ECアプリを使うメリットは? どんな効果があるの? モバイル時代で勝つためのアプリ活用法
モバイル時代にECアプリを使うメリットは? ECアプリのダウンロード促進に有効な施策は何か? アプリを活用してECの優良顧客を増やすには、どうすればいい? 利用企業220社超のクラウド型アプリ運営プラットフォーム「Yappli」を活用したEC実施企業の成功事例を踏まえ、ヤプリの佐藤裕子マネージャーがこうした疑問を解決に導く、ECアプリの効果的な活用方法を解説する。写真◎Lab
ECアプリの強みはユーザーの滞在時間の長さ
ECのアプリ活用にはどのような効果があるのだろうか。佐藤氏はECアプリを使うメリットについて、「顧客としっかりコミュニケーションを取り、新規顧客を優良顧客に引き上げることができる」と説明する。
ECアプリのユーザー滞在時間はWebサイトの約16倍にのぼるとする調査結果などを引用し、「アプリはスマホに最適化した操作性を実現し、動画などのリッチコンテンツも提供できることから、ユーザーにとって心地良い買い物の体験を提供しやすく、結果的に滞在時間が長くなり、コンバージョンにもつながりやすい」と言う。
アプリのプッシュ通知の開封率はメルマガの約3倍。ユーザーへの情報伝達率が高く、顧客とのコミュニケーションを図りやすい。Webサイトで獲得した顧客を、アプリを使って優良顧客に引き上げる戦略をとっている企業も目立つ。(佐藤氏)
ダウンロード促進とアクティブ率向上に有効な4つの施策
ゴールドウィン、「dinos」(運営はディノスセシール)、「神戸レタス」(運営はマキシム)といった通販・EC事業者など220社以上が利用しているクラウド型アプリ運営プラットフォーム「Yappli」。
こうしたアプリ提供の実績などを踏まえ、ECアプリを成功させるポイントについて佐藤氏は、「ダウンロード数を増やす施策と、継続的にアプリを使ってもらう施策を並行して実施することが重要」と説明。ECアプリのダウンロード促進、アプリユーザーのアクティブ率(月1回以上、アプリを利用するユーザーの割合)を高めるための有効な4施策を紹介した。
施策1 アプリのダウンロード促進策
アプリのダウンロード促進は、オンラインでは「スマホサイトの目立つ位置にアプリへの誘導バナーを配置する」「SNSで告知する」「公式サイトからアプリストアへ誘導」「メルマガで告知する」「ウェブメディアに広告を出稿する」などが有効という。
オフラインでは「店頭のPOPで告知する」「チラシやカタログにアプリDL用のQRコードを掲載」「小売店が発行するレシートにアプリDL用のQRコードを掲載する」といった方法が有効な施策となる。
顧客との接点をしっかり洗い出し、ダウンロード用のQRコードやURLをどこに掲載すればダウンロードしてもらいやすいか検討することが重要。(佐藤氏)
施策2 アプリDLのブースト施策
佐藤氏は、アプリのダウンロード数を加速させる「ブースト施策」を説明。「Yappli」の導入企業が実践して特に効果が高かった3つの施策をあげた。
・アプリ先行セール
キャンペーンやセールをアプリ限定で先行して行う。メルマガやSNSで先行セールの情報を配信し、アプリのダウンロードを促す。
「Yappli」を利用している某アパレル企業では、2016年12月に福袋の先行予約やフライングセールを実施したところ、アプリの新規ダウンロード数が通常の約2倍に増えたという。
・クーポン配布
アプリをダウンロードしたユーザーにクーポンを配布する。通販の同梱チラシやカタログ、梱包用ダンボールなどにクーポンキャンペーンの内容とダウンロード用のQRコードを記載すると効率的にダンロードを促進することができる。
・プレゼント
アプリをダウンロードしたユーザーにノベルティーや限定商品などをプレゼントするのも有効。「Yappli」を利用しているアパレル企業は、スマホの待ち受け画面の壁紙をプレゼントするキャンペーンを実施し、ダウンロード数を通常の3.6倍に増やした。
