ECサイトの「ささげ担当」が担う役割と商品情報作成のポイントは? 担当者が知っておべきこと
前回までのMD担当者が「やるべきこと」に続き、商品やコンテンツ系の重要な役割である「ささげ担当」の業務について説明します。
Ⅱ-2-2-1. ささげ担当は“接客担当”である
「ささげ」とは、撮影の「さ」、採寸の「さ」、原稿の「げ」のそれぞれの最初の文字をとったEC用語です(おそらく2000年初頭から利用されています)。すなわち、商品情報を作る役割です。
これまでの連載ですでにお伝えしましたが、ECを利用する顧客は商品を直接触ったり見ることはできません。そのため、商品情報次第で購入決定率が大きく変わります。商品情報は「接客そのもの」であり、商品情報の作成は単なる作業ではありません。実は、ささげ担当者は接客担当者ということなのです。
Ⅱ-2-2-2. 商品説明を作るときの留意点
商品情報の作成は、外注の場合も内製で行う場合もあります。ささげの際に、商品を直接見てわかること以外の特徴や売りの部分は、商品提供元やバイヤーから入手します。商品提供元から情報や素材を入手する場合も含め、商品情報は、最終的に顧客に見せることのできる表現にしていくことが必要です。
商品説明を作る際は、まず、正確さが一番です。そのために、景品表示法、医薬品医療機器等法(薬機法)など法律に基づく表現を使うためのマニュアル、ガイドライン整備、また、そのチェック方法を整備します。その後、法規以外の社内基準を作成して運用していきます。
社内用の用語、説明はそのまま使うべきではありませんし、記述や作成のガイドラインを準備して、顧客にわかりやすくすることが大切です。さらに、用語、表現、言葉遣いの統一を行います。同じことを言っているのに使っている用語が違えば顧客は混乱し、購入決定に影響が出ます。
また、言葉使いにぶれがあると、非常にゆるいサイト、すなわちだらしない、いい加減なサイトと思われます(よく紙の出版物ではきちんと行われていることが、Webでは行われていないことが多いと言われています。制作に関して、Web系が軽く見られる原因となります)。
ゆるいサイトに大事な個人情報、ましてやクレジットカード情報を入れたいと思うでしょうか。自分の情報もいい加減に扱われると思うのではないでしょうか。
さまざまなECに関するユーザー調査で、ECサイトを利用する際の一番の不安要素は、いまだにクレジットカード情報、個人情報の入力です。そのためにも、商品説明に限らず、デザイン、誘導などを含む、サイト上の表現が、「首尾一貫」していることがとても大切です。
説明文は、具体的でわかりやすくする工夫が大切ですし、パッと見に受け入れられやすくする必要があります。たとえば、言い換えを使ってわかりやすくしたり、漢字が4~5文字以上続くようなことは避けるなどです。コピーなどプロモーショナルな要素も入れる場合も多いでしょう。もちろん、入れた方がよいのですが、「売らんがな」が出すぎないように、その比率は本来の説明の域を超えないようにします。
言葉使いは、商品やブランドの雰囲気、テイストによりますが、喋り言葉と違い、文字で見た場合は、同じ表現でも不快に感じることが多いので、最初のうちは(できれば継続的に)、チームで読み合わせなどをしてすり合わせします。
Ⅱ-2-2-3. 商品サイズに関する注意点は
商品のサイズは、「何を」「どこで」「どのように」計るかを、やはりガイドライン化して、サイトのサイズ説明コーナーなどに掲載し、各商品説明に明確に記載していきます。
サイズは、社内用語や業界用語がそのまま使われていることが多いので、一般用語に直していくか、そのサイトにおけるサイズの意味をFAQやサイズ説明コーナーで明示しておきましょう。少なからず、決定率向上やCSへの問い合わせの軽減、返品の抑制に役に立ちます。
複数のブランドやメーカーから商品を仕入れて販売している場合は、より難しくなるので、より明確な基準を作り明示していくことが大切です。できれば、同じ商品カテゴリーの業界で、全社がそろえていければ一番よいですが、まだ、実現できていません
