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「手書きで書いた方が相手に気持ちが伝わる」。よく言われることだが、果たしてそれは本当なのだろうか? そんな疑問を科学的に実証しようという試みがある。テーマは「手書きの価値の実証実験」。筆記がコミュニケーションにもたらすユニークな価値とは?

実証実験を行ったのは「アナログ価値研究会」。アナログ価値研究会とは、NTTデータ経営研究所が千葉工業大学知能メディア工学科山崎研究室、東京大学大学院総合文化研究科酒井研究室、王子製紙、ゼブラ、DIC、日本能率協会マネジメントセンターと共同で2015年に組成した研究会。

7月4日に発表された実証実験結果によると、手書きの文字はタイプされた文字に比べて「思いが込められている」というポジティブな印象を読み手に与えうるということがわかった。

同じ手書きでも、速記の場合はそのような効果が弱くなることから、「心が込められている」と判断されるのには、書き手が「運動のコスト(時間)」をかけて文字を書く必要があることも示唆された。

一方、タイプされた文字は「読みやすく丁寧である」という印象を与えることがわかった。

「手書きの価値の実証実験」概要 

実験方法

書き手(男女2名ずつ4名)に「あなたの身近な友人が誕生日を迎えることを想像してください。その人に向けて誕生祝いのメッセージカードを書いてください」と指示。

  • 図1a :心を込めた条件
    「ゆっくり時間をかけて心をこめて書いてください」
  • 図1b :速記の条件:
    「自分の書ける最高のスピードで、できるだけ素早く書いてください」
  • 図1c :タイピングの条件
    「指定された文章をタイプしてください」
  • 自分の性格を10項目について7段階で評価
図1

被験者40人(男性20名、女性20名 20~24歳、平均年齢 22.33歳)に、下記の前提条件を提示。

「あなたの友人がサプライズであなたのための誕生パーティーを開いてくれました。出席者は幹事が配ったカードに、あなたの誕生日を祝うメッセージを寄せてくれました。

出席者の中にはあなたが直接知らない人もいます。パーティーが終わり、あなたはそのカードを読んでいます。多くの人からメッセージをもらったので、同じ内容のものがあります」

被験者はそれぞれ、心を込めた条件、速記の条件、タイピングの条件を4枚ずつ読み、下記の指標で評価した。

  • 読むのにかかった時間
  • 手紙の印象(思いがこめられているか)
    ※VAS(visual analog scale)1-100で定量的に評価
  • 視覚的特徴(可読性、美しさ、丁寧さ) ※VASで評価
  • 書き手が手紙を書くのにかけた時間(推定/秒)
  • 書き手の性格推定 ※7段階評価

「手書きの価値の実証実験」結果

読み手は心を込めた条件について、速記の条件と比較して「書くのに時間がかかった」と推定した(図2b)。

図2

同じく、心を込めた条件について「思いが込められている」と感じた。(図3c)。タイピングの条件に対しては、速記の条件と比較して「丁寧である」と感じた(図3d)。

図3

読み手による書き手の性格推定

書き手の自己分析による性格と、読み手が推定した性格を比較分析した結果、心を込めた条件では他の条件と比較して書き手の性格をより正確に推定できていた(図4)。

図4

「手書きの価値の実証実験」で得られた示唆

時間をかけている=書き手へのポジティブな印象

単純に「手書き」であるという事実だけでなく、「時間と手間をかけてくれている」ということを読み手が感じることが、書き手へのポジティブな印象や、人となりの理解につながっている

すなわち、時間をかけて丁寧に思いを込めて書くという時間と運動コストをかければ、そのコストに見合った情報が読み手に伝わると考えられる。

タイピングはコスパの良いコミュニケーション

タイピングによる活字でのコミュニケーションは、短時間で入力でき、「読みやすく丁寧である」という印象を与えるので、一定の伝達品質を有するコストパフォーマンスの良いコミュニケーション手段と言える。

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