク調査によると、最もNPSが高いのはハーバー研究所だった。

調査対象の通販化粧品会社7社で、NPSのトップはハーバー研究所(-2.0ポイント)。2位は富士フイルム ヘルスケア ラボラトリーのASTALIFT(アスタリフト、-7.0ポイント)、3位はFANCL(ファンケル、-7.1ポイント)だった。トップ企業とボトム企業の差は26.9ポイント、7社のNPS平均は-12.0ポイント。

NPS1位のハーバー研究所は、「効果・効能」「使い心地の良さ」「自分の肌質に合った商品がある」で高評価を得た。ASTALIFTは「有効成分の含有量が多い」「パッケージや容器のデザインのよさ」が、3位のFANCLは「企業イメージ・ブランドイメージのよさ」「目的に合った商品の探しやすさ」が評価された。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが実施した、通販化粧品部門のNPSベンチマーク調査
NPSベンチマーク調査の結果

ロイヤルティーの醸成要因は「効果・効能」「使い心地の良さ」

ロイヤルティーの要因を18の項目別に分析したところ、ロイヤルティーを醸成する要因にとしてあがったのは、「効果・効能」「使い心地の良さ」といった化粧品の品質に関する項目。

「有効成分の含有量が多い」「無添加・添加物が少ない」「商品の信頼性・安全性」といった成分や信頼性、「自分の肌質に合った商品がある」「自分に合ったサイズ・内容量の商品がある」といったニーズに即した商品の提供がロイヤルティーの向上に寄与することがわかった。

一方、「お客様の声に沿った商品・サービスの提供」「目的に合った商品の探しやすさ」の項目は、今後の改善が期待される結果となったとしている。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが実施した、通販化粧品部門のNPSベンチマーク調査 化粧品部門全体のロイヤルティ要因分析
化粧品部門全体のロイヤルティ要因分析(ドライバーチャート)

無料サンプルや有料トライアルキットが商品購入の決め手に

通販化粧品各社は、無料サンプルや有料トライアルキットの提供といった化粧品を試用する機会を通じて、お試し購入、そこからの本購入への引き上げを促進する取り組みに注力している。

そこで、対象となる通販化粧品の商品を試す目的で行ったことがある行動も調査。「無料のサンプルを利用した」は57.0%、「有料のトライアルキット・トラベルセットを利用した」は20.4%で、いずれかを利用したことがある68.9%だった。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが実施した、通販化粧品部門のNPSベンチマーク調査 無料のサンプルや有料のトライアルキット・トラベルセットの利用経験
無料のサンプルや有料のトライアルキット・トラベルセットの利用経験

無料サンプルや有料トライアルキット・トラベルセットが対象の通販化粧品を購入する決め手になったかどうかを聞いたところ、「無料のサンプルセット」は33.9%、「有料のトライアルキット・トラベルセット」は11.8%。無料サンプルや有料トライアルキット・トラベルセットが化粧品購入の大きな決め手になっていることわかった。

無料サンプルや有料トライアルキット・トラベルセットが購入の決め手になったと回答した消費者は、そうでないと回答した消費者と比べてNPSが高い。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが実施した、通販化粧品部門のNPSベンチマーク調査 購入の決め手別のNPS 無料のサンプルや有料のトライアルキット・トラベルセットが購入の決め手になった割合
左図は購入の決め手別のNPS。右図は、無料のサンプルや有料のトライアルキット・トラベルセットが購入の決め手になった割合

推奨理由においても、「無料サンプルを試して自分に合ったタイプを選べた事で安心感が持てた」「サンプルをいただくことができたので、実感した上で購入できた」「商品を購入するごとにサンプルが選べて、気になっている商品の使い心地が確かめられる」といった意見があった。

無料サンプルや有料トライアルキットの利用が商品への納得感を醸成し、同一ブランドにおける他商品の購入を促進するなど、よりよい購入体験につながっているという。

コスメの情報取得は「@コスメ」「メーカーのサイト」

メイクやコスメに関する情報取得について調査したところ、最も高いのは「アットコスメ(@cosme)」の37.5%。「メーカーのサイト」が34.6%、「友人や知人からの口コミ」が31.8%で続いた。

情報源の変化を2019年と比較分析したところ、「友人や知人からの口コミ」「テレビやラジオの番組や広告」「雑誌記事や雑誌広告」「新聞の記事や広告」といったリアルの口コミやリアルメディア広告は低下した。

一方、「Instagram」「YouTubeのコスメ関連動画」といったSNSは増加。年代別で見ると、20代以下では「Instagram」が約4割に達し上位3番目の情報源となっている。メイクやコスメに関する情報源は、若い年代を中心にリアルの口コミや新聞・雑誌からSNSへと移行しているようだ。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが実施した、通販化粧品部門のNPSベンチマーク調査 メイクやコスメに関する普段の情報源
メイクやコスメに関する普段の情報源

対象の通販化粧品において、今後の継続利用意向を0~10の11段階でたずねた結果、「推奨者」(推奨度が「9」~「10」の回答者)は平均9.5ポイント、「中立者」(推奨度が「7」~「8」の回答者)は平均7.9ポイント、「批判者」(推奨度が「0」~「6」の回答者)は平均6.3ポイント。推奨度が高いほど継続利用意向も高くなっている。

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが実施した、通販化粧品部門のNPSベンチマーク調査 推奨セグメント別継続利用意向
推奨セグメント別継続利用意向

調査概要

  • 調査対象企業(アルファベット順、50音順):ASTALIFT(アスタリフト)、DHC、FANCL(ファンケル)、ORBIS(オルビス)、ドクターシーラボ、ハーバー研究所、マナラ化粧品
  • 調査対象者:インターネットリサーチモニターのうち上記通販化粧品利用者(1年以内)
  • 調査方法:NTTコム リサーチによる非公開型インターネットアンケート
  • 調査期間:2023年1月30日~2月6日
  • 有効回答者数:2502人
  • 回答者の属性:女性が100.0%。年代20代以下が9.1%、30代が13.3%、40代が23.5%、50代が22.6%、60代以上が31.5%

NPSとは?

推奨度が高ければ高い顧客ほどリピート率が高く、クチコミによる新規顧客の獲得にもつながるため、企業はNPSを向上させることで収益を上げることができるとされている。

NPSは次のように計測する。

「友人に(特定商品などを)すすめたいと思いますか?」と顧客に質問し、0~10点で推奨度を計測。次のように分類する。

  • 0~6点を付けた人 → 「批判者」
  • 7~8点を付けた人 → 「中立者」
  • 9~10点を付けた人 → 「推奨者」
ネットショップ業界(EC業界)のNPSに関する調査結果
NPSの計測方法

NPSは、「推奨者」の割合(仮に40%)から「批判者」の割合(仮に25%)を引いた数値(40%-25%=15%)のことを指す。「推奨度」を聞くことで、顧客がどれほど企業・ブランドに対してロイヤルティがあるかを数値化する。

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