Ⅱ-2-2-4. ECサイトに適した写真を撮る
写真も、やはりガイドラインを作り、カテゴリーや商品種ごとに整備し、同類の商品は同形式(アングル、場所、枚数など)の写真を撮ることが大切です。そして、それぞれの特徴部分の拡大写真などを追加します。
あくまで商品が主役なので、商品の特徴がわかりやすい写真が必須です。そのうえで、プロモーショナルな写真、イメージ写真もプラスしていきます。
アパレルやアクセサリーでは、試着写真が有効なのは言うまでもありませんが、やはり、アングルなどをそろえたものを最低限準備します。凝ったアングルやクリエイティブ志向の高すぎる写真は、ECの商品説明には向いていません。また、モデルの体形、サイズをそろえたり、注意書きをすることも大切です。
商品写真は、アングルや照明、試着方法、または加工で、現物より良く見えるようにすることができますが、ECの商品詳細ページの写真には不適切です。商品が現物通りに見えることが一番です。現物より良く見える写真は、返品が増加し、全体でのコスト高、不良在庫増、評判の低下を招きますので、注意しなければなりません。
Ⅱ-2-3. 商品登録担当の役割
次に、商品登録担当の役割について説明します。商品登録担当は、MD担当や、ささげ担当が兼務する場合もあります。特に、ささげ担当と商品登録担当が同じ場合が多いです。
MD担当が仕入れに関する基礎登録を行い、MD担当がベンダーから得た情報や素材と、ささげ担当が作成した商品情報を、商品マスターに入力します。その登録の際、ECの規模が大きくなると、カテゴリーなどのリンク設定、関連商品を実際に登録する作業をMD担当者ではなく、別の担当者にまとめて任せるケースが出てきます。ただ、その入力、登録は勝手に行うのではなく、MD担当者と話し合って作ったガイドラインや、商品、ブランドごとにMDからのインプットや指示によって行いましょう。
とはいえ、機械的に登録していくのではなく、同様の商品の売れ行きや特性によって、登録担当者の工夫も反映されていくべきで、そういった意味でも、登録担当者も店頭の販売員と同じように接客をしているのです。
商品登録の担当者がMD担当チームに配置されているのか、制作チームにあるのか、別チームとして独立していくのかは、規模、社風、リソースの多さ、効率の考え方などで変わってきます。どれが正解ということはないので、まずは、会社、上司が決めた役割分担で開始し、状況を見ながら、よりよい体制に変えていきます。
EC事業の立ち上がり期は、あまり役割を分ける余裕もありませんし、ノウハウやガイドラインもないので、MD担当者が自分で、商品情報を作って、リンクや関連商品を考え、自ら登録していくことが多いです。ある程度、ノウハウができてきた時点でだんだんと分離されていくのが自然かもしれません。
Ⅱ-2-3-2. メーカーの商品情報・在庫と連携
近年、特にアパレル業界では、メーカーやブランドの商品情報・在庫と連携を行うEC事業者が増えてきました。メーカー、特に自社EC販売を行うメーカーでは、自社でささげを行い、商品情報を持っている場合があります。ところが、商品を卸した先の小売は、別途ささげや商品登録を行うなど、業界として効率の悪いこととなっています。
それを効率化するのが、メーカーの商品マスターに小売のECシステムをインターフェース(連携)させ、利用してしまおうという取り組みです。また、インターフェースのついでに在庫も連携させることで、メーカー在庫をEC事業者側でもリアルタイムに利用することができます。小売EC側は、品揃えの増加、商品情報の充実、コスト削減などが、メーカー側は展開商品の販売機会の増加、在庫コントロールなどのメリットがあります。
これは、まだ大手間で始まったばかりですし、インターフェースの開発費用が掛かります。1対1の接続でなく、n対nで行う中間システムを提供している第3者もでてきています。いろいろと課題はありますが、今後ある程度利用が広がっていくものと考えられます。