中島 郁 2018/1/11 7:00

商品・コンテンツに関して担当者がやるべきこと

前回に続き、ECのMD担当者が「やるべきこと」を説明します。商品やECサイトのコンテンツに関する次の7つの業務について、担当者に知っておいてほしいポイントの解説です。

Ⅱ-2-1-6. (1)商品をどのカテゴリーに登録するか、どう誘導するか

ECサイトに商品を登録する際、「商品をどのようにサイトに表示させるかの基本的項目として、どのカテゴリーに所属させるか、顧客にどのカテゴリーで見つけてもらうか」を決めるのは、MD担当者の重要な役割です。カテゴリーを決めるときに大切なことは、「顧客が商品を見つけやすくする」という視点と、「商品を、どのように顧客に見つけてもらいたいか(提案したいか)」という企業側の視点の両方を持つこと。つまり、「最短距離での商品への誘導」と「意図的な商品への誘導」を意識するということです。

顧客が探している商品が、すでにはっきりしている場合は、とにかく、ストレスなく早く見つけてもらうために、「顧客が商品を見つけやすいようにする」ことで最短での誘導を目指します。

一方、探しているものが、まだ漠然としている場合は、MD担当者の仮説に基づいて、顧客の興味に働きかけながら、いろいろな導線でほしい商品を見つけてもらいます。これは、顧客への提案に近く、どう「顧客に見つけてもらうようにするか」が大切です。具体的には、「カテゴリーの登録」「アイテムへの登録」「ブランド登録」「特定キーワード登録」「価格帯登録」「サイズ登録」「カラー登録」など、さまざまな切り口で商品を登録することを検討します。また、商品の用途別などの導線も有効です。

商品ページへの導線となるリンクの貼り方を考えることもMD担当者の仕事の1つです。もちろん、ECのスタッフの誰が考えてもよいのですが、基本的にはMD担当者の責任だと思います。

Ⅱ-2-1-7. (2)「関連商品」の選定する

商品詳細ページなどに、動的なリコメンデーション以外にも、「関連商品」として店舗のおすすめ商品を掲載することがあります。たとえば、スマホにはスマホケース、シャンプーにコンディショナーといった商品が関連商品にあたります。また、サイズ違いや型違いも、関連商品になります。何を顧客が合わせて買いそうな商品として「関連商品」に選ぶかは、MD担当者の分析とセンスに基づいた仮説によって行いますし、上記のどう商品を見つけてほしいかの重要な要素の一つとなります。

Ⅱ-2-1-8. (3)商品特集ページを作るか決定する

商品に関する特集ページの制作の有無も、売上や経費予算を踏まえてMD担当者が決めることかと思います。実店舗出身者は売場を作るということと同じように特集ページを作ってしまいがちですが、ECサイトはページ遷移が増えるほどユーザーの離脱が増えますので、本当に必要か、コンバージョンに貢献するかを考えなければなりません。特集ページは、ランディングページを兼ねる場合もありますし、そうでない場合もあります。

Ⅱ-2-1-9. (4)購買行動を踏まえて掲載・販売期間を決める

商品掲載の開始時期や、販売期間を決定するのも、MD担当者の役割です。実際の販売開始前に商品掲載を開始し、予約受付をしたり、また、実際の購入時期よりあえて早く掲載することで、情報収集をしてもらい、購入する段階に備えてもらうこともあります。近年ではランドセルの例が有名です。時期は次第に早まっているそうですが、ランドセルが一番検索されるのは5~6月で、一番売れるのは7~8月です。これは、「両親が早めにランドセルの情報を収集して、子供に与えたいものを決定し、夏休みに祖父母のうちに行き、子供から祖父母にねだらせる」といった動向があるということです。

このように、情報収集と実際の購入の時期が大幅にずれる商品では、取扱アイテムの決定やその他のMDプロセスを、購入時期ではなく、ユーザーが情報収集する時期から逆算して行うことが必要になります。つまり、今までよりも、実務のスケジュールが大幅に早くなるということです。

