村川 智博 2017/10/23 8:00

現代社会でビジネスをするにはITは切り離せません。優秀なIT人材を集めるにはどうすれば? 地方に居ながら最新情報をキャッチアップするには? 私が導き出した答えについて解説します。 イラスト◎なとみ みわ

ITがわからないから……できる人間かどうか判断できない

複数チャネルで販売したい!マルチチャネル戦略の誕生

当社は創業当初、各店舗で買い取った商品をオークションサイトで販売するビジネスモデルでした。その後、インターネットショッピングモールが登場し、そこでも商品を販売したいと考えました。

しかし、2つのサイトで商品を販売するには、それぞれのサイトで掲載作業を行わなければならず、作業工数が2倍に増えることになります。商品数が増加してきたため、自社ECサイトを立ち上げ、そこで販売することも検討しました。ただ、商品の掲載作業に加え、商品が売れた場合の取り消し作業も発生するので作業量は3倍以上。どうすれば販売チャネルを増やしながら、作業を効率化できるのだろうかと考える日々を過ごしました。

そして、ある日「Web上で新しいフォーマットを作成し、各販売チャネルを一括で管理できる商品在庫連動システムを社内で構築すれば、一度の作業で商品の同時掲載や取り消しが可能なのでは?!」というアイデアがひらめきました。

実現するのは簡単ではないとわかっていましたが、私の思い描いたシステムを開発できる企業を探し、ある企業と出会いました。発案から6か月後の2006年秋頃、ついに現在のシステム(ベクトルプレミアムシステム)の前身となる「商品在庫連動システム」が完成したのです。

システムトラブル発生?! IT事業部立ち上げまで

「このシステムを活用し、マルチチャネル戦略を採れば売り上げは好調に伸びる!」と喜んでいたのもつかの間、システムの不具合が増加してきました。

商品を販売していくにあたり、システムの不具合には迅速に対応し、改善をしていかなければなりません。社内で対応できる体制を構築すべく、2007年に新部署としてIT事業部を立ち上げました。

IT関連に詳しい人材を招くために、「リサイクルショップベクトルのIT人材を募集」と求人を出しました。面接時に求職者の「HTMLが使えます!」とったアピール重視で採用してみるものの、私自身がIT関連の知識不足だったために、なかなか思い描いたようなIT事業部は確立できませんでした

ITシステムにはピンチがつきもの……

自社ECサイトの作成と新システムの開発に力を注いてでいた2012年、あるトラブルにより、突然販売チャネルの1つである他社サイトが利用できなくなる事態が発生しました。

その日を境に売上は激減。ベクトルは一部の店舗をフランチャイズとして展開しているので、加盟店からのクレームも発生しました。

すぐに責任者を集めて緊急会議を実施し、開発中の自社ECサイトと新システムのリリースを半年から1年ほど前倒しすることを決断しました。

新システムをリリースするために社内で改善を重ねつつ、受注業務やコールセンター業務、物流業務などのバックシステムも本部で受け入れる新パッケージを加盟店に提案しました。

全従業員が一丸となって努力した甲斐あって、無事に自社ECサイト「ベクトルパーク」を公開でき、新システムも導入できました。加盟店からもご理解いただき、なんとかピンチを乗り切りました。

ITシステムにはいまだに予想しないトラブルが発生しますが、幾度となくピンチを乗り越えてきた現在は、社員も私自身も、冷静かつ迅速に対応できるようになりました。

私がこの経験から学んだこと

①自らのITリテラシーを高めれば優秀なIT人材が集まる

当初、IT人材の採用に苦戦していたのは、私自身がシステムやWebのデザインなどを理解できていなかったためです。また、「そもそも優秀なITのシステムエンジニアやプログラマーが、リサイクルショップを運営する地方企業のIT事業部で働きたいと思うだろうか」と考えました。

そこで、まずは経営者である私自身がITの知識を身に付けるべきだと思い、ITやECサイト関連の勉強会へ自ら足を運び、ITに特化した経営のコンサルティングも受け、専門性の高い知識を習得しながら、自社のIT化を進めていきました。

