「タカラトミーモール」が3年連続で200%成長している4つの要因
タカラトミーが運営する直販サイト「タカラトミーモール」が急成長している。独自のWebマーケティングで顧客を拡大。ECサイトのリニューアル効果も相まって売上高は3年連続で前年比200%を達成した。「タカラトミーモール」の成長の要因をテーマに、EC事業を統括する黒木健一室長(次世代マーケティング室)と、ECシステムを提供しているecbeingの林雅也社長がトークセッションを行った。 写真◎Lab
タカラトミーのECが伸びた4つの要因
タカラトミーのECサイト「タカラトミーモール」はトミカ、リカちゃん、プラレール、人生ゲームといった店頭販売品を扱っているほか、オンラインショップ限定商品も販売している。店頭販売のタカラトミーがECに注力するのはなぜか?
その理由について、黒木室長は「ECを通じてマーケティングを行い、そのデータを商品開発に生かしている」と説明する。
タカラトミーの販路は店頭販売が中心。オンラインショップで直販を行うのは、エンドユーザーのニーズを吸い上げ、購買データやアンケート結果を商品開発に生かすためという。
【タカラトミーモールの特徴】
- 顧客の性別は男女半々
- 顧客の年齢は30~40代が中心
- 集客数の伸びに比例して売上高が伸びている
- スマホ比率が上昇
ウェブ限定商品やバイラル動画が急成長に寄与
ecbeingの林雅也社長は、「タカラトミーモール」の売り上げが伸びている要因を黒木室長に質問。黒木室長は「通販限定商品のヒット」「動画生放送を通じたテレビショッピング」「バイラルムービーの活用」などをあげ、これらの取り組みにを具体的に解説した。
成長の要因1 通販限定商品で集客
「タカラトミーモール」では、通販限定商品が集客の核になっている。「トランスフォーマー」「エバンゲリオン」などのキャラクターグッズのほか、高級車「フォルクス・ワーゲン」とコラボレーションしたトミカなども商品化。「タカラトミーモールでしか買えない商品を作ることで、通販サイトの集客を増やしている」(黒木室長)と言う。
林社長は、通販限定商品の在庫リスクについて黒木氏に質問。これに対して黒木氏は、「通販限定商品は事前予約による受注生産方式のため、在庫リスクはない」と回答した。
予約から商品が届くまで時間がかかるものの、「熱心なお客様が購入する趣味用品という特性上、納期の長さは売り上げの阻害要因にはなりにくい」(黒木室長)ことも強みになっている。
成長の要因2 「ニコ生」で動画ショッピング
タカラトミーは動画配信サービス「ニコニコ生放送(ニコ生)」を活用した動画ショッピングにも取り組んできた。巨大なプリンを作る製品「ギガプリン」の実演を行うなど、自社の製品を生かしたユニークな企画を実施。動画に「タカラトミーモール」のURLを貼り付けて視聴者を誘導している。
動画配信の開始当初の視聴者数は数十人にとどまっていたが、毎週木曜日に生配信を繰り返すうちに、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で話題を集め、当時、数千人が視聴する人気番組になった。
「ニコ生」を活用した成功事例の1つは、タカラトミーの新入社員が新商品の企画から商品化に取り組む様子を、ドキュメンタリーのように生配信した企画。
Web漫画家へのキャラクターライセンス提供の依頼から始まり、商品の具体的なアイデアについて視聴者からアンケートを取りながら商品化を進めるなど、「ニコ生」ならではの取り組みを実施した。
この企画がTwitterなどで拡散された結果、新商品を発売した際の生配信中に数千件の予約注文が寄せられるなど、成功を収めた。黒木室長は「ニコ生」を使うメリットについて次のように感想を述べた。
生配信はリアルタイムで視聴者にアンケートを実施できるなど、消費者と一緒に商品開発に取り組めることがメリットだと感じている。(黒木室長)
成長の要因3 バイラル動画の再生が1200万回
Webプロモーションの一環として、バイラルムービーの制作にも取り組んでいる。再生回数が100万回を超えるヒット動画を数多く生み出しており、中でも最大のヒット作はボードゲーム「人生ゲーム」をPRする動画だ。
空港の手荷物用のベルトコンベアーを人生ゲームのマス目に見立て、乗客が荷物を取り上げると、そのマス目に書かれたイベントが実際に発生するというドッキリ風の企画。内容のユニークさと、最後に視聴者を感動させるシナリオが人気を呼び、SNSで爆発的に拡散された。
再生回数は2016年1月の公開から2週間で1000万回を突破、10月末時点で累計1200万回を超えている。
動画を公開したことで「人生ゲーム」の売上拡大にも貢献。さらに、全日本シーエム放送連盟が主催する広告賞に入賞するなど、内容は高く評価された。動画制作を専門会社に依頼したため、制作費はかかったものの、「再生回数あたりの単価は非常に安く抑えられた」(黒木室長)と総括している。
タカラトミーのバイラル動画の成功について、ecbeingの林社長は、「バイラルムービーを使ってECの売り上げを伸ばした例は、まだ少ないが、当たれば効果は大きいと驚いた」と感想を述べた。
動物のいるカフェで企画会議することも
タカラトミーは、こうしたマーケティングのアイデアを生み出すため、月1回の頻度で社外のカフェで企画会議を行っている。リラックスした雰囲気の中で社員が自由闊達に意見を出し合えるよう、会場は動物がいるカフェなど、毎回異なる場所を使っているという。
サイトリニューアルでCVR16%アップ
なお、「タカラトミーモール」は2013年秋にECの基盤システムをECパッケージ「ecbeing」に変更した。「ecbeing」は業種や業態を問わず、さまざまなECサイトを構築できる総合ソリューションパッケージだ。
ECを主軸としたデジタルマーケティングシステムをワンストップで構築できる総合力に定評があり、「赤ちゃん本舗」「ABCマート」「伊藤園」「HIS」「カルビー」「日本航空」「浦和レッドダイヤモンズ」など、900サイト以上に採用されている。
「タカラトミーモール」は2016年秋にサイトのリニューアルを実施。サイト内検索機能を強化したほか、サイト内の導線を見直すなど、「サイトを見やすく、使いやすくした」(黒木室長)。リニューアルの結果、ユーザーの直帰率は4%低下し、コンバージョン率は16%改善した。
林社長は「タカラトミーモール」のコンバージョン率などが大きく改善した要因について、「タカラトミーモール」にecbeingを導入した2013年と比べてスマホ比率の上昇などの外部環境が変化していると説明し、「リニューアルによってトレンドの変化にしっかり対応できたためではないか」と分析。サイト構築から数年が経つと、商品の流行や顧客の購買動向が変わるため、定期的にリニューアルすることが大切だと強調した。
林社長の指摘に黒木室長も同調し、リニューアルの成果を次のように評価した。
「タカラトミーモール」は取扱商品数が増えているし、お客さまが使うデバイスも変化している。マーケットのトレンドに合わせてリニューアルした結果、コンバージョン率などの面で効果がはっきり表れた。非常にいいタイミングでのリニューアルだったと思う(黒木室長)
セミナーの最後、黒木室長はタカラトミーの今後について、「ECを通じて集まったエンドユーザーからの声を、商品企画や開発に生かし、より良い商品を作っていきたい。ECのマーケティング機能を強化するためにはデータの元となる顧客数を増やさなくてはいけない。そのために今後も集客に力を入れていく」と説明。
林社長は、タカラトミーのウェブマーケティングを振り返りながら、「さまざまな施策に取り組んでいるタカラトミーから、これからも目が離せない」と話し、対談を締めくくった。