商品を、どのカテゴリーに登録する?
「関連商品」は何を表示するべきか?
どんな特集ページが必要?
商品の販売開始はいつが適切?
顧客が商品を見つけやすく、買いやすいECサイトを作るために、MD担当はさまざまなことを考える必要がある

Ⅱ-2-1-10.(5)EC独自商品やEC限定商品の販売を検討する

ECで売れやすい商品とは、極論すれば「サイトに来る前から知られている商品」です。例えば、高級・有名ブランド、テレビなどで紹介された商品、キャラクターコラボ商品などがあります。また、店頭で販売されている商品も、消費者の目に触れる機会が多いため、ある程度「知られている商品」と仮定することができます。

もちろんEC独自の商品やEC限定商品を展開する会社もありますが、それらは、よほど引きのある商品でないと、初期の段階では、一般商品や実店舗と連動した商品よりも売れません。集客(トラフィック)は皆さんがイメージしている量の10倍以上(できれば二桁以上)ないと「売れる」と実感できる売上にはならないでしょう。

EC限定商品や独自商品は、WEB上でしか顧客の目につかないため、十分な説明や商品情報、写真、その他をWEB上に準備する必要があります。商品詳細ページはもちろんのこと、その商品のブランドページや特集ページなどを準備することが必要です。そのため、「費用も労力もかけたのに売上は少ない」というケースもありえます。

また、せっかくEC限定商品をだし、特集ページも作ったのだから、トップページやメルマガのメインスペースをに露出させることもあるでしょう。その場合は、ある程度は売れる見込みがある通常商品を排除して、売れないかもしれない商品を掲出するということですから、売上へのマイナスインパクトも考慮しなければなりません。

筆者は、EC事業の立ち上げ期に、EC限定商品や独自商品をテスト的に販売してもよいと思います。しかし、本格的な取り扱いは、ECサイト自体の集客や売上がある程度伸びてからの「第2ステップ」としていました。筆者がいたのは、ブランドもあり集客も期待できる大規模ECサイトですが、それでも、EC限定やEC独自商品はそれほど売れなかったということです。

Ⅱ-2-1-11. (6)取扱商品の確保と在庫管理

実店舗など既存事業と同じ商品を扱う場合、ECで商品を販売する手続きや、許可などが必要になる場合があります。それらの課題を解消し、ECで商品を販売できるようにすることも、MD担当者の役割の1つです。

ECでの販売許可が必要になるのは、例えば、商品提供元がECでの販売を望まないとか、ある特定の条件下でないとECでの販売を許可しないなどです。EC販売を不可とする理由として、「商品提供元が直販サイトで売っているから小売のECサイトでの販売を避けたい」、「ブランドイメージをコントロールできないので、自社以外のECで販売したくない」、「ECでは接客や対顧客への説明が不十分と考えている」といったことが想定されます。いろいろな考え方、誤解もありますが、とにかく、EC上で掲載、販売ができなければ始まりません。また、EC販売が難しい理由としてECに回す在庫の割り当てがない、不足するなどのケースが考えられます。いまだに実店舗の担当者がECに売上を取られると、在庫を回してくれないことや、顧客に直接手渡しで売りたいなど心情的な問題もあります。すでに事業コンセプトの段階で解決されているはずのことですが、実際に起きている問題です。

どれも、わりと日常的に発生する場合も多く、これらへの対処もMD担当者の役割になります。そういった意味でも、MD担当者の役割は、ECの起点となるのです。

商品の販売許可を取るために商品提供元と交渉したり、EC在庫を確保するために社内調整をすることもMD担当者の重要な仕事

一旦掲載、販売が可能となった商品は、在庫を確保し、継続的な販売を可能にしていく必要があります。既存事業と同じ商品を販売する場合、在庫が共有されてリアルタイムに反映されていく仕組みがないのであれば、在庫を確保するための仕組みが必要です。実店舗とは別管理として、完全に分けて在庫を割りあて、実店舗・EC間で移動しない方法、売上に従って在庫が移動する方法、在庫移動がなく不足はそれぞれ別に補充発注する方法などがあります。

ECの在庫を確保できないと、EC担当者としては非常に困ります。実店舗などの既存ビジネスとECの在庫を共有し、欠品や不良在庫化などの機会損失を避けることが、オムニチャネルでも言われている本来目指す概念です。すぐにはできないところも多いですが、方向性を忘れず、目指して行ってほしいものです。

ECでの商品の売れ行きが既存事業と違う場合も多いので、従来の在庫管理の方法が利用できない場合もあり、状況を見ながら在庫管理の方法を検討してください。また、店頭在庫主義の会社に起きかねないのが、EC倉庫での不良在庫化です。実店舗と違い、在庫が見えにくく把握しにくいために、いつの間にか在庫が肥大し、ともすれば不良在庫の隠蔽の温床となりかねません。

Ⅱ-2-1-12. (7)在庫切れやリンク切れへの対処

実店舗では、「欠品は悪」という認識が浸透しているため、商品がなくなれば補充仕入する、または、同類の商品を並べるなど、棚に商品がない状態を作りません。(欠品、在庫なしの状態がぱっと見にはわからなくします。)一方、ECでは、必ずしも在庫切れは悪くない場合があります。もちろん、在庫切れが多すぎてはだめですが、2~3割くらいまではよいと考えるECサイトもあります。その理由の1つは、顧客目線です。もちろん、在庫が常にあることがベストですが、「在庫切れ」の表示になっていてでも、ECサイト上で商品を見つけてもらうのです。顧客はがっかりはしますが、自分の探し方が悪く商品が見つからないのではなく、在庫がないということを確認し、納得します。また、在庫がなくても商品の写真を見たいとか、仕様を知りたいという人はわりと多いからです。買った後に商品情報や着用写真を参考にする人もいます。

ECの在庫が切れた、あるいは販売期間が終了したとき、すぐに掲載をやめようとする店舗出身者が多いのですが、上記のような対応もあるので、ルールを決めて、ある期間は掲載を続けることをお勧めします。いつまで掲載するのか、いつから掲載するのかを決めるのもMD担当者の役割です。できれば、「在庫あり」商品と「在庫なし」商品を指定して検索できるとよいでしょう。また、商品掲載を残しておくことでSEOに貢献するということもあります。

上記は、在庫切れを単純に許容、放置するということではなく、毎日チェックしたうえで、補充すべきものはしたうえで、あえて実施することです。

筆者が在庫切れよりも悪いと思っていることは、「リンク切れ」です。バナーやリンクをクリックしたけれど「商品が見つかりません」「ページが見つかりません」と表示されることです。リンク切れの原因は、商品の登録が間に合わないとか、ページの制作が間に合わないといったことで起きる準備不足のケースと、在庫切れなどで商品の掲載をやめたのに商品ページへのリンクが残ってしまっているなど、オペレーションの未熟さによるケースなどがあります。

こうしたリンク切れは「事故」ですし「人災」です。理由がどうであれ、リンク切れは顧客に不信感を与えます。リンク切れしているようなサイトに自分の個人情報やクレジットカード番号を入力したいと思うでしょうか。筆者は「リンク切れ」のことを、実店舗に例えるなら、「顧客が店の入口を入ってきたら棚が倒れている状態」と言っています。単なる欠品とは質が違うのです。また、リンク切れの多いサイトは検索エンジンからの評価も下がり、SEOにもマイナスです。

◇◇◇

第4回と第5回でECのMD担当者に覚えておいてほしいことを説明しました。次回は、ECサイトのコンテンツ作りに重要な役割を果たす「ささげ」(撮影・採寸・原稿)の担当者が「やるべきこと」を取り上げます。

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