現在、当社のIT事業部はIT企業出身の社員も含め、優秀な人材が集まり、日々新たなシステム開発に取り組んでいます。また今年はおかげさまで「ヤフオク!ベストストアアワード」のメンズファッション部門や経済産業省中小企業庁主催の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」の生産性向上の部門で受賞することができました。

はばたく中小企業・小規模事業者300社

②学びの場を創設すれば鮮度の高い情報と人が集まる

IT技術が画期的に進化していく中、さまざまな工夫を凝らしたサービスやシステムがどんどん開発されています。当社もEC事業をしている限り、業界の発展スピードに遅れてはならないと強く感じています。

ところが、地方にはなかなか鮮度の高い情報が集まってきません。そこで、ITやEC関連の講師を招き、勉強会開催すれば業界関係者が集まるのではないかと思いつきました。

そこで2013年3月に創設したのが「ベクトル大学」です。ベクトル大学は鮮度の高い情報収集やビジネスマッチング、人材の獲得や多くの社会人の方との有意義な時間を共有できる社会人の学びの場です。地方でも首都圏に負けない新しい情報を提供することで、ビジネスへの原動力を見いだして欲しいという想いで創設しました。

ベクトル大学ではSEOやアフィリエイトといったITの知識から、組織論や自己啓発まで、幅広い内容をセミナー形式で発信しています。

ベクトル大学のセミナーの様子
ベクトル大学のセミナーの様子

以前、ベクトル大学の講師として株式会社サイバーエージェントの藤田晋代表をお招きしたことがありました。講義を終えた後、参加者からの「インターネットの世界で変わらないものはありますか?」という問いに対し、藤田氏は「インターネットの世界は変わらないものがないことが、変わらない」と回答され、私はとても感銘を受けました。今でも、この言葉が強く心に残っており、意識しながら会社を経営しています。

ファッション×IT 今後の展望

スマートフォンの普及により、いつでもどこでも簡単にインターネットにアクセスできる環境になりました。さらにSNSの発達によりインスタグラマーやユーチューバーが生まれ、人々の消費行動が変化し、当然モノの売り方もオムニ・マルチチャネル化してきています。

SNSで知った商品を買った経験がある方も多いと思いますが、今後ITの世界はリアルと仮想世界との垣根を越え、オンリーワンのサービスを提供する者が生き残るのではないかと思っています。

またファッションとITに共通していることは、「流行り廃れが激しい」ということです。一昔前に比べてさらにその回転が速くなってきていると感じています。

変わり続けるファッションの流行やITの発展に対して、私たちも加速度的に変化し続けなければなりません。サービスを提供するにあたり、ユーザーインタフェースを高めることはもちろんですが、リアル店舗とWebを連動させることでオムニチャネルを推進している点や、多くの企業とアライアンス提携を行っている点を踏まえ、今後はベクトルの強みを生かしたオリジナルプラットフォームサービスを提供していきたいと考えています。

より新しい情報をキャッチアップするために、東京へ進出!

2016年、当社はIT・マーケティング事業の拡大、事業部間のシナジーの創出、企業価値の拡大を目指して、東京事務所を設立しました。現在は東京をベースに優秀なIT人材の採用を進め、最先端の技術や取り組みをキャッチアップしています。

働きたくなるオフィスを目指し、ランウェイを意識したライトアップのある全面ガラス張りの円卓会議室を中心に、カフェのようなコミュニケーションの場やDJブースを備えたスタイリッシュなオフィス空間を作り、社員同士のコミュニケーションが生まれやすいような環境を整えています。

東京事務所「VECTOR CORE TOKYO」(ベクトルコアトーキョー)
東京事務所「VECTOR CORE TOKYO」(ベクトルコアトーキョー)

ちなみに現在、システムエンジニアやWebクリエイター、ITインフラのスペシャリストを募集しています。

◇◇◇

今回ご紹介したいEC担当者にオススメの本は、現状に甘んじることなく変革する力を持つことの重要さを唱えた、ユニクロの柳井正氏の『経営者になるためのノート』(PHP研究所 刊)という書籍です。

このノートは実際にユニクロの幹部教育に使用されており、自分で書き込みをしながらアウトプットすることで実践を促してくれる構成になっています。経営者になりたい人だけでなく、常に変化し続けるITの世界で活躍したい方、自身の考えをすぐに行動に移したい方にもオススメです。

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