施策3 アプリを継続的に使ってもらうための「コンテンツ」
アプリユーザーのアクティブ率を高めるには、頻繁にアプリを立ち上げたくなるようなコンテンツを継続的に発信していく必要がある。その際、「フロー型」と「ストック型」のコンテンツを並行して配信することが重要になるという。
フロー型の情報とは、日替わりのコーディネートやキャンペーン情報といった日々更新される情報を指す。ストック型の情報は料理レシピやルックブック、ノウハウ系コラムなどが該当する。
また、「アプリだからこそ提供できるリッチコンテンツを制作したりすると、ユーザーのアクティブ率が高まる」(佐藤氏)と指摘。アパレルEC「神戸レタス」を運営するマキシムは、アプリでコーディネート動画などを配信したところ、ユーザーのアプリ滞在時間が動画の導入前と比べて約20%増えたという。
施策4 プッシュ通知でリアルタイムの販促
アプリユーザーのアクティブ率を高めるには、プッシュ通知機能を使うことも有効な施策だと佐藤氏は説明。たとえば、不定期でタイムセールなどを行うと、プッシュ通知を配信した直後からアプリのアクセス数が増えることが「Yappli」のデータから判明しているという。
プッシュ通知の特徴の1つは即時性が高いこと。この特徴を利用し、限定タイムセールなどの情報を発信するとユーザーを効果的にアプリに呼び込むことができる。(佐藤氏)
ライトオンが「Yappli」を導入して実現したこと
佐藤氏は「Yappli」の利用企業の成功事例として、カジュアルウェアの小売店を全国で約500店舗展開しているライトオンを紹介した。
ライトオンは2016年4月に「Yappli」で作った会員証アプリを導入。ECとリアル店舗のポイント機能をアプリで一元化したほか、新商品情報や店頭のセール情報をプッシュ通知で配信してリアル店舗への集客にも役立ててきた。販売員のコーディネートスナップといったリッチコンテンツも積極的に配信し、顧客とのエンゲージメント強化につなげている。
アプリを導入したことで会員数の伸び率は導入前の1.5倍に向上。ショッピング機能を備えたアプリ経由のEC売上高はメルマガ経由やWEB広告経由の金額を抜いているという。
「Yappli」がECを支援する5つの新機能を開発
「Yappli」はiOSとAndroidに対応したネイティブアプリの開発と運用をブラウザ上で行えるクラウド型アプリ運営プラットフォーム。すでに220社の開発実績があり、小売企業中心に支持されている。
2017年秋には20種類の新機能を開発。特にECに役立つ機能は「オートプッシュ」「お気に入り機能」「ネイティブ検索窓」「ネイティブ購入履歴」「海外展開」の5つだ。
・オートプッシュ
プッシュ通知を自動化する機能。通知対象をセグメント分けし、配信条件(マーケティングシナリオ)を設定しておくと、条件に合致したユーザーに自動でプッシュ通知が行われる。たとえば、会員の誕生日の月に誕生日クーポンを配信、一定期間アプリを使わなかったユーザーに限定クーポンを配信して休眠顧客の掘り起こしを図るといったことができる。
・お気に入り機能
商品画像の下に「お気に入り」ボタンを設置し、ユーザーがお気に入り登録できるようにした。登録した商品を横スワイプで閲覧するなど、流行のUXを取り入れたという。
・ネイティブ検索窓
従来はWebサイトに移行しないと検索できなかったが、アプリのトップページなど、任意の場所に検索窓を簡単に設置できるようにした。
・ネイティブ購入履歴
ネイティブアプリ内に購入履歴を表示できるようにした。
・海外展開
複数の言語でアプリを作った場合、言語別に管理画面を利用できるようにした。「Yaplli」は英語、中国語、ポルトガル語などに対応している。
最後に佐藤氏は「Yappli」の今後について、「スマホ時代のビジネスを加速させるため『Yaplli』自体のサービスを一層向上させるとともに、導入企業におけるアプリ運用のサポートにも力を入れていく」と述べ、一層のサービス強化に取り組むことを